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第14話 情報収集(主人公視点)


 宿の部屋に荷物を置き、エントランス横のレストランと言うより食堂と言う方が似つかわしい場所で、俺とカオリは遅い夕食を食べている。

 すると、隣のテーブルで飲んだくれていた冒険者が話しかけてきた。

「よお、兄ちゃんたち、見ない顔だな」

「そっちの嬢ちゃんはもうおねむの時間じゃないのか?」


 4人グループで飲んでいた冒険者たちからは特に悪意は感じない。

 香織さんは17歳には見えないくらい小柄で幼い外見をしているので飲んだくれたちが心配して声をかけてくれたようだ。


「ああ、心配してくれてありがとうございます。

 俺たち、さっきこの街について、今夕食を取っている所なんです」


 俺が返答すると冒険者のうち、年配の男が話しかけてくる。

「そうか、それは遅くまで大変だったな。

 そっちの嬢ちゃんが俺の娘と同じくらいに見えたので思わず声をかけちまった。

 何にしても、こんなきな臭いときにこの街に来るなんて、お前たちも運がないな」


「きな臭いんですか?」

 カオリが思わず聞く。


「ああ、金鉱山の利権を巡って東のイースランド王国と戦争中だ。

 多くの兵士が死に、傭兵を雇っても追いつかず、ついには魔物討伐のみに限定された異世界からの勇者召喚を、国際協定に違反して行っているらしい」


「あの、国際協定ってどんなのですか?」

「それに、勇者召喚って何度もやってるんでしょうか?」

 カオリと俺は矢継ぎ早に聞いてしまう。


「なんだ、そんなことも知らないのか。

 いいぜ、教えてやる。

 国際協定は、異世界から召喚される勇者たちの能力が危険なくらい大きいため、魔物との戦闘以外では召喚してはいけないという取り決めだ。

 にもかかわらず、このラトランド王国は、昨年からもう3度も勇者を召喚し、戦争に投入した。

 勇者たちは自分たちの世界に帰るために必死に戦い、戦況をラトランド王国有利にまで回復させたが、勇者側にも少なくない死者が出ているそうだ。

 国王は更に戦力を補強するため4度目の召喚を行い、今度は40人を超える異世界人を連れてきたらしい。

 冒険者も傭兵としてどんどん連れて行かれているら、冒険者をやるならもっと平和な国がいいと思うぞ」


 やはり、とんでもない国のようだ。

 国際協定に違反して異世界から勇者を召喚し、戦争に投入するなどあんまりだ。


 しかし、戦争とは相手がいなければできない行いである。

 ラトランド王国が悪いのは間違いないが、だからといって戦争相手のイースランド王国が正しいとも限らない。

 カオリも同じことを考えていたのか、この事情通の冒険者へ質問した。


「イースランド王国はまともな国なんですか?」

「正直わからねえ…

 戦争中のイースランドへは行くことができねえから、向こうの情報が伝わってこねえ。

 しかし、何度も諍いを繰り返しているんだから、向こうも似たようなものかもな…」


「ありがとうございました。

 とても参考になりました」

 俺が礼を言うと冒険者たちは片手を上げて答えてくれた。


 俺はカオリと目配せをし、一旦部屋にもどるため席を立つ。

 宿の親父には、酒を一杯、情報をくれた冒険者たちに出すよう頼み、代金として5000ゼニー置いておく。


 俺とカオリはひとまず俺の取った部屋に入ると、明日からの計画を話し合う。


「とりあえず情報集めと帰る方法を探すために、隣国のイースランド王国に行って見たい」

「ええ、私も賛成よ」


 俺の提案にカオリも賛成してくれた。


 俺たちは明日の朝、朝食を取ったらすぐに東へ向けて旅立つことにした。



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