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~イーフリート戦~

~イーフリート戦~


 風の精霊の加護を受けているのにも関わらず暑く感じる。穴の奥に広がった広い場所はすべてが赤く光っていた。


 目の前に鏡のように研ぎ澄まされた石が並んでいる。


「きれい」


 そう言って近づこうとしたティセの手を引っ張った。


「危ない」


 そう、それはただの鏡石ではない。炎の魔石だ。そして、魔力を感じると一気にモンスターになる。


 すでに何体ものサラマンダーが出現している。


「何これ?」


 俺は奥に向かって「ライト」を放ち、こう言った。


「いい加減出てくればどうだ。イーフリートよ」


 奥からすさまじい熱波がやってきた。


 そこに居たのはまるで岩石でできたのでは思うくらい大きな戦士だ。その岩石は赤く燃えたぎっている。


 だが、岩石でないのがわかるのはその顔だ。赤い肌、赤い目をし、赤い髪をしたきれいな顔をしていたからだ。ただ、目の下から赤い線が入っている。


 顔だけは魔界で見たイーフリートそっくりだ。だが、体は違う。岩石で作られた大きないびつなものだ。


 バランスが悪い。魔界でのイーフリートは人間とかわらない容貌だった。だが、体が小さいから弱いというわけでない。


 人と変わらないから倒すのに戸惑いが産まれてしまうのだ。いびつな方が気兼ねなく戦える。


「お前か、我が居城を粉砕した馬鹿者は」


「ああ、そうだ。お前が弱っているのは知っていたからな。人を襲う前にこの地を浄化しに来てやった」


 そう言いながら俺は魔法の発動に入る。この魔法は時間がかかるからだ。そして、敵対するものがいないと発動しない。条件があることを初めて知ったのだ。


「そうか。神に挑む愚か者が。その傲慢を思い知るがいい」


 そう言って攻撃をしかけてくる。そう、相手が攻撃してきて初めて発動できる。というか、初手で放ってきたのは「火の鳥」だった。


「火の鳥」は攻撃だけでなく、周囲を火属性する。そして、火属性の魔物は定期的にHPが回復する。流石に「火の鳥」を初手で使ってくることは想定外だった。


 いきなり本気モードか。まず、ずっと発動を狙っていた魔法「ユグドラシルシード」を発動させた。


 背中に大樹が現れる。


「何これ?」


 ティセが言う。だが、すぐに理解をする。ティセはさっきレベルアップをしていた。だが、すぐに「ユグドラシルシード」からしずくが落ちてきて全回復をしたのだ。


「ティセ、相手の攻撃が落ち着いたらダイアモンドダストを唱えてくれ」


 そう言って俺は前方に向かって突進して、サラマンダーの攻撃を受ける。この増え続けるサラマンダーをどうにかしないとイーフリートにたどりつけない。


 こちらも魔法を唱える。次に唱えるのは「コピー」だ。


 一体は攻撃、もう一体はティセの防御だ。そう思っていたらイーフリートから熱波がやってきた。


「ファイアーロックキャノン」


 大きな岩石が炎をまとってやってくる。あの量はやばい。というか、どんどん岩石が飛んで切る。コピーとともに地面に手をつけて「金剛盾」を発動させる。


 地面から岩石が盛り上がってくる。不安なため4層の壁を作る。1層目は簡単に砕かれた。それを見てコピーを上空に飛ばせ、上空から「エクスプロージョン」を唱える。


 岩石次第を破壊していくが、イーフリートからの攻撃がやまない。岩石はまだまだ大量に来る。


「ねえ、ダイアモンドダスト放っていいの?」


 そう言われ思った。ティセを抱きかかえ「フライ」を唱える。


「え?何?何?」


 ティセが焦っている。


「上空で静止したらダイアモンドダストを放って」


 そう言いながらティセに魔力を流し込む。ダイアモンドダストの威力を上げるのだ。かなりの魔力を流し込む。大丈夫、すぐにユグドラシルシードで回復が来る。かなりの量の魔力を注いだ。


