第51話 カスミ先生朝から嫌な奴に絡まれる (カスミ視点)
翌朝起きると、時刻は朝5時半だった。
とりあえずテレビを付け、チャンネルをニュース番組に合わせてこの数日の動きを確認する。
日本では、暴走する隣国や、多額の盗難事件などがトップニュースを占めており、私たちの異世界召喚事件は今日のニュースネタにはなっていないようだ。
インターネットを調べると、私たちの召喚事件は色々な憶測混じりでSNSや掲示板を賑わせているようだ。
しかし、帰還した生徒達は言いつけを守っているのか、異世界召喚によって現実ではあり得ないようなスキルを身につけていることは知れていないようだ。
生徒達はみんなレベル1なので、極端に力や早さが身についていると言うこともないだろうから、自ら進んで召喚時のスキルを使わない限り、問題ないだろう。
行方不明中扱いの勇者マサヨシとビッチーズに関しては、生徒の共通のコメントとして、自らの意志で異世界に残った点と、私が居残った生徒を心配して同行している点が明らかにされていた。
これなら、私が日本社会に復帰したとき保護者や校長からおとがめを受けることもないだろう。
いや、ないと信じたい。
私は熱いシャワーを浴びると、着ていた衣類を全て洗濯して、風呂場の乾燥を6時間タイマーにセットし、洗濯が終わった服を風呂場につるす。
次はお出かけの用意だ。
といっても、テレビやパソコンの電源を落とし、一糸まとわぬ姿になるだけだが……。
本当に、空間転移で衣服すら持ち込めないのは不便この上ない。
時刻が朝7時少し前になったのを確認し、再び王城の宛がわれた部屋へと空間転移する。
朝7時はこちらの世界でも早い時間であり、王城は未だに静けさに包まれている。
窓から外を見ると、厨房らしきところではもう人が動いており、朝食の準備が進んでいるようだ。
私は訓練用の衣服を身につけると、朝食係が呼びに来るのを待つ。
すると何故か、メイドの代わりに厳つい男が部屋を訪ねてきた。
この男の顔は忘れることが出来ない。
訓練初日に私にセクハラ発言をしてきた兵士の親玉だ。
見た目は相変わらず兵士と言うより山賊や盗賊のお頭に見える。
私の胸への一撃で、部下と仲良く心停止していたはずだが、どうやら蘇生が間に合って無事だったらしい。
やはりあのとき、確実にとどめを刺しておくべきだったのだろうか。
そんなことを考えていると男が口を開く。
「おい、貴様。
一昨日は俺たちが原因不明の体調不良になったおかげで申しつけられなかったが、お前のようなクズは俺の考え一つでどうとでも出来ると言うことを忘れるな。
なに、俺の言うことを聞いていればせいぜいかわいがってやるから安心しろ。
それはそうと、夕べ貴様をかわいがってやろうとわざわざ訪ねてやったのに、一体どこに行っていたのだ」
随分な物言いである。
私は朝から嫌な気分になり、おざなりな対応を取る。
「あんたの世話になんかならないわよ。
私がどこに行こうと勝手でしょ!」
「まだ、自分の立場というものが分かっていないようだな。
俺の言うことが聞けなければ、貴様のような穀潰しは始末されるんだぞ。
死にたくなければ、今晩はおとなしく部屋で俺が来るのを待て!
俺は王国軍第3師団第5中隊長ベンジャミン・パリス様だ。
分かったらおとなしく言うことを聞け!
ハッハッハッ」
山賊もどきは高笑いしながら部屋をあとにする。
それにしてもシュリンガーさんのようなまともな騎士もいるのに、パリスのような訳の分からない隊長もいるとは、この国の軍規はどうなっているのだろう。
何にしても、今晩もお出かけすることが決定した。
藍音ちゃんには悪いが連日付き合ってもらうことになりそうだ。
そんなことを考えていると今度は本当にメイドさんが朝食の呼び出しに来た。
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