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ダンジョンと旅するセカイ  作者: 文月九
第二章 始動するダンジョン、増える仲間、目指すは神の座。
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40話 天災と災害 前編

「クリスタルはアカボシを呼んでくれ、それと交代でお前達は下がりな」

「承知しました————《アクセス》」


 ここからは時間との戦いでもある。

 バロメッツ農家のダレンと交わした契約には、息子のアレンを救うための薬草の採取と、魔物災害の元凶である灰色カラスを退治することの二つである。

 しかしできることなら、眷属に実戦経験を積んでもらいたい。


「魔物災害による魔物の相手はほぼ眷属だけで任せることにする。そこで武器の調子を試してみるのもいい。だがこれはダンジョンを攻略するための前哨戦でもある。決して油断は禁物だ」

「無論です。刃こぼれだってさせません!」

「薬草も絶対手に入れてみせますっ」

「死体、いっぱい作る」


 各々のモチベーションは高まっている。

 とくにバロメッツのために身体を売った(売らされた)リンネルは、戦闘には燃えないタイプであるのに気合いが十分だ。

 可哀想なのでどこかで埋め合わせするべきだろうかとつい悩む。

 眷属がダンジョンの中へと帰っていき、入れ替わるようにしてアカボシが登場した。


「頼むぞアカボシ……時間も惜しい、ガチで行け!」

「グンっ!!」


 アカボシの脚の速さなら60平方キロメートルもあるクル湖の外周をほんの数時間で、北部まで移動できるはずだ。

 しかし道中で確実に魔物災害に出くわすことになる。

 魔物災害を知らせた村の斥候の話では、魔物の群れは北から反時計回りに移動しているらしい。

 つまりこちらは時計回りで移動すればいい。


 しかしそこで問題が発生する。

 それは魔物ではない、人の目である。

 魔物災害の戦闘とアカボシに乗って移動している所を見られることだ。


 その心配を回避するためにも、アカボシには俺も乗り込み常に旋風探知レーダーとアカボシの鼻による二重索敵で人の気配を先に察知する必要がある。


 クリスタル自身はダンジョンであるために、他の眷属同様収容することはできない。

 つまり現在はクリスタルとの快適な夜のドライブである……はずもない。


 馬のような手綱も鞍もない、豪快に毛皮を手づかみである。

 そのため視界や体が激しく揺れ、着地する瞬間の衝撃だけで索敵魔法の邪魔になる。

 乗馬経験はないが、馬がいかに人を乗せるのに適している動物だか分かる。

 なので多少の魔力を消費するが、金の刺繍のローブから触手を召喚して体を固定させる。


「クリスタルとアカボシはきつくないか?」

「私は大丈夫です」

「グルグゥ」


 二人とも大丈夫なようだ。

 アカボシに乗るのはクリスタルを後ろにしている。

 また体を固定しているので色々と特典があったがそれくらいは役得だろう。


 そして日も完全に沈み、月明かりの下で漆黒の狼は駆ける。

 その速さを正確に捉えられる者は影すらいない。


「見つけたぞ、クリスタル」

「はい————《アクセス》」


 湖畔を移動して一時間ほどで、ついに移動する魔物の群れを発見した。

 そこは見晴らし良い砂利の上、また人の気配もなく戦闘には都合がいい。

 しかし灰色カラスが見当たらないので、群の最後尾にいるのだろうか。

 時間にもまだ余裕がある。

 勝手に出ていったために、村には一匹も魔物を来させない必要がある。

 そのため全ての魔物をここで退治するまでだ。

 ついでにDPに変換することも忘れない。


 敵の魔物はゴブリンやオークなどの亜人種を始め、クル湖に生息する蜥蜴人リザードマン半魚人マーマン、アカボシの亜種であった黄妖狼イエローウルフ、そして魔物災害の主が飛行種だけあって鳥系が多く、半鳥半蛇コカトリス首長梟スネークオウル針羽鳥ニードルバード毒爪鷹ポイズンホークもいる。

