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ダンジョンと旅するセカイ  作者: 文月九
第三章 目醒める氷河洞窟
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77話 帰還、そして攻略に向けて その2

『セカイ様、アカボシとバルが無事に帰還いたしました。新たに仲間を二人加えたようですので、面会を求めています』


 第二転移門の外には、クリスタルの代わりにウリィとティラノを置いて、二人の帰りを待っていたらしい。


「分かった。今着替えているから、もう少しだけ待っていてくれ」

「ふぁ~~」


 清潔なバスタオルで濡れたメアの頭を大雑把に拭く。

 女性の髪の扱いなんて知らないため不器用な扱いだが、ヘヴン状態のメアを見るとまあいっかなと思えてしまう。


 しかしそのあと俺は、メアがカボチャパンツを履くのを見て、感慨に浸る。

 この世界は地球史と比べて下着が早い段階で発明されている。

 しかし全体的に見栄えは悪く、色気なんて無いに等しい。リンネルなんてノーパン族だった(正確には葉っぱが邪魔して履かない)。

 だから俺はこのダンジョンを攻略したら、女性陣(おっぱい)を守るために質の良いパンツとブラを作ろう……て幼女の裸を見て何を考えてんだか、だが眷属の日常生活を見直すことができた。

 一週間の汚れを落とした俺は、自動洗浄機能付きローブを上着に着る。


「メアもバル達のとこに行くか?」

「ん、みんな揃って楽しみ」


 メアの仲間を大切にする気持ちも、クリスタルの教育あってか段々と育まれている。

 メアはダンジョンの中なので魔法学校の制服風の清楚な衣装とマントを着て、腕には防御魔法の備わった花柄の腕輪バンクルも付けている。

 さらに魔本の入ったショルダーバッグをぶら下げることで、通学中の女児生徒に見えなくもない。不覚にも安全帽を与えようかなとつい悩んでしまった。



 俺達が最下層の始まりの部屋へ到着すると、既にバルとアカボシが跪いて頭を深く下げていた。

 その後方には初めて見る二人が緊張した様子をしており、少女の方はガチガチに直立していた。

 ホワイトウルフと妖精種だな。見た感じ二人も中級はありそうだ。


 俺はどっしりと玉座へ座り、クリスタルはすぐ隣に控える。 

 メアはと言うと、バル達の方を向くようにして、側で魔本を開いて立っている。

 一応これは、新人の二人が奇妙なことを起こすと殺すぞ、のアクションである……()ぇよ。


「セカイ様ッ!不肖バルセィーム、敵将と相見えること能わず無念なれど、五体壮健の身にて戻って参りました」

「グオン!」


 長い長い、そして固い。

 もっとこうやったぜ!て感じのアカボシを見習えよ。 

 しかし二人が元気そうで何よりだ。


「二人ともよくぞ帰った。二人の話を聞かせてくれないか?」

「ハッ!」


 バルが嬉しそうに顔を上げると、活気の帯びた声で話しを始める。

 この場合はバルが代表して、この十日間の出来事を話す。アカボシだと少し誤報の心配があるのだ。

 バル達は中級上位のホワイトウルフを助け、中級中位のルサルカを同行に加え、一度高層の雲に入るもすぐに撤退、残りの日数はホワイトウルフの集落を回り、雪猿やスノーマンを狩っていたそうだ。