「今だ」


「ダイアモンドダスト」


 ティセの放ったダイアモンドダストで周囲は凍りついた。サラマンダーも凍りつき、ファイアーロックキャノンで飛んでいた岩石も凍りつき動きを止めている。


 だが、火の鳥の効果で何体かのサラマンダーが復活した。


 いや、違う。サラマンダーじゃない。あれは火竜だ。火竜が3体追加で現れたのだ。だが、こちらもユグドラシルシードからしずくが落ちてきて全回復する。


「ねえ、さっきの私もやってみたい。やっていい?」


 ダイアモンドダストだとだと思って「いいよ」と伝えた。だが、ティセが詠唱に入り、くっついている俺から魔力を奪っていく。


 え?そんなことできるのと思ったらティセが魔法を唱えた。


「アイスロックキャノン」


 目の前に大量の凍りついた岩石がある。それが火竜に向かって飛んでいく。というか、一気に魔力奪われているんだけれど、どういうことと思った。


 だが、すぐにユグドラシルシードの回復が入る。まぁ、大丈夫か。このまま傍観していたらコピーがもったいない。


 だからコピーにイーフリートに特攻をかけさせた。使う魔法は「永久牢獄」だ。


 捕縛はしたが、このイーフリートは幻影みたいなもの。すぐに別のイーフリートが出現する。だが、魔素量は下がっている。コピーが消えるまで「永久牢獄」を使い続けてみた。


 その間、ティセはアイスロックキャンに嵌っていた。というか、それ俺の魔力かなり消耗するからやめてほしいんだけれど。


でも、火竜も消え、イーフリートも弱ってきた。もうそろそろだ。


「ティセ、アイスロックキャノンはやめようか。イーフリートに近づくから。それに、これ以上攻撃したら結界を傷つけるだけだ」


 今回はイーフリートを倒すことが目的でない。


 どうせ、この世界のイーフリートは幻影みたいなもの。本体を倒さない限り何度でも復活する。それならば、イーフリートが出て来られているこの場所の結界を強化することが大事だ。


「どうするの?」


 ティセがそう言う。


「大丈夫、そのためにイーフリートを弱らせているんだから」


 そう、永久牢獄は結界魔法。この結界を傷つけずに当人だけを攻撃しつづけた。


 まぁ、アイスロックキャノンは想定外だったけれど、そこまで結界を傷つけていない。というか、結界近くに炎の結界があって、それでアイスロックキャノンが溶かされていたからだ。


 イーフリートの結界があって助かったと思った。いや、これはティセのレベルが低いからだろう。基本となるティセの魔力が高ければ、この結に傷をつけていたかもしれない。その結界前まで近づく。


「人間よ、その強さは認めよう。だが、人間では我は倒せぬ。その場所より近づくこともできぬだろう」


 イーフリートが言う。


「そうだな。倒せないだろうね。それに、この結界は俺らがそっちに近づけないのと同じで、あんたもこっちに来られないだろう」


 この結界を抜け出る力が無くなるまで「永久牢獄」を使い続けた。ユグドラシルシードがあるからできる戦術だ。


「我は力をためる。それだけだ。人間としてはなかなか良い戦いであった」


 戦いというか、ティセが俺の魔力を使ってアイスロックキャノンをぶちかまし、コピーが永久牢獄を使い続けただけの戦いだがな。


「なら、そこで俺が今からすることを見ているがいい」


 そう言って俺は詠唱に入る。すでに上空に事前に作っていた網を移動させていた。じいちゃんは戦いながら色んなことを並行してやっていた。俺も同じことができるようにならないといけないと、今回ペリドットさんに言われたんだ。


 ゆっくりと網がやってきて、炎の結界の前で更なる結界を張る。イーフリートは初め何をしているのかわからなかったようだ。だが、分身を外に出そうとしてきたら俺がアイススラッシュで切り付け続けた。


「全てを封印するわけではない。ただ、イーフリート。お前が外に出られない程度に封印するだけだ。まあ、使い魔であるサラマンダーくらいなら外に出せるぞ」


 そう、それくらいの隙間だけをあけておく。イーフリートは魔族でもあるが、精霊神でもある。すべてを封印してしまうと火の加護が得られなくなる。


「これが狙いだったか。まあいい。その結界とて永続的ではないだろう。我は人とは時間の流れが異なる。しばし眠りにつくとしよう」


「そうしておけ。次は魔界まで行って起こしてやるからな」


 俺はそう言ってティセを連れてフライで地上に戻った。地上では更に準備をしていた盛り土をし、祠を立てた。


 信仰がなくなれば精霊神は魔族となる。この場所にあったのが城だったからいけないのだ。きちんと祠があり社があればイーフリートも困ることはない。


 人を襲うのもお供え物がないからだ。きちんと祀ればいい。そうペリドットさんに言われた。


「さあ、帰るか」


 空を見るとほんのり赤くなってきていた。夜明けだ。


「ねえ、もうちょっと空を見て行きましょう」


 ティセにそう言われた。フライで見る夜明け。それはきれいなものだった。


 だが、次に待っているものはわかっている。ここからが本番だ。



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