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「・・・ホント2回目でも思うけど...
無駄に溢れすぎてるわ、この学院。」
目の前にそびえたつ城のような建物を見据えながら少女はあきれたように言葉をもらした。
星宮璃、15歳。
璃は一度目と同じで、中学時代の学園長の勧めと自らの目的の為に、地上からはるばる天界に存在する世界一の教育機関と言われている天界院学院にやってきた。
「はぁ。(この職員棟も、前の記憶で見た時は小さい城かって言葉に出していたわね。)」
目の前にある建造物をみて璃は心の中で呟いた。
普通の感覚なら職員棟とはもっと簡素なものであって決して城と見間違えるようなものではないはずだ。
「(それに私の記憶が初めてではなくても、今は初めてなのだから怪しまれない様に、行動もしてるしね。)」
璃が校門の前に降り立ったのは約10分前、その後すぐに無駄に巨大な校門の横についているインターホンの様な魔機から職員棟に来るように指示を受けた。
そして今にいたるのだが、
いつまでもこのままココで、突っ立ている訳にもいかないと思い璃が顔を上げると、職員棟から丁度男性が出てきたところだった。
その男性は、璃を見て一瞬驚いたような顔をしたかと思うと、そのまま璃に向かって歩いてくる。
「君が地上から来た特待生であっているかな?」
優しそうで端正な顔立ちの男性は、要しにあっている柔らかで優しげな声で璃に尋ねた。
「(懐かしく思っても、聖先生からすれば初対面の転入生なのよね。)はい。多分私の事で間違いないです。」
「そうか、ごめんね。もしかして、ここにしばらく立ちっぱなしだったりしたんじゃないか?」
「いえ、そんな事はないですよ?」
男性は少し慌てた様子で口を開く。
「あぁ、それなら良かったよ。君がここに到着するまでもっと時間がかかると思っていたんですが、ずいぶん早かったですね?」
「・・・そういうことですか。」
確かに校門からここまで一本道とはいえ結構な距離がある。
もっと到着まで時間が掛かると踏んでいたため職員棟から出てくるのが遅かったという事か。
「少し魔術を使って楽しましたので、先生?の予想より早く着いてしまったのだと思います。」
「あぁ、自己紹介がまだでしたね。僕はこの学院で教師をしている聖匠。担当は魔術で、君のクラスの副担任を務めます。理事長室の案内を受けています。ちなみに、どんな魔術を使ったんだい?」
「私は星宮璃です。よろしくお願いします。魔術は普通に身体能力の強化ですよ。それで走って来ました。」
「なるほど。君は礼儀正しく優秀そうですね。すいませんが、理事長室が最上階にあるのですが、最上階に行くには教師かごく一部の生徒しか行けないので案内しますね。」
ごく一般的な回答をしたつもりだったのだが。
「(理事長室確かそうでしたね。細かい記憶が曖昧な部分がありますね。気を付けないと。)わかりました。案内の方お願いします。あと、なぜそう思われたんですか?(まぁ、分かってはいるんだけど。)」
「そうだね・・・仮にこの学院に在籍している生徒に君と同じ状況下でどうするか尋ねると、多分だけど、空を飛んだりとかもっと強力な魔術を使おうとするんですよね。」
「(やっぱり...)それってめちゃくちゃ無駄な事ですよね。」
「その通り、ただ長距離を移動したいだけなのにそんな強い魔術なんて使わなくても十分なんですけどね。君みたいに使いやすい魔術で済ませてしまう方が使う魔力も少なく済むから効率もいいですし。」
「でも、それは私が強い魔術を使えないだけかもしれないですよ?」
「この学院に入れるってことはそれくらいの魔術は多分使えるんじゃないかな?」
「・・・まぁ、その通りですけど。」
「だからこそ君は優秀そうだと思ったんですよ。魔術を効率よく使えるってことは魔術師にとってとても大切な事ですからね。」
そんな事を話している内に二人は職員棟内部のエレベーターの前に到着した。
匠が指にはめている指輪をエレベーター横のボタン付近にかざすとエレベーターの扉が開く。中に入るとボタンが見当たらない。
このエレベーターは最上階直通の作りになって居るのを思い出す。
「先生、ボタンとかが見当たらないのですが?(何も知らないふりして居るのも疲れるわね。)」
「あぁ、これは最上階直通のエレベーターですから他の階には止まらないんですよ。」
分かってはいてもやっぱりこの学院は、無駄の宝庫だと璃は思ったのだった。