 強敵と出会わなかったらしく、専ら自由に行動していたとか。


「うらや……楽しそうだな。それでその二人は眷属にしても?」

「構いません!」


 お前が言うなて……。

 ルサルカの少女は金髪ロングに、ワンピースのようなロングシャツの一枚着姿のみ。

 バルの話も長かったので、二人には座ってもらったが色々と見えてやばかった。付け根の部分ってこんななってんだなあ。

 それにルサルカの容姿はリンネルとタメっぽいのでジュニア組だな。

 俺は眷属をリトル組、ジュニア組、シニア組、アダルト組の四つに何となく分けている。それによって対応もまちまちだ。


「ホワイトウルフとルサルカ。遅れたが俺はダンジョンマスターのセカイだ。これからは俺とクリスタルのために働いてくれることを願うが?」

「クゥル!」

「ア、アタシも、がが、頑張ります、です」


 ホワイトウルフは快諾し、ルサルカは声を震わせながら答えた。

 やっべぇ、ルサルカをビビらせすぎた。バルの紹介だともっと溌剌な女の子だったが、これが内弁慶という奴だろうか。

 まあ俺も少し言い方が悪かった。これだと断れば殺しますよと言っているもんか、最下層を見られたからほぼ事実だけど。


「安心しろ。仲間を不幸にしたりはしない。ルサルカはこの恰好はまずいから……先ずこれを着てくれ」

「え!?これを、アタシに……いいのですか?」


 風属性魔法でゆっくりと投げ渡すと、ルサルカはおずおずと受け取る。

 俺がダンジョンコアから作り出した物は、水兵隊のセーラーをイメージした青いワンピースだ。

 今の無地で地味な服よりかは、格段に可愛いらしい衣装だ。女の子なので気に入ってくれると嬉しい。


「そうだ。可愛い君には、きっと似合うはずだ」

「あ、ありが、ありがとう、ございます……」


 するとルサルカは顔を赤らめて、ワンピースを大事そうに抱いてくれた。

 よし、これで狙い通り眷属化をしやすくなった!打算以外の何物でもない。

 主である俺に、多少の心を開いてもらわないと、外部から来た魔物は眷属化できないんだよな。

 服の費用も、魔物召喚の中位だと確実に1000DPはするので安い方もんである。


「ホワイトウルフの名をミカ。ルサルカの名をルビカとする。これからよろしく頼むな」

「お、お願いします!」

「クオン!」


 俺はホワイトウルフとルサルカを無事に眷属にした。

 このルサルカのルビカは水中でも生活が可能で、水を自在に操る水網の能力を持つ。

 水限定の念力みたいな魔法だが、使い方によっては強大になる。

 ホワイトウルフのミカは、ブラックウルフだった頃のアカボシよりも、実力はやや劣るが中級の上位であるため即戦力に成り得る。

 二人ともいい魔物を仲間にした。


「よし、バルはルビカの、アカボシはミカの主になれ!」

「え?」

「グオォ?」

「当たり前だろ。お前達が拾って来たんだ。責任を持ってお前達の部下にしろ」


 眷属を持つことで、リンネルとメアも多少は大人しくなってくれた。

 またこいつらの場合は、一匹狼の気質が強いから本当に強い者しか認めない。ましてはルビカに至っては完全に二人と違うタイプの魔物だ。もし旅立つ前に眷属化のことを言うと、潔く殺してただろうと思う。卑怯なやり方だが後出しの命令にした。


「しかし俺とアカボシ殿は階層を持たない独立戦闘隊でございます!部下がおりますと行動に支障を来しますが?」

「そこは安心しろ。二人の役割は普段と変えるつもりはない。ただミカとルビカを少しでも気に掛けるだけでいい。仕事も俺達がそれぞれに与えるつもりだ」

「ハハッ!」


 一応これで納得してくれたので、それぞれは初めて自身の眷属を持つことになった。


「これでやる事は終わった。バルよ、お前達の成果を見せてくれ!」

「お任せ下さいッ!数々の魔物や鉱石を見つけてきました————ゲヘナ・ハーヴェ!」

「おお!」


 出るは出るはの魔石と討伐部位。

 その勢いに興奮して、俺も立ち上がってしまう。


「スライムがアイススライムとクーリングスライムの二種類がございますね」

「でかした!」

「有り難きお言葉です」


 さらにクリスタルでも知らない魔鉱や、召喚目録に増やせられる魔物が何と二十匹以上!

 やはり班別行動をさせてよかったよ、効率が素晴らしい。

 これでバル達の報告は終わった。

 眷属は集い、仲間も増え、ダンジョン攻略に向けての、作戦を開くことにする。



◇◆◇◆


「この場を借りて、改めて自己紹介をさせて頂きます。わたしはルオットチョジク、名はまだありません。皆さんもご存知の通り、わたしは先日まで敵側にいました。そのため皆さんが攻略するダンジョンの情報を、一つ残らずお教えできます」


 時刻はお昼頃、マナーの屋敷の大広間で、ルオットチョジクは眷属の前に出て説明を行う。

 ここに集まって貰っている眷属は、遠征組以外にも、マカリーポン姉妹に、ミ=ゴウの代表のミーエくん、アンデッド三人組に、新加入組など、まさに総力戦の構えである。

 ルオットチョジクの説明を受けながらも、使用人のレヴンとメラニーはせっせとお茶菓子の用意をしてくれるため、割と空気は賑やかである。


「ダンジョンの位置ですが、先ず高層には魔雲が立ちはだかっています」

「あの魔雲か……クリスタルが必要になるよな」

「いえ、魔雲は無視出来ます。そもそもアレは、わたし達にとっても邪魔な存在でした」


 色々とツッコミたくなって言葉が出ない。

 すると黙っていた俺の態度を察して、ルオットチョジクは話を続ける。


「地上が駄目なら地下からです。ベルクハイルさ……ゴホッ、ベルクハイルは長い年月を経て、高層と中層を隔てる山に、隧道を掘りました」

「それは、かなり苦労したな……」


 まさかトンネルを掘っていたのか。

 確かに時間さえあれば不可能ではないが、並々ならぬ苦労と犠牲があっただろう。


「ええまあ、泥だらけになるのも割と楽しかったですけど……つまり今回はわたし達もその隧道を使うのです。ベルクハイルのことです。必ずダンジョンで待ち構えていますので、穴を潰される心配もないでしょう」


