047.真相の解明
「ダンジョンを支配する悪魔と交戦し、一時退却中だ。皆も程度をみて仮死薬で脱出してほしい。カラクリが判明した今となっては何度でもダンジョンに挑める」
おれはグレゴリーの風魔法テレパシーにのせて皆に語りかける。
「ああ、それにしてもすごい地震だ」
衛兵長ヤムキンが応答した。
洞窟全体が怒りに染まりグラグラと岩を揺らしている。ダンジョンと「核」をもつスケアクロウが一体化してるしるしだった。
背後からスケアクロウとゴブリンの大群が追いかけてくる。
「ここいらでいいか」
おれは踵を返し、四神剣を構える。
「フレイル・ブレイブ・フレイムス」
炎の魔法攻撃を、スケアクロウ以下ゴブリンに放つ。
ゴブリンどもが悲鳴を上げて、灰になる。
その背後の悪魔憑きの巨人ーー、スケアクロウは闇魔法の渦を出現させ、おれの炎を吸い取り難を逃れた。
「さっきは不覚をとったが、今更そんな技が通じるとでも思うのか、くそガキ」
スケアクロウはゴブリンたちの灰を踏みにじりながら、歩みを進めーー、両腕を洞窟の岩に同化させている。
そこかしこの岩が血管のように動きだし、おれとアデルを掴もうと巨大な手のひらが突き出た。
「避けろ」
おれとアデルは飛び跳ねる。
出血のせいかアデルはぜぇぜぇと荒い吐息を吐く。
「誰か、仮死薬を持ってきてくれないか、アデルだけでも脱出させたい」
風魔法のテレパシーで皆に問いかける。
「だめだ、創司。お前らがいる場所まで行こうにも岩の壁が邪魔して塞がっちまってる」
おれらのテレパシーなど聞こえるはずがないが、スケアクロウがニヤリと笑った。
ダンジョンと一体化し、おれらを閉じこめて、あとはどう料理してやろうかと嗜虐的な気分になっているのだろう。
おれは何度も炎魔法の攻撃を繰り出すが、闇魔法か岩壁を自在に操りスケアクロウにダメージを負わせることができなかった。
「創司さまだけでも逃げてください」
アデルが魔法の杖にしがみつき自信の身体を支えている。
くそ、仮死薬があれば。
おれは、ゴブリンじみた顔のアデルを見つめた。これで死んでしまったら後悔どころのさわぎじゃない。元のアデルの顔を見つめてから天国へ召されたいものだ。
なぜ死人はダンジョンの外へ放り出されるんだろう。
なぜあのタイミングで、おれは幻覚を見たのか。
二つの考えが頭をよぎる。仮死薬なしでもダンジョンの外に放り出される術があればそれにすがりたい。
おれのポケットには仮死薬はない。恐怖を感じなくする薬と、痛みを感じなくする薬が各一粒ずつ残ってる。ドナルド・トラッパの屋敷で手にしたやつを返し忘れたのだ。
恐怖を感じなくする薬など、おれには必要ない。フレイル・ブレイブ・フレイムスが撃てなくなってしまうから。
「まてよーー、恐怖」
おれは頭を回転させる。アデルをダンジョンの外へ脱出させる方法がひとつだけあるかもしれない。この「仮説」が間違っていなければ。
「アデル、傷は痛むか」
アデルが頷く。
「痛みが消える魔薬が、ここにある。これを飲んで一緒に戦ってくれないか」
アデルが一粒、それを受け取る。おれは彼女を騙す罪悪感に胸を痛めながらも成り行きを見守った。
「創司さまーー、これ」
アデルが言い掛けたとき、スケアクロウが洞窟との一体化を解除し、棍棒を振り上げながら、こちらへと飛びかかってきた。
「まとめて死ねぇ!」
瞬間、アデルの身体が目映い光に包まれ消滅。
「やはり、おれの読みは当たったな」
おれは四神剣を構え、振り下ろされる棍棒を刀身で受けた。
金属音が洞窟内に響きわたる。鼓膜がおかしくなりそうだった。
「なぜ小娘は消えた」
スケアクロウは濁った両目を見開き、忌々しく吐き捨てた。




