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ダンジョンと旅するセカイ  作者: 文月九
第二章 始動するダンジョン、増える仲間、目指すは神の座。
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41話 天災と災害 中編

天災と災害を前中後にしました。

あと一話続きます<(_ _)>

 アカボシが眷属の中で最もバランスのいい能力の持ち主であるだろう。

 そのためセカイのアカボシにおける信頼感は非常に大きい。


 爪は刃のように肉を切り裂き。

 牙は鋏のように獲物を捉え。

 四足は颯爽と敵の攻撃を躱す。

 この通り身体能力が優れ、魔法の扱いにもアカボシは上手いので隙が無い。

 その証明のように今、魔法でアカボシは全身から炎を放っている。


 その様子はまるで夜空に降り注ぐ火球を彷彿とさせ、アカボシが高速で魔物の群れに突撃すると、夜闇に光の軌跡が生まれる。


「グルァァァアアア!!」


 コカトリスとオークを捕まえては同様に炎で包み殺す。

 その魔法はセカイが風属性魔法の不可視の鎧(エアプロテクション)を使用するのと同じ原理である。

 しかし火は風と違い、熱や燃焼も伴う。

 つまり風を纏うことよりも何倍の体力や魔力を消費しているはずだ。

 そのためアカボシは炎の鎧をすぐに解除する。


 アカボシが丸焼きになったコカトリスを口へと放る。

 食べることで体力の補充を狙っているようだ。

 コカトリスの体長は鶏の部分だけでも80㎝程と鶏にしては大きく、雄鶏と蛇の尾のある二頭の合成魔獣だ。

 羽を燃やことで取り除き、肉だけの部分を晒すと美味しいそうである。

 て、お前がただ食べたかっただけじゃね?

 オークの方も、アカボシは背中の肉を食いちぎっては貪っている。


「グロン」

「どうしたアカボシ?」

「グゥグル!!」


 アカボシが集団の中に生き残りのコカトリスを首を振って指す。

 あいつ美味しい?

 噛めば噛むほど濃厚な肉汁が染み出て、旨味を一層引き立てる。脂の乗った肉の柔らかさは非常にまろやかで誰もが一味する価値があるって、戦闘中に食レポしてんじゃねーよ。

 え、違う?

 アカボシが転移門の方にも首を向ける。

 クリスタルがいないと会話に多少の支障を来すも何となく分かる。


「ググルウ!」

「うん?…………あぁそうか!」


 アカボシはコカトリスをバロメッツ同様に家畜化するつもりだ。

 魔植物のバロメッツを栽培するのは理解できるが、魔物を家畜にできるのだろうか?

