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異世界厨二病少年~S O U J I~ぶっ殺すべき悪者さがして異世界へ  作者: 実時 彰良
前編≪異世界召喚された英雄厨編≫(第1話~第30話:116.765文字)
4/50

004.魔法使いのヒロイン、発見

 おれは事実をありのまま語っている。


 だが、もしこれが物語であったならばそろそろヒロインらしい女の子でも出てこなければ退屈だといいかねない連中がチラホラ出てくる頃だろう。


 おれは漫画、アニメに映画、小説なんかを楽んできたが、まぁ、製作者サイドというのは、判で押したようにピンチやらヒロインやら死亡フラグやらをぶっこんでくる。メシを食いながらSNSやってスマホでゲームするゆとり世代に飽きられないように。


 楽しんでるおれらも「はぁ~、そうきたのね。まぁそこは様式美ということで」ってな感じで、ついついそれにノるわけだが。


 おれは恋愛パートよりも、主にヒーローの活躍やセリフにばかり目がいきがちだったが、いま思い返してみれば、メインヒロインは唐突なかたちで、とはいえ自然に、主人公が物語開始から一番目か二番目、あるいは三番目に遭遇するキャラだったよな、と溜飲がさがる。


 一番目、と限定しなかった理由は分かってくれてるだろう。おれがこの森に迷い込んで最初に出会ったのは身長二メートルのマッチョのハゲたおっさんだからだ。おれとやつが絡むシーンを見たいやつは別の誰かに書いてもらってくれ。


 話は戻るがこうして今、振り返ってみるとおれのメインヒロインは、唐突にそして風のように、そこで出会うべき運命だったかのように、おれの前に舞い降りた。



 彼女の話をさせてくれ。


 おれはハゲのマッチョに追いかけられる恐怖と葛藤しながら山を駆け下りていた。あれからさらに一時間ほどが経過していたと思う。太陽は傾きかけているし、遠くで狼だかコヨーテだか、テレビの動物スペシャルでしか聞いたことがないようなケモノの遠吠えを耳にした。


 さすがにこれはビビっていいだろう。


 おれは震える足を地面に叩きつけるようにして、黒い木々の間をとにかく走った。そうするうちにようやくといっていいか、山道、つまり人が山の中を歩きやすくする為に舗装した道にたどりついた。


 とはいえコンクリートというよりは色の違う砂利を敷き詰めたような、そこに植物が生えたりしないように最低限の整備をしましたよ的な道だった。横幅は三メートルってところか。


 山道に沿って傾斜を下っていった。時間でいえば一時間くらい。


 そうしたら、そこに幾つか人影があるのに気づいた。


 もちろん、あのハゲの仲間である可能性も考慮して、いったん木々のなかに身を隠し遠巻きにする感じで彼らを観察した。


 三人の男たちが、小柄な少女に絡んでるのが見えた。


 おれが気になったのは、四者の服装だった。なんというか、なにかの撮影をしている役者陣だと、そのときは思った。


 男たちは全員が金髪で、中世ヨーロッパの貴族だか騎士が着てそうな、緑や赤のチュニックに、チャンピオンベルトみたいな腰元からはサーベルまでぶら下がってる。また裾の広がったズボンに先の尖ったブーツを履いていて、三人のうちの一人はオレンジ色のマントをしていた。


 一方、少女は、魔女のようなツバの広い三角帽を被り、青とも紫とも藤色ともいえない不思議な色をした髪が肩までかかってて、黒いワンピースの上から大仰すぎるマントを羽織っていた。またマントを留める胸の中央と両肩には大きな宝石が、右手に握る杖の上部には龍の鉤爪が紅い水晶玉を掴むような装飾が施されていてゴージャスな出でたちだった。あと追加情報。胸が大きい。


