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ダンジョンと旅するセカイ  作者: 文月九
第二章 始動するダンジョン、増える仲間、目指すは神の座。
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30話 アルラウネのひ蜜

 俺とクリスタルは今、最下層の『始まりの部屋』にいる。

 それは夜鬼ナイトゴーントのバルセィームを召喚してから一日が経過したためである。

 バルは上手く仲間と溶け込むことができ、今もアカボシやアンデット三人組と仲良く修練をしている。

 現在眷属の食糧事情は旅立つ前に買い置きしていた食糧とクリスタルが森へ寄り道しては狩った魔物や動物を与えている。


 ダンジョンマスターの力を使えば、食糧くらいはDPがあればいくらでも生成できるが、できる限りは自給自足で賄えるようにダンジョンにも食糧を生産できる魔物が欲しい。

 またこれから戦力も必要になっていくので一日一体の上級魔物を目標に食糧確保と行きたいところだ。


 余った食糧は、街へ来た時の金策にするのもいい。

 上級アンデッドのドッペルゲンガーを召喚すれば、数多の人間に変装して上手く商いを起こせるだろう。

 ドッペルゲンガーを使った影の世界征服なんてのも考えてしまって、鼻歌交じりに召喚する魔物を吟味する。


「バルは悪魔だけあって闇属性魔法や禁術については詳しかったな」

「はい、魔物の特徴を計算して目的に沿った魔物を召喚するべきですね」

「だな。まずはダンジョンの食糧事情が先決だ。始めにここと1階層の間に新たな階層を作ろう」


 そして500DPを支払い、1平方キロメートルの広さをもつ階層を作った。

 この荒野を開拓して農業をしてもらう。

 そのためにも植物の知識に豊富な魔物を選ぶ。だったら餅は餅屋で植物種の魔物だ。


「植物種はフェルホック湿地帯で狩ったのもが多いな。冥途の館のも合わせるとトレント、魔茸ファンガス半植半人マカリーポン食肉空蔓(バジル・マンドラゴ)妖花アルラウネ人喰い化け樹(モンスターツリー)か。妖精種がいれば何かと便利だったんだけどな」


 妖精種はスプライトやドライアド、シルフなどの樹に宿る妖精や風の妖精は、植物に詳しくまた人に姿が似ていて意思の疎通が上手くいくらしい。

 まあ実際に会ってみると、妖精だから可哀想に思えてDPに変換する自信はないだろうけど。


「内アルラウネとモンスターツリーが上級へと召喚可能です。効果は薄いですが昆虫種も加えますか?」

「いやいい。それと決めた、移動も容易なアルラウネだ」

「分かりました」


 早速魔物召喚の準備に取り掛かる。

 フェルホック湿地帯で退治したアルラウネは人の面影はあるも、花冠に下半身を埋め、その見た目は醜悪であった。

 緑の体でゴブリンよりも醜い顔、綺麗なお花を想像していたら溶解液を周囲に垂らすので結構なトラウマになった。ま、花弁はそこそこ美しかったが。

 戦闘能力は風属性魔法と相性も良かったので容易に退治できたがあまりいい印象はない。


 魔物召喚はイメージが大切だ。王座から立ち上がり召喚する地面に意識を向け集中する。

 アルラウネ、アルラウネ、アルラウネ。

 ダンジョンコアに夜鬼と同じく限界値の5,000DPを送る。

 アルラウネ、アルラウネ、アルラウネ。

 農作業もできるように属性魔法は土と水を加える。

 アルラウネ、あう……らるね、アルラウネ。

 そしてどうせならお花畑みたいに綺麗で、農業の好きな奴よ来てくれ!



魔物召喚インスドア妖花アルラウネッ!!』



 茶色と青色の魔法陣からは一人の女の子が召喚される。


「お初にお目にかかります。この命、全て捧げることをここに誓います」


 そう女の子だ。それも普通に言葉を話せている。

 俺が呼んだのはアルラウネだ、決して少女を誘拐したつもりはない。


「えぇっと、君はアルラウネか?」

「そうですけど?どうかしまたかご主人さま?」

「ごしゅ、ごしゅ、ご主人さっ!?」


 いきなり少女にご主人様と言われてドキッときた……おもに罪悪感である。

 しかし驚くことに、その少女は自身をアルラウネと認めた。

 そしてよく見るとアルラウネの少女は花や草で隠れているも素っ裸であった。


「ご主人様、今更慌てていないで彼女に自己紹介をしてあげましょう」

「お前にそう呼ばれると面映おもはゆいからやめてくれ!……ごほん、俺の名前はセカイだ。」

「クリスタルです」

「君にはダンジョンで植物を育ててもらう。君の名前はそうだな、リンネルだ。よろしくなリンネル」

「よろしくお願いします。ご主人さま、クリスタルさま」


 ダンジョンで召喚される魔物はクリスタルを一目でダンジョンだと分かるらしい。

 おかげで一々説明する手間が省けて大助かりだ。


 このアルラウネのリンネル。

 見た目は十四五の少女であるが観察するとアルラウネの特徴もしっかりある。

 瞳は茶色、髪は黄緑よりな金髪で、ウェーブの掛かった少し長い髪だ。

 しかし膝の辺りからは植物の根のようなものが幾重にも繋がり人の脚をしている。

 なんとアルラウネの最も特徴とされる大きな花は背中にあった。

 背中には桃色をした一輪の花が6枚の花弁を連なり咲いている。

 また正面から見ると、それはまるで妖精の羽のように左右に花弁が広がりとても可愛らしい。

 それ以外は人の姿であり、服で隠せば町娘のような愛くるしさをもったただの少女だ。


「とりあえず今はこれを羽織っててくれ」

「はい」


 リンネルに地面から毛布を渡す。

 すまない女性物の服はクリスタルのしかないんだ。

 リンネルのは、今イメージして作るから待っていてほしいと訴