 しかし試してみる価値もある。

 コカトリスの鶏肉と蛇肉、卵も魅力的でもあり、好奇心が擽られた。


「一応召喚目録にも加えるために、コカトリスの一羽はダンジョンで殺すぞ」

「グウォンッ」


 それはコカトリスが雄鶏だけだと聞くからだ。

 もし捕らえた中に雌鶏が一羽もいなく、そのために卵や雛を生産できなければ家畜する意味もない。

 コカトリスが両性であればいいのだが、生態もよく分からないため、場合によってはDPを消費して雌鶏を召喚する必要がある。


「コケッコ!?シャシャー!?」


 コカトリスの二つの頭が、完全にアカボシと俺に狙いを付けられたことで動揺している。

 しかし数秒の内にして生き残りの8羽は二人に気を落とされ、ダンジョンにいるアカリヤへと保護された。


「これでいいな」

「グンっ!」


 俺は一仕事を終えて手をぱんぱんと払い、アカボシはコカトリスの家畜化を待ち遠しくて舌を舐める。

 しかし今は戦闘中であるので、アカボシは本来の仕事である魔物退治を、セカイの指示により飛行種を優先することになった。


「グガアアッッ!!!」


 そしてアカボシが再び炎を纏い、空中にいる中級の毒爪鷹ポイズンホークに狙いを定める。

 アカボシの脚力なら跳躍で下降している飛行種を捕らえることはできる。

 そして跳び上がったアカボシは爪でポイズンホークの体に振り下ろす。


 しかしポイズンホークもアカボシの接近には初めから気がついていたために、翼をはためかせ容易に避け、アカボシの攻撃は空振りとなって地面へ着地する。

 更にポイズンホークが毒を帯びた紫色の羽根を、飛び道具のようにアカボシへ放つ。

 今度はアカボシが体の炎を使って羽根を焼き払う。

 そして両者は向かい会う。


 空は飛行種われわれの領域だ。

 例え階級に大きな差があろうとも、ポイズンホークの余裕な態度からはそう告げているように見えた。


 しかしアカボシもそれだけで飛行種を圧倒できるとは考えてもいなかった。

 そのためアカボシは雄叫びを上げて、体の炎を限界まで放出する。


「グオオオッ」


 ヒュン


 と空気を切った音がした。

 次にボワンっと音を鳴らしてポイズンホークが火達磨となって落下する姿を見せた。

 どうやらこの勝負は一瞬だった。

 アカボシが炎の噴射を使った爆発的な加速力で、空中のポイズンホークまで接敵し、そのまま爪を振って、炎をポイズンホークに向って発射したのだ。


「だがまだ改善の余地もありそうだな」

「グワン」


 ポイズンホークを回収しながらアカボシの状態を観察するも、火属性魔法の大技を使った割にまだ余裕がある。

 いくらかの毛がチリチリになっただけで体調や魔力に問題がないみたいで安心した。

 しかしその技を使い続けると、我がダンジョン唯一のモフ獣種が失われて、癒し要素が一つ減ってしまう。

 そのため今度アカボシの修業に付き合うのもいいかもしれない。



 それから戦闘も終盤に入り、生き残りの魔物も既に百体しかいない。

 またリンネルとバルが律儀に数えていたのか、戦闘を止めてDP回収を手伝ってくれている。

 更にこちらの味方はメアが死体を操り、回収していない遺体を次々とアンデッド化させているので、二百体近くはいる。


 そのため最後に、敵の最奥へと飛び込んだクリスタルの戦闘をゆっくりと見ることにした。

 実は魔物の群は奥へ行くほど、階級が中級へと強くなっている。

 恐らくそれをクリスタルも理解していて、真っ先に危険な所へと飛び込んだのだ。


「ローサ、リリウム、準備はいいですか?」


 クリスタルの掛け声と合わせて双剣からは魔力が放たれる。

 赤い両刃剣のフランベルジェをローサ、白い片刃のショートソードをリリウムという。

 それは魔法道具に動く武器(リヴィングウェポン)を憑依させた魔物だ。

 そのため魔法道具に備わっている能力と、リビングウェポンの能力の二つを扱える。


 クリスタルは今まで地上のハイオークと黄妖狼、空の首長梟スネークオウル針羽鳥ニードルバードの一団に囲まれていた。

 しかし、クリスタルが素早い動作でハイオークに接近すると、その腹肉をフランベルジェのローサで綺麗に抉る。


「ぐがっ!?」


 ローサにはバルの槍と同じな精神支配の能力が付加されていた。

 しかしローサの切れ味が想像を超えるほどで、豆腐でも切るかのようにオークの分厚い肉を削ぎ落とし、精神支配を掛ける間もなく絶命させた。


 更にローサがオークの血を啜り、赤い剣身が伸びる。

 魔物の血を剣に変えているらしい。

 そして血を吸い終えたフランベルジェが蛇腹剣のような鞭になった。 

 ローサの薔薇のような深紅に、鮮やかな血の赤黒色が合わさり、より残虐性が増した剣身は薔薇園の美しさに思えた。

 無論この能力は魔法道具に与えていない。


「到底アカボシの足下にも及ばないですね」


 ローサの意志で自在に動く鞭の剣が、黄妖狼の体を傷つけ精神支配で動きを止める。

 足を止めた狼など相手にもならない。

 血の鞭が次々と狼の急所を貫き絶命させる。



 その一方的な虐殺を見ていたニードルバードも黙っていない。

 上空で加速を乗せ、ハリネズミのような針の体毛でクリスタルへと突進する。

 それがニードルバードの攻撃手段なのだろう。

 しかしクリスタルには無意味だ。


「貴方の針では私に傷一つだって付けられません」

「ミァ!?」


 クリスタルは飛んできたニードルバードを、野球ボールでも捕るように手で掴み、ローサにニードルバードの体を貫通させる。

 すると、ニードルバードを捕らえるために、腰に戻したショートソードのリリウムが揺れる。


「すみません、リリウム。決して貴方が必要のないわけではありませんよ」


 どうやらリリウムがローサばかりを使われたので妬いていたようだ。

 実際にローサだけで十分な実力を持っている。

 するとクリスタルが、ローサとリリウムの刀身を合わせる。


「ローサは魔物から吸収した魔力をリリウムに渡してください」


 クリスタルの命令に従い、ローサの剣身が元に戻る反面、リリウムの白銀の刀身が盛大に輝きだす。

 ローサはドレインもしていたのか!?