 あのハゲの貧相な身なりとはかけ離れている。同じ組織内でカースト制があるのかもしれないが、やつの仲間である可能性は低そうに見えた。


 おれは息を潜め、森の木々と一体化しながら、彼らのなりゆきを見守ることにした。



「お~い魔法使い~。おまえの先祖の予言どおりなら、この時間ココに勇者が現れるんじゃなかったのかよ~、ヲイ!サル一匹いねぇぞ?」


「おまえが国王陛下に進言したから、おれらこの山の領主の息子たちが、内密でわざわざ付き合ってやってんだぞ。コラァ?なにも来なかったらおれらと付き合えや~?」


「そもそも、バラモーン帝国の皇帝、キビノス十三世さまをおいてほかに四神剣の勇者なんざいるわけねぇだろが~?血統もない異世界人が勇者として現れるとか寝言はホドホドにしろよぉ~?」


 貴族たち三者のセリフ。


「必ず勇者さまは来ます!この時間、ここに現れると予言の書にもありましたし、さきほどこの魔法水晶にも山を駆け下りる勇者さまの姿がきちんと映っていました」


 魔法使いの少女は泣きそうだった。ていうか泣いていた。


 おれはこれが何かの撮影なのか、罰ゲームなのか分からずただ成り行きを見守るしかできなかった。カメラさ~ん、どこですか~?いない。そんなものはなかった。


「ヲイ!退屈だしちょっと胸揉ませろよ」


 オレンジ色のマントをした貴族のひとりが、魔法使いに手を伸ばした時だった。


「いや!」


 おっとこれはまずいぞ、とおれが飛び出そうとしたそのとき。


雷鳴竜巻(サンダートルネード)ォォォ!!!!」


 魔法使いが叫ぶと、彼女の持つ杖にのっかった紅い水晶玉が光り、そこからすけべ貴族にむかって眩い稲光が発せられた。


「おがっ!!がぁぁっ!!?」


 マントのすけべ貴族が雷に打たれて黒焦げになった。ホゲホゲいってるので辛うじて生きてるみたい。ありえない現象、ありえない現実。ありえない現場。


「てめぇ!兄貴に何すんだコラァ?」


 ほかの二人は腰元のサーベルを抜いていた。


「あ、あの…ごめんなさい!つ、つい」


 謝る必要はない。正当防衛だろ。


「死ねっ!クソアマァ!!!」


 さきほどの魔法じみた現象といい、おかしな格好といいなにかの撮影である可能性もゼロではなかったが、おれは考えるより先に身体がうごいていた。悲しきヒーローの習性。


「いま助けるぞ!!!」


 おれは木々から身を乗り出し地面を思い切り蹴った。オリンピック選手なみのスタートダッシュ。そして俊敏な身のこなし。自分でいうのもあれだが我ながらすばらしい。


「なんだ、テメェはぁ!!?」


「この卑劣漢め!!!」


 貴族のひとりの後頭部を飛び膝蹴りで倒す。


 そしてもう片方の貴族の手首を後ろへと捻りサーベルをとりあげ地面に放り投げた。たしかな金属音。撮影用の道具には思えないつくり。これ本物じゃね?


「てめぇっ!」


 サーベルを取り上げられ激昂する貴族の鼻っ柱にパンチ。血飛沫が放物線を描いて貴族は倒れた。たった三秒かそこらのできごと。


 久々の暴力。久方ぶりの正義。久しぶりの勝利。貴族の格好に似つかわしくない粗野でばかな三兄弟の屍が歩道に横たわる。…といっても死んじゃいないが。


「……」


 おれは無言で待った。数秒か数十秒か。撮影監督やスタッフやらが飛び出してくるのを。だがどうやらその気配はない。


 彼らがなにものかは知らないが、ガチで三兄弟は魔法使いの少女を脅していたということらしい。


 魔法使いは、まつ毛の長い大きな瞳でこちらを見ていた。


 どこぞの人種にあてはめられない東洋人とも西洋人ともいえない顔立ち。髪の色同様に藤色の瞳をしていて、人形のように美しかった。おれの背筋にさっきのハゲマッチョに睨まれたときとは別の緊張感がはしった。


