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ダンジョンと旅するセカイ  作者: 文月九
第一章 冥途の館
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7話 思わぬ繋がり

 目を覚ますとこの世界には珍しい、寝心地のいい柔らかなベッドの上にいた。

 見知らぬ天井に戸惑いも隠せぬが、顔を横へ向けると、すぐ傍の椅子には腰をかけるクリスタルの姿を発見できた。


「おはようございます。お目覚めの体調はいかがですか?」

「今からでも動けそうなくらいばっちりだ。ここは?」


 身体のだるさも抜け、傷も綺麗に元通りになっていた。ダンジョンマスターの回復力は高く、一晩も眠れば体調は万全のようだ。

 無論眠っているときに冒険者ギルド職員に治療をされた形跡は体中に施されている。

 そのためか元からある回復力と相まって、一日で目覚めることとなった。


「ここは冒険者ギルドの休憩室です。あのあとセカイ様とレオニルさんの治療を済まし、私は冒険者ギルドに事情説明をさせられました」

「事情というと、なぜ低階層に中級の魔物とダンジョンマスターが現れたのか、か?」

「はい、一応私は『よく分からない』とだけ答え、後は状況説明だけしました。しかしその原因は……非常に申し上げ難いのですが————」

「俺たちだろ?」


 正確には俺だ。影男が執拗に俺だけを狙っていたのが分かる。

 初めに現れたのも俺の背後で、影男がクリスタルやレオニルさんを逃がしたのも、俺だけを標的にしていたからだ。

 クリスタルに目も呉れなかったのは、彼女が魔力を持たない身体で、まさかダンジョンが人型だと思ってもいなかったからだろう。


「恐らくそうです。ダンジョンマスターには、同じダンジョンマスターを感じる力があるのでしょう。そしてこれは私の予想ですが、ダンジョンマスターをその身に食らえば、かなり多くのDPを獲得することができます。それは魔物や人では図りしれないほど大量のDPです」


 影男との対戦中にヤツが力、力と呟いており、おそらく大量のDPを獲得し力を得るために俺を襲ったのだろう。クリスタルの予想は正しいと思う。

 となると、ここのダンジョンへ潜るたびにヤツが待ち構えていることとなる。

 あの湖沼に誘う鬼火(ウィルオウィスプ)を偵察に俺たちの能力を分析させ、隙ができた所を奇襲してきた相手だ。クリスタルが普通の人間だったらそれで終わっていた。その後の対戦も一方的に嬲られる展開だった。

 影男と自分の力の差は大きい。天災級と上級の間には、越えられない大きな壁が存在している。


 だったら、そのままこの街を去り逃げるのか?

 いや、違う。頭の中で出てきた質問に即答する。

 俺はクリスタルを世界一のダンジョンにすると約束した。

 そんな大きな野望を抱いている者が、強敵が現れたからといって、ずっと尻尾を巻いて逃げていれば一生その願いは叶えることはできない。

 ダンジョンマスターを食らえば膨大のDPを獲得することができる。クリスタルのその言葉に、俺の心臓は大きく動かされた。

 今こそ野望を叶えるチャンスなんだ。それにやられた借りをまだ返していない。

 俺は決意を固め、クリスタルと目を合わせ自分の考えを伝える。


「DPを奪うのは俺たちの方だ。あの影男をぶっ倒すぞ」

「はい、セカイ様なら、そう仰しゃると思っておりました」


 クリスタルは膝の上に置いていた着替えをセカイに差し出した。

 買った覚えのない服だったので、きっと冒険者ギルドの方から受け取ったものだろう。

 ベッドから出て服を着替える。クリスタルの方は背を向けて着替えを終えるのを待ってくれる。


 差し出された服は彼女の甘く清らかな香りでいっぱいだった気がする。

 しかし、ダンジョンに匂いがそもそもあるのかと考えてしまった。

 覚悟を伝えた手前、こんなことを考えるのもどうかと思うが気になってしまったのだ。

 この香りがクリスタルのものなのか、冒険者ギルドのものなのか……。

 その疑問を確かめるべく、着替え終えた後にこっそりと彼女の後ろへと立つ。

 そして彼女の長い髪を掬い、鼻に近づけ匂いを嗅ぐ。


「ひゃん!?」


 突然のことで、クリスタルは可愛らしい声を漏らしてしまった。


「一体突然何をなさるのですか!」

「いやごめん。ちょっと気になったことがあったんだ」

「何をですか!?言ってくれましたら……そのう、いつだって好きなようにしてもよろしいので、急に驚かさないでくださいっ」

「悪い悪い、つい出来心で。それで、いい匂いだったぞ」

「…………もう!」


 反省の色を見せない俺にクリスタルは罵声を浴びせながらも、俺に続き部屋を後にする。

 普通に考えてもただのセクハラで、クリスタルが怒るのも当然だ。

 それでも、そんなことをして平気で思えるのは、彼女がダンジョンで、俺がダンジョンマスターだからかもしれない。二人は一蓮托生、絶対に切れない絆は、この世界の誰よりもあると自負している。