 それも双子であるためか、リリウムに魔力を渡すことができるようだ。


「二人ともいい子です。では行きますよリリウム————風斬ッ!!」


 クリスタルがリリウムを空中のスネークオウルに向けて振る。

 するとリリウムからは大きな風刃が放たれて、数体を巻き込み真っ二つにした。


 風斬とは、単なる俺の使う風刃の強化版で、威力は大体5倍だろうか。

 しかし、それを中級のリリウムが使えたのは凄い。

 風の威力も速度も文句なしの強力な魔法である。


「よく双剣を使えているな」

「見てたのですか。これでも最初の方は何度か失敗していましたよ」


 近中距離の技を持つローサに、中遠距離の技を持つリリウムか。

 それに足りない魔力を互いに与えられるとは、いい双剣ではないか。

 ローサとリリウムは魔物であるため進化もするし、まだまだ使える魔法もあるだろう。

 召喚限界がリビングアーマーと合わせて四体までであるため、残り二体を早々に召喚する価値も生まれた。



 そしてクリスタルやアカボシが中級の魔物を容易く退治する。

 しかし妙でもある。

 魔物の群も既に壊滅状態であるが、数少ない生き残りは逃げる気配を見せない。

 人だと戦況が劣勢になるにつれて、逃亡を謀る者も現れるだろうに。

 何より群の主が未だに姿を見せない。


「見てないで出てこいよ、群のボス?」


 上空を見上げて灰色カラスが姿を現すのを待つ。

 始めからこの戦闘を、遥か上空で覗いていたはずだ。

 こちらが気づかないでいると思っていたか?



「きゅああ!!」



 すると鳴き声の方向から、月に照らされる大きなカラスを目で捉えることができた。

 このカラスは上空千百メートルを超える高さからずっとこの戦況を覗いていた。

 また何よりこのカラスの羽は迷彩効果があるらしく、旋風探知レーダーで直線触れないと発見することもできなかった。


「大きい……そもそもあそこまで、攻撃が届きませんな」

「……ググン」


 灰色カラスが翼を広げると10mを余裕で超すだろう。

 そしてバルやアカボシは、あの高さにいる灰色カラスに攻撃を当てられない。

 この世界でも制空権が、戦の勝敗を大きく左右する。


「くかかかかかっ」


 灰色カラスが上空から土属性魔法を使用してきた。

 それは土槍である。


「避けろっ!!」


 ヒューーズドンッ!

 土槍の一つが湖にも落ちて大きな水飛沫が上がる。

 飛行種がこれほどの土属性魔法を使えるとは驚いた。

 その魔法は上空から、ただ土の塊を落としているだけである。

 しかし安全圏から行う空襲は、地上にいる者からすれば、非常に厄介だ。


 アカボシがリンネルを咥えて、土槍や岩石を躱す。

 クリスタルがメアの前へと立ち、盾となる。

 灰色カラスの攻撃には、灰色カラスの仲間やアンデッドだって巻き込まれている。

 だから今までずっと戦況を見ていたのだろうか。


 この中でリンネルとメアが危険だ。

 アカボシのような攻撃を躱す素早さも、クリスタルのような防御力も、バルのような動体視力や強靭な体も持たない。

 直撃すれば、おそらく死に至る。

 安全を考えて二人をクリスタルの下へと帰すのが適切だろうか。


 メアを心配していると、俺なら上級程度をイチコロだと期待していた台詞を思い出す。

 また天災級になってからダンジョンで、新魔法の修業をしていたことも思い出す。

 この魔法なら灰色カラスを撃ち落とせる。

 ついでにメアの期待にも応えてあげられる。


「バル、少しの間だけ俺をあの礫から守ってくれ」

「ハッ!必ず全ての攻撃から、セカイ様をお守りしてみせます」


 バルはゲヘナを使い、武器を呪剣から風の大斧に持ち替える。

 それで飛来する岩を打ち返すようだ。

 バルの技術ならば問題なくできるだろう。


 これからは集中がいる。

 後はバルを信じて、ダンジョンの中では満足に練習すらできなかった雷を生み出すまでだ。


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