やっとあえた
『おじさん、さいきん いつもここにいるよね。
何してるの?すわってばっかりでたのしいの?』
見知らぬ少女に話しかけられ我に返った。
「……楽しいというより、落ち着くって感じだよ。」
楽しいかって…なぁ
私は幼い頃から何か嫌な事があるたび此処に来て景色を眺めていた
ベンチの真上に伸びる大きなモミジの枝は、雨や雪から私を護りいつも暖かな気持ちにさせてくれた
目の前には色々な木 草花 小動物…見ているだけで癒された
この公園は山の麓から少し登った所に位置していて 遊具も特に置いてないので 子供の遊び場と云うよりは大人の憩いの場であった
そんな場所に通っている自分は大人だ と子供の頃自分に酔いしれていた記憶かある
この少女もそうなんだろうか…
またしみじみと自分の世界に浸っていると、少女がトントンと手摺を鳴す。
『おちつく ってどんな気持ちなの?』
「…ホッとするような気持ち……かな。」
『ほっとする気持ち…。それってどういう気持ちなの ?』
はぁ……子供らしい子供は少し苦手だ。
「…君にはママやパパいるかい?」
『うん!いるよ』
「パパやママに抱き締められてる時ホッとするだろう?」
『してくれなくなったから分かんない。』
一瞬気になったが次にどうでもよくなった
「なら、パパやママと一緒にいるときはどう?」
『たのしいよ!今日ねままのためにお花拾ったの』
少女が左手に握りしめていたシロツメグサの花を見せてきた。
「………そう。それなら早くママの所へ帰るといい。もう直ぐ日も暮れるだろうしね。」
『おじさんは帰らないの?』
「もう少ししたら帰ろうと思う。」
『あしたもくる?』
「うん。」
『そっかあ〜!じゃあ、わたし先に帰るね。』
『あっ、そうだ。ままにあげようと思ってたけどこれおじさんにあげる。』
彼女は私が喋る間も無く私の横に花を置くと、駆けて行ってしまった。
『ばいば〜〜い』
遠くまで行った所で此方を振り向き手を振ってきた。
そしてまた走り出し姿が見えなくなった。
”さいきん いつもここに居るよね”
彼女を見かけたのは初めてである
考え込み過ぎて気付いていなかったのだろうか
それにしても人と話したのは久しぶりだ…
貰ったシロツメグサを眺めながらぼんやり他愛もない事を考えていた。