間章・動き出す狩人
夜。闇に包まれたレヴィエル王国王都。
草木も静まり返った時刻に一人、明かりもつけずにとある道場で胡坐をかいて座っている男がいた。
軽戦士専用の防御面積はきわめて少なく、しかし頑丈さはしっかりしている皮鎧を道着の上に着用したその男の名前はローガン・シュヴァリエ・ド・コッレンテ。
コッレンテ流双剣術の開祖であり、近年騎士爵位を得てのりにのっている武道家である。
彼は今、とある人物を待ち構えるためにこうして一人、目立つ道場の中にて精神統一をしていた。
そんな彼の背後に人の足音が聞こえる。
昨日道場に帰った彼は、道場内に残っていた門下生に稽古はしばらく休みだと告げ、人払いをしていた。
この道場にいるのは本来彼だけのはずである。だがしかし、その足音は確かに道場の床を踏みしめ、まるで彼をいたぶるかのようにゆっくりと、ローガンに近づいてくる。
「待っていたよ」
「っ!」
その足音の主に対し、ローガンもわずかにこわばった声を発しながら立ち上がった。
「狙いは我が流派の奥義アクトだろう? あと、口封じも兼ねているのかな? 正直勝てる気はしないのだが……ただで殺されてやれるほど、私も潔い人間ではなくてね」
ローガンの言葉に、道場に足を踏み入れた人物は、手に握っていた大剣を大鎌に変化させ、臨戦態勢に移った。
道場内を瞬く間に埋め尽くす濃密な殺気に、ローガンは一瞬呼吸を止める。
だが、ひるんだのは一瞬のこと。すぐさま気を持ち直した彼は、傍らに置いてあった双剣を抜刀し、
「コッレンテ流双剣術開祖――ローガン・シュヴァリエ・ド・コッレンテだ。参るっ!!」
疾風怒濤の連続剣技を、眼前に敵にたたきつけた!
■■■
翌日、王に認められた一人の武人が道場ごと粉砕され、無残な骸を晒しているところを、王都の近隣住民が発見した……。
本日は二話投稿する予定なので次の話はしばらくお待ちください。
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