 後ろに続く彼女の顔がまんざらでもない風に見えたのは、きっと俺の気のせいではない。




「もう起きたのね、大丈夫?」

「ええ、昔から回復力には自信がありますので」


 冒険者ギルドの一階へと降り、受付をしていたエルフのシィルススさんとお話をしている。

 時間は午前の10時に差し掛かったころだ。

 レオニルさんの様子や試験、ダンジョンのことを確認する。


「レオニルさんはまだ眠っているわ。いくらクリスタルさんが試験に合格したといっても、彼に直接確認をとらないと認定書は出せないの、ごめんね。ダンジョンは彼が低層で上位の魔物に遭遇して重症になるくらいの大事だから現在は封鎖しているのよ」

「封鎖ですか? いつごろ解禁になりますか?」

「そうね、現在上位星ランクの冒険者を雇って調査しているところだから、最低でも7日は封鎖してそうかな?」


 シィルススさんの言葉の雰囲気では、影男が天災級のダンジョンマスターだとは思ってもいないそうだ。

 そこらへんは、クリスタルが上手くぼかして説明したのだろう。

 冒険者ギルドはせいぜい中級と上級の魔物が二階層に突然現れただけと思っている。それもそうだ、まだ冒険者でもない俺が逃げ切れたのだから。

 しかし冒険者の資格はまだ手に入らないのか。

 これからのことを考えると多少不都合になるが、そもそもレオニルさんがこうなったのも自分達が原因であるため、むしろ彼に済まないことをしたと思っている。

 ダンジョンの方も今すぐには再戦するつもりはなかったので、ちょうどいい時間だと割り切る。


「でもね、冒険者仮認定カードを渡すわ。期限は一カ月しかないけど、これで冒険者とだいたい同じ活動が許されるわよ。彼が目覚めるまでは、それで我慢してね」


 すると、星が一つ彫られている鉄のカードを受け取った。星の下には、この世界の言語で仮と彫られた文字もある。


「ありがとうございます。でも受け取っても良いのですか?」

「大丈夫よ。セカイくんは強力な魔物から彼の命を救うために足止めしてくれたのでしょう?これだけでも十分君の冒険者としての力と心を保証しているわ、そして私たち冒険者ギルドは君たちに感謝しているの。こんなことしかできないのだけど、ありがとうね。彼を救ってくれて」


 レオニルさんは相当この冒険者ギルドから信頼されているようだ。実際、一緒にダンジョンに潜ったのだから俺でも分かる。彼の面倒見の良いところや誠実なところが何度も見えた。

 俺は仮冒険者カードを懐に入れ、最後に一番聞きたかったことを質問する。


「最後の質問なんですけど、この前冒険者試験の予約を済ませた後別れ際にシィルススさんが言っていた、フォルストの神っていうのは、どういった神様なのですか?」

「それはね、私の故郷である、この国と合わせて四つの国の境界にある大森林に住む、森精族エルフに伝わる私たちの始祖ともいえる神様のことで、いつも私たちを精霊で見守り幸福を与えると伝わる神様よ。どうして人間種の君がそんなものに興味を持ったの?」

「その前にもう一つ教えてください!故郷と言っていましたがシィルススさんはいつ故郷を飛び出しこの街へ来たのですか!?」


 思わず、緊張で声が先走る。

 シィルススさんも急に取り乱した俺の様子に少し怪訝な顔をしている。

 しかしそんなことを気にしない。正確に言えば、気にしている余裕がないからだ。

 このダンジョン都市へ来てから見て、聞いて、起きた様々の情報を思い出し、俺はとある過程を持っていた。


 一つ目は、レオニルさんが言っていた。

『およそ50年前に何もなかった村から突如ダンジョンが発生した』


 二つ目は影男と闘っている最中に彼が呟いていたこと。

『も……すぐ……だ。フォ…ストの神……よ。リスティイ、シィル……漸く…逢…える』


 残る最後の決め手となった三つ目は、影男の素顔を見たときだった。

 それは金髪の若い顔をしたエルフの男性だった。


「ええっと……みんな知っていますし、隠すようなことではありませんのでお教えしますが、戦争により故郷を離れたのは7歳の頃で、ちょうどダンジョンが発見された50年前ですね。それから2年後に冒険者ギルドの保護を受け、まだ発展途上だったこのダンジョン都市の冒険者ギルドに働くことになりました、それがどうしたのですか?」

「俺たちはダンジョンで、とある男性のゴーストに襲われました。そして彼はこう言ってました。『もうすぐでリスティイとシィルに逢える』と。何か心当たりはありませんか?」

「ッ!?」


 その言葉を聞いたシィルススさんの顔が血が抜けたように白くなる。そして唇が震えているのが分かる。

 あまりにも唐突に聞かされた言葉に戸惑いながらも————。


「その男性のゴーストは……おそらく、私の父です」


 やはりシィルとはシィルススさんのことだったのか、エルフと出会ったのが一人目だったため、ゴーストがエルフと知り真っ先にシィルススさんを思い出した。

 ゴーストの呟いていた言葉にシィルという単語が含まれていたため、あとはシィルススさんに確認をとるだけで真相を探ることができた。

 俺はシィルススさんの気持ちが落ち着くのを待ちながら、自分の推理に確証を得たことで、『冥途の館』の攻略法を練る。


「もうすぐで休憩なので、その話はその時詳しく教えてくれませんか?」

「はい、俺もシィルススさんにお願いしたいことができましたので、お待ちしています」


推理の方を強引に感じたのならスミマセン<(_ _)>

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