 まったくよくもそれだけの魔物を束ねたことだ、他にも名の知らないネズミや猫や蛇の魔物もいた。

 全体を観察して数えると500体ほどいるも、主らしいのは見つからない。

 対してこちらの数は6人。

 しかし全員が上級以上と天災級の俺が作った精鋭たちだ。


「数は大体500だ、良かったな平等に割れるぞ。クリスタルはゲートを開いたままにしてくれ、回収はこちらが専念するから」

「お手を煩わせて申し訳ありません」

「グロン」

「アカボシ殿はコカトリス狙いですか、だったら俺はリザードマンを!」

「一人80ですねっ」

「リンネル間違い、それ父様の分も計算している」


 群の進行方向に門を召喚し最後尾に俺で、眷属が扇状に広がる。

 魔物の群れもこちらの気配に気づいたようだ。

 すると足を止めてこちらの出方を伺っている。中にはこちらの強力な気配を感じるものもいるのだろう。

 しかし、それはもう遅い。

 作戦すらないただの遭遇戦であるが、蹂躙させてもらうまでだ。


「殺せ」

『ハイッ!!』


 命令に促されクリスタル、アカボシ、バルが突撃を開始する。

 そして最初に魔物の群れに攻撃したのはバルだった。

 服の上から悪魔の翼を実体化させて、尻尾も出した本来の姿を晒した。


 闇属性を付与した三叉槍を豪快に振り、次々と最前列にいたリザードマンの隊を斬りつける。

 リザードマンには鎧のような強靭な鱗を持つ。

 しかし悪魔の恵まれた肉体とバルの持つ槍術の技量でリザードマンの攻撃を躱しながら、その鱗の隙間を上手に斬りつける。


 またバルは槍の効果も最大限に利用している。

 闇属性の効果を持った槍には精神支配の魔法が備わっている。

 その槍で傷を受けると、例え掠り傷であっても、脳が激痛を味わったような錯覚に陥る。

 そのため苦痛に耐え得る強い精神力を持たぬ者は、一撃で泡を吹いて気絶していく。


「さすがセカイ様の武器だな、よく出来ている。次は呪剣でいくぞ」


 リザードマンとマーマンをいくらか倒した所で、バルはゲヘナを使い呪剣と槍を入れ替える。

 槍は元々一対一の対人戦を想定して作られている。

 そのため武器を呪剣に変えるのは良い判断だ。


「悪いが呪剣、貴様の力を生涯使う気などない。例えそれで俺が死んでもな」


 どうやらバルは、使いこなせという俺の願いを真摯に受け止め、呪剣の能力に頼る気がないそうだ。

 こちらは呪剣の能力使用を否定するつもりはなかったが、呪の力を使わない方が心の在り方として正しいに決まっている。


 バルは呪剣を握る腕の筋肉がどんどん肥大していく。

 それは本来実体を持たぬ影の身体だから行える、バルだけの肉体改造の魔法だ。


「ハァアアアアア!」


 バルは迫り来るリザードマンを鱗ごと次々に一刀両断する。

 力の限り奮う姿はまるで鬼である。

 バルの回りにはその亡骸が量産されるので、回収するこちらの骨が折れる。

 ローブから触手を召喚して亡骸を回収しようとすると、傍で控えているメアに声を掛けられた。




「父様、待って」

「ん?どうしたメア」

「その死骸、私に使わせて?」


 まるで死体で遊びたい、なんて言っている風にも聞こえた。

 それはメアの顔が浮き浮きとしているからだ。

 しかしメアはアンデッドから死の姫と称えられているので、何か考えがあるのだろう。


「いいぞ、好きに使え」

「ありがと——————死の舞踏(ダンス・マカブル)


