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第13話 取ったイノシシの皮算用(主人公視点)

 隣の町までおよそ10キロメートルだから、俺たちが走れば30分ほどでつくことができるだろう。

 今が夜の7時半くらいだとすると、イノシシを狩っても夜8時半には隣町に入れる。


 俺とカオリはとりあえずイノシシがいる方向へ走り出す。


 イノシシを目視できたと思った瞬間に、獲物にこちらの存在を気づかれた。

 いっそ襲いかかってきてくれれば早かったのだが、このイノシシは真横へと逃走をはじめた。

 意外と早い。

 俺たちの全力疾走でもじわじわとしか距離を縮めることができない。

「仕方ない、魔法を使う」

「風魔法にして!

 売るときの価値が下がるわ」

 俺が魔法を発動しようとするとカオリがすかさず注意してくる。


 おれは、早く晩飯にありつきたいと思い、丸焼きにすべく用意していた火魔法を一旦キャンセルし、風魔法を発動した。

「ウインドカッター!」


 上手くいった。

 ちょうどイノシシが急カーブしたときに放った風の刃は、イノシシの首を深く切り裂き、獲物はその場に倒れる。


 近寄って確認すると、急所を直撃しており、上手い具合に血抜きできつつあった。

 俺たちは絶命したイノシシを逆さに木からつるし、血抜きしつつ解体することにする。


 イノシシはなかなかの大物だ。

 体長が1メートル50センチほどはありそうだ。


 さばきながらカオリと話す。

「俺のいた世界では、これくらいのサイズのイノシシならかなりいい値段で売れたんだが、この世界ではどうだろう」

「私の召喚された世界でも、皮だけで宿屋十日分くらいになる大きさだわね。

 この世界でもそれくらいで売れてくれるといいけど…」

「そうだな。とりあえず解体して冒険者ギルドに持ち込んで売り払おう。

 あまり遅くなると買い取りできなくなるかも知れない」

「そうね」


 俺たちは解体スピードを速めた。


 結局、狩りと解体に1時間近くを要し、隣町に着いたのは夜9時くらいだった。


 この街は外壁などはなく、簡単な柵で覆われているだけで街の入出にチェックをしている様子はない。

 人通りのあるメインストリートと思わしき通りを歩き、道行く人に冒険者ギルドの場所を聞きながら進む。

 ギルドは街の繁華街と行政街の境目にあった。

 俺たちはイノシシの肉と皮を持ってギルドの扉をくぐる。


 この街のギルドは宿屋や食事できる店は受付の奥の方に区切られており、カウンターまでの間に酔っ払いから絡まれることはなかった。


 夜遅いこともあり、受付はがらがらだ。

 といっても、営業している窓口も1つしかない。


 俺たちは唯一空いている窓口に向かい、ギルドの職員に尋ねる。

「こんばんは、素材の買取はギルドに登録していなくてもできますか?」

 若い男性の職員は笑顔で教えてくれた。

「はい、問題ありませんが、当ギルドに登録していただくと買取価格は少しアップし、販売価格は少し割引されます」

 少し考えて、もうちょっと情報が欲しくなり聞いてみる。

「では、このギルドとギルドへの登録について教えていただけますか」

 職員の男は愛想よく答えてくれた。

「当ギルドはこの街の公認ギルドで、運営には街から補助金が出ているため他の街のギルドよりお得になっています。

 他の街のギルドと提携していないので、ランクや討伐数は引き継げませんし、他のギルドで発行された登録証は使用できません。

 その代わり、当ギルドへの登録は無料となっており、髪の毛1本あれば誰でも会員になれます。

 髪の毛をこの魔道具に入れれば自動で登録できます。

 ランクはE~Aまでの5段階があり、Aランクの中で著しい功績があればSランクになります。

 登録したときは全員Eランクからで、ギルドの利用状況に応じてランクが上がります。

 高ランクだからと言って強いわけではありませんのでご注意ください。

 ランクが上がることで割引率や希望依頼優先度などの特典が受けられます。

 たとえば、同じ依頼に2組の冒険者が名乗りを上げた場合、ランクが高い人に受注してもらいます」

「俺は登録してもいいと思うがどうだ」

「いいわ」

 カオリに聞くとカオリも同意した。


 俺たちは髪の毛を一本ずつ受付に渡す。


 受付の男は髪の毛を受け取ると黒曜石のように見える真っ黒い石の板と一緒に魔道具へ入れた。

 するとすぐに、石の表面にEとこの世界の文字で書かれた黒曜石の板が出てきた。

 俺のカードができると、カオリのカードもすぐに作る。


 俺たちはカードを受け取ると早速イノシシの皮と肉などを引き取ってもらう。


 受付の男はカウンターの奥にイノシシを持ち込み、査定しているようだ。


 10分もまつと、再びカウンターに現れた男がいう。

「これはかなり大きなイノシシだったようですね。

 お二人のカードをお借りします。

 二人で一頭取ってきたので、一人あたり二分一頭の記録となりますが、イノシシが大きかったので、二人ともDランクに早速昇格です。

 おめでとうございます」


 いくら何でも昇格が早すぎるのではないかと思い聞いてみる。

「イノシシを二人で一頭取っただけでもうランクアップするのか?

 早すぎないか…」


 受付の男は慣れた様子で説明してくれる。

「当ギルドでは、討伐の報償や買取価格の合計が100万ゼニーを超えるとDランク、1000万ゼニーを超えるとCランク、1億ゼニーを超えるとBランク、10億ゼニー以上でAランクとなります。

 このイノシシは肉の買取が40万ゼニー、皮や牙の買取が160万ゼニーとなっています。

 特に皮の状態がきれいで値が上がりました。

 二人で割っても一人あたり100万ゼニーとなりDランク昇格となりました」


 なんと、イノシシが大きかったせいかかなり高く売れたようだ。

 皮も風魔法で倒したせいで高値のようだ。


 しかし100万ゼニーがどれくらいの価値か分からない。


 俺は表示がDに変わったカードを受け取りながら聞いてみる。

「ところでこの近所にいい宿はないか。

 俺たちはまだ今日の宿を確保していない」

「それでしたら、隣の当ギルド直営の宿はいかがでしょう。

 シングルの個室が、1泊2食ついて1万ゼニーですが、お二人はDランクの冒険者ですので2割引の8千ゼニーで泊まれます。

 ツインやダブル、ドミトリーなら更にお安くなりますがいかがですか。

 ちなみにランクが上がると割引率が増える仕組みです」


 宿の料金で判断すると、日本のビジネスホテルと同じくらいなら1円=1ゼニーくらいだろうか。


「分かった。

 シングルを二部屋頼む」

 俺は即答する。


「かしこまりました。

 ご利用ありがとうございます。

 料金はイノシシの買取料金から差し引かせていただきます」

 男はそう言うと、99万ゼニーずつ俺とカオリに渡してきた。


 とりあえず野宿は回避できたようだ。

胎児転生を3話分書きましたので、明日から胎児転生を更新します。

巻きこまれ召喚は、ストック切れです。

しばらくお休みです。

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