「あの…助けていただき…感謝します…」


 おれは彼女にどんなキャラで接そうか考えた。紳士的に?それともフランクに?たった数秒か十数秒の間におれの脳細胞は光速で回転する。


 そうだ。あれでいこう。


 週刊少年ステップに連載中の全世界二億部越えヒット漫画「デウス・デウス・デウス~三神の伝説~」の主人公、勇者イサム・スペードルを意識した、ちょっと天然で女性には鈍感だけど、悪を挫き正義をなす感じのステレオタイプの少年誌ヒーロー。


 これでいこう。


「よぉ!大丈夫か?」


 たった、それだけ。ヒーローは人助けしたあとサッパリしてなきゃならない。


「勇者さま!!!!やっと会えましたね!!!!」


 魔法使いは目に涙をため、おれにいきなり抱きついてきた。


 おわ????おおおお…おおおお、どうしましょ。おっぱ…お、…胸のふくらみがガキのころ遊んだ水風船みたいだった。女子の胸はこんなんなってたんか。


「やめろよ!いきなりくっつくなって!」


 恥ずかしさ半分。おれは、キャラを保つため心にもないことをいった。ヒーローは女に鈍感でなくてはならない。照れたりデレデレしたら、それはただの男であってヒーローとはよべない。


「す…すいません、勇者さま」


 魔法使いは赤面しておれからサっと離れた。ちょい寂しい。かなり寂しい。でも照れた顔が可愛いからいいか。


「つい…私が物心ついたころからこの日をずっと、ずっと楽しみにしていました。今日ここに来るのだって私の祖母が来るはずだったのをムリいって私にしてもらったんです!」


「どどどど、どういうこと?」


 これは本音。


 昨夜、杉並区の空にあらわれた黒い巨大な渦。目を覚ませば森の中。見たこともない異様な形態の樹木。ハゲ頭のおかしな男に襲われる。そして中世ヨーロッパ風の貴族に魔法使いの少女。魔法まで見ちまった。


 おれは何かの異常事態に巻き込まれてるらしい。その真相が次の言葉でわかる気がした。


「今日この日、ここで勇者さまをお迎えすべく…予言の書にのっとって私がこの世界へ召喚しました!」


「召喚…?」


 あれか?いま流行の。そういうことなのか?


 ちょうどそのとき、木々の間を見たこともない怪鳥がバッサバッサと飛んできた。全長三、四メートル。いや怪鳥じゃないな、これ。顔はワシのようだけど双翼をもつその身体はライオンのようで…


「さぁ、これに乗ってリンゴン王国の国王陛下の元まで向かいましょう、勇者さま」


 おれと魔法使いはグリフォンに乗って大空に駆け上がった。


 すでに太陽は西に傾き、空を桃色に染め上げている。上空から今までおれがさまよってた山の全貌がみえてきて、街並らしきものはそのはるか向こうにあった。いま考えると今日中に、しかも明るいうちに歩いて下山などむりな話だったようだ。そういや貴族たちが立ってたそばの木に馬がつながれてたもんな。


 とにかく。


 夢ならさめないでくれ!!!おれはどうやら、おれを必要としてくれる世界…異世界に召喚されたらしい!!!


「そういえば自己紹介がまだでしたね。わたしはアデル・キルシュタイン…十七才です」


「おれは…大黒創司!!!同じく十七才だ!!!」


 グリフォンにしがみつきながら前に座るアデルの甘い香りが、おれの鼻腔を刺激した。これが女子のにおいか。


「よし、今日からきみがヒロインだ!」と、おれは心の中で思った。


 これが彼女との出会い。このあとおれは、とんでもない目に遭わされていくわけだけど、まぁそれはおいおい語っていくよ。

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