 するとメアの持つ魔本が輝き、開いているページから黒い煙が生まれる。

 そして黒い煙が死体を包み込むと、ゾンビ映画のごとく死体が動きだし、さっきまで味方であった魔物を食らいに襲い始める。


『……シャアアアアアア!』


 リザードマンのゾンビは雄叫びを上げる。

 たしか死体はさっきまで、バルに斬られてバラバラであった。

 しかし煙が晴れると、元の身体に繋がっていたのだ。


「アンデッドを作ったのか?」

「ん。一体の死骸から、二体のアンデッド作れる。今は即戦力のため、一体にしたけど」


 メアに操られるアンデッドは再び戦闘でバラバラになっても、黒い煙に包まれ復活する。

 そして次第に周辺は、生者の数より死者の数を増やしていく、その早さはまるで悪意を持った病原菌である。


「数は力、死んでも私が元通りにするよ」

「恐ろしい能力だな、だが味方だととても頼りになる」


 そのアンデッドはメアの魔力が尽きるまで、延々と殺戮を続けるのであった。




「落ちなさい!」


 次にリンネルの方へと向けると彼女は飛行種を狙っていた。

 リンネルは土と水の属性魔法を扱え、種族特性にも恵まれているため、術も多才である。

 水弾を飛行種に当てる。

 水は広範囲にシャワーのように放つので、いくら飛行種でもいい的になる。


 すると水を浴びた飛行種が、痙攣して地面へと落下した。

 あの水には毒でも混ぜていたのか、可愛い顔してやることがえげつない。

 恐らくはアルラウネの持つ植物毒だろう。

 しかし打ち上げた水は重力に従って落下もする。味方の注意をちゃんと頭に入れているのか、少々不安だ。


 他の仲間を観察すると、クリスタルには毒が効かないので無視。

 バルも悪魔の身体には毒の耐性が強くて効かないので無視。

 しかしアカボシは身体に触れる直前に水滴を蒸発させていた。

 さらにメアが舌打ちをしている。

 どうやら毒は何故かアンデッドの身体にも効くらしい。

 メアはアンデッドを無理矢理操作するが、少し動作がぎこちない。

 これではメアが可哀想なので、リンネルの下へと行って頭を小突く。


「おいこら、何してる」


 小さな頭を優しくチョップする。


「イタっ、皆が手こずる飛行種を、魔法で撃ち落としてました……」

「だったらもう少し味方の位置に注意しろ。アカボシとメアが巻き込まれているぞ」

「あっ」


 リンネルの顔がどんどん青くなる。

 どうやら飛行種の相手に熱中しすぎて仲間のことは眼中になかったらしい。


「すみません」

「俺にではなく、皆にな」

「はい……」


 しかしいつも元気なリンネルが落ち込むと、こちらの調子も狂ってしまう。

 また眷属が未だに戦闘経験が浅いということを、しっかりと意識できていなかったこちらにも責任はある。


「飛行種の相手をアカボシに任せて、今は襲ってくる地上の魔物に集中しよう」

「分かりました」


 するとリンネルは根の脚を使って地中に体を固定させ、腰の辺りから手のひら程の太さのある二本の蔓を出す。

 しかしその蔓はいつものと違って棘がある。

 またリンネルの背にある大きな花からは甘い香りが全体に広がった。


「なんだこの香りは?」

「これには誘引作用があります」


 すると香りを嗅いだ魔物たちが一斉にリンネルを目指して襲いだす。

 それをリンネルは土属性魔法で壁や穴など障害物を作り、襲い来る魔物の数を調整しながら、一体ずつを蔓と魔法で屠っていく。

 リンネル自身の身体能力は低いが、蔓の棘にも毒が塗ってあり、傷ついた魔物は彼女の餌食となってしまう。

 因みに鳥は一般的に嗅覚が発達していないので匂いの攻撃は効かない。


「割とリンネル強くね?」

「し、失礼なっ!?これでもあたしは上級ですよっ」

「そうだったな、リンネルも十分頼りになる」

「そうですっ!」


 眷属の多大な働きにより、敵の数もどんどん減っていく。

 そのため門への回収も触手だけでは追いつかないので、風属性魔法も使う。

 魔物災害のおかげでバル、メア、リンネルと新メンバーも滞りなく戦えることが分かった。

 心配は全くしていないが、旋風探知を使いクリスタルとアカボシの様子も見ることにした。

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