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第21話 真夜中の異世界脱出最大の障害は? (カスミ視点)


 とりあえず藍音ちゃんによる送還は成功した。

 後はこの作業を3回繰り返し生徒全員日本に返せばいいだけだ。


 荒野に旅立っている関谷香織さんと謎の剣士君はその後から何とかしよう。


 私は、藍音ちゃんに連れられて生徒たちの部屋を周り、一人一人説明していく。


 第二陣の10名を送り返すまではすこぶる順調だった。

 しかし、世の中何でも思い通りに行くとは限らない。


 第三陣の10名を私のあてがわれた部屋に集め、送還の説明をしているときに生徒から声が上がった。


「私、帰りたくなーーい」

「あっ、それならあたしも帰りたくない!」

「そうよ。帰ったらまたおもしろくない授業受けて色々注意されて、大人の都合で私たちを縛ろうとするに決まってるんだから。

 その点この世界にいれば、勇者の一行として優遇されるんだから、帰るメリットなんてないじゃない」


 クラスの派手ケバ女子三人組、龍造寺りゅうぞうじ 綺羅々(きらら)、鳳凰堂ほうおうどう 把比保ぱぴぽ新宮園しんぐうえん 飛飛瑠ぴぴる、である。


 三人とも学校の規則は守らない、遅刻欠席はもちろん夜遊びはする、制服は改造してスカート丈なんてはいてる意味があるのかってくらい短くしている。

 顔を見れば化粧にピアス、カラーコンタクト、口紅、マスカラ、アイシャドーと、校則を守っているところが一つも無いという有様だ。

 手足には派手派手なアクセサリー、マニキュア、ペディキュア、首を見れば健康ネックレスとアクセサリーのネックレスを両方しており、本人たちはセンスがあると信じて疑わない。

 これで金持ちのお嬢様だと言うんだから、世の中どうなっているんだかと、教員として嘆きたくなる生徒たちである。

 由緒正しい家柄を彷彿とされる純和風の名字に、これでもかと言うくらいのキラキラネーム。

 親はこの子たちが年を重ねたときのことを考えて命名したのか疑いたくなる。


 周囲からはビッチビチのビッチーズと呼ばれ、まじめな子たちとは一線を画す存在である。


 まあ、そんな存在なので、学校では当然色々な先生から注意され、ことある後とに説教を食らう3人だが、それでもなお、逃げ回り、ぶっちぎり、宿題すら一回も出していない。


 今までよく学校を続けていたものだと、感心する生徒のうちの3人だ。


 この三人からすれば、日本で高校に通うより異世界で気ままにちやほやされたいと考えたのだろう。


「あなたたち、日本にはご家族がいらっしゃるでしょ。

 帰らなければ心配されますよ」

 私が考え込んでいると藍音ちゃんが見かねて注意してくれた。


「はっ、あんたいったい何様よ。

 先生でもないのに黙ってなさい」


 龍造寺りゅうぞうじ 綺羅々(きらら)の言葉に藍音ちゃんが不機嫌になるのが分かる。

 ローブ代わりのシーツ越しに、私のエンパシーが危険を伝えているのだ。


「龍造寺さん、せっかく心配して行ってくれている祠祭様に失礼よ。

 それに、本当に心配されていると思うわ」


「はっ!

 あんな小うるさいおじさんおばさんのことなんて知ったこっちゃないよ」

「そうよ。毎日毎日小言ばっかりで、ろくにお小遣いもくれやしないんだから、あのけちババア」


 残りの二人も毒舌だ。

 藍音ちゃんの不機嫌オーラは限界寸前であることを告げている。

 第一種警戒警報を発令すべきかも知れない。


「それに、こっちでは戦争にかり出されて戦わなければならないかも知れないのよ。

 他国の人たちと戦うことになるのよ」


「いいじゃん。

 私たち強いんだし」

「そうよ、絶対負けなければいいのよ」


 自分さえよければ人は不幸になってもいいと言わんばかりの言動に、藍音ちゃんの怒りは威圧となって周囲ににじみ出している。


 当のビッチーズはよほど鈍いのか気がついていないが、他の生徒が怯えはじめている。

 しかたがない。

「分かりました。それじゃああなたたちは最後のグループを送還するときまで少し考えなさい。

 他のメンバーをとりあえず送り返します」


 私はそう宣言すると藍音ちゃんにお願いする。

「それでは、祠祭様、お願いします。」


「わ・か・り・ま・し・た…

 み・さ・さ・ん、ご・準・備・く・だ・さ・い」

 藍音ちゃんの声が怖い。これは後でなだめるのが大変そうだ。


「真理の探究者たる我が名をもって命ずる。

 万物の真理より彼の者たちの世界へとつながる道を示し、我が前方1メートルの空間にゲートを開き彼の者たちを彼の地へと誘いたまえ。

 我が名はアイネリア。栄えあるアルタリアの祠祭なり。道よ開け!」






 何とかまともな7人は教室へ返すことができた。

 藍音ちゃんは肩で息をしている。

 まだ怒っているようだ。

「とりあえず私のアパートへお願い」


 私は藍音ちゃんをなだめるべく、一旦アパートへ引き上げた。


前作の主人公たちが大暴れしていますが、とりあえずクラスの生徒の大半が日本に帰る段階まで、カスミとアイネの視点が続きます。ご了承ください。

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