 潰されてもクリスタルの頑丈さとリンネルとミ=ゴウの穴掘り部隊が入れば、問題はないだろう。


「そしてダンジョンに入ってしまえば、クリスタルさんに任せても?」

「ご安心ください、私とセカイ様は一度経験済みです。ルオットチョジクのご案内さえあれば、深層まで苦労も然程ないでしょう」

「それは心強いです」


 ダンジョンのことはダンジョンにお任せあれ。クリスタルのトンデモ特攻で、罠も敵兵も無視して進みます。

 しかしクリスタルとて限界はあり、上級幹部の住む深層までを目標としている。

 ダンジョンの内部の話が終わると、次は敵戦力の話である。


「ちなみに序列二位の氷人狼(フリストガルー)はアカボシさんをご指名しています」

「だってさ、やったれアカボシ!」

「グォン!!」


 敵の上級戦力も残すは、中位の絶壁の氷男ヴァドウル、上位のフリストガルー、準天災級のスヴリーの三体だけ。

 こちらでその相手が可能なのは、クリスタル、アカボシ、バルと丁度三人のため、戦力としては拮抗している。


 メアとアンデッド組には敵ダンジョンに残る中級以下の相手を、リンネルは怪我のためクリスタルの中での砲撃班をしてもらうことにした。


 他の砲撃班には、マカリーポンのファウナと、ルサルカのルビカ、ミ=ゴウ五人による弩部隊も加わり計八人。

 遊撃班には、マカリーポンのフローラと、ホワイトウルフのミカの二人。

 残るルオットチョジクは、ダンジョン内での作戦参謀と、魔力回復の役割を担ってもらう。

 これが今可能な最大の布陣であろう。


 必要に応じて魔物召喚による戦力の投入も出来るが、その場合の魔物の扱いはほぼ捨て駒になる。

 数も一日に上級が一体、中級が十体までと限度が決まっている。

 それに上級ならともかく、中級の下位では即戦力として期待は難しい。


 また俺としては、このメンバーだけでダンジョンを攻略したいのだ。それは徒らにDPの消費を抑えるためでもあるが、自分たちに課す試練の名目もある。

 俺の目指すところは頂点である魔神級だ。

 ダンジョンを攻略してDPを増やす以外にも、魂の器を大きくするために成長を促進しなくてはならない。ゲーム的に言えば、仲間内での経験値を分散しないためである、とクリスタルに助言されたのだ。


「セカイさんにはベルクハイルさ……ゴホッ、ベルクハイルの相手をお願いします。彼自身も大将同士による一騎打ちを所望するはずです」


 ルオットチョジクは、油断するとベルクハイルを敬称で呼び間違える。そのたびに誤魔化そうとするので面白い。


「分かっている。天災級の相手は同格以上でないと務まらない」


 普通ならば、RPGの勇者パーティーのように、確実性重視で一体一体のボスを全員で取り掛かるのだが、正直言うと俺もベルクハイルと闘ってみたかった。

 それは単なるダンジョンマスターの我儘であるため、どうしようもない。


「ただベルクハイルは元魔王級の実力者です。そのためにもクリスタルさん達の迅速な支援が必要になります」

「心得ております」

「グルゥゥ」

「必ずセカイ様を、お守りしてみせます!」


 しかしこれはダンジョンvsダンジョンのダンジョン戦である。

 最初から俺だけの力で勝てると自惚れてはいない。

 ベルクハイルを殺すためには、眷属の力も必要になるだろう。


「それではこれで、わたしからのダンジョンの説明を終えます。決戦はいつ頃にしますか?距離からして六日もあればダンジョンへ到着しますけど?」


 ベルクハイルを追い詰めるための用意、ミ=ゴウに頼んだ武器、トムテ達との合流、アンデッドの補強、十分な休息と程よい緊張感を保てる日数は……。


「八日だ!ダンジョンに突入するのは八日後にする!それまでに皆は、決戦の準備を終えていろッ!!」

『はい!』


 ダンジョンに入るのが八日後であるが、トンネルの中でも戦闘はあるかもしれない。

 しかしこれでようやくダンジョン攻略の目処が立った。

 敵はまたも格上だが、今回の俺達は以前とは違い、眷属も増えて一つのダンジョンになった。

 だからか俺には恐怖や不安という負の感情が一切なく、決戦を待ち遠しい気持ちで胸を抱える。


次回から漸くダンジョン攻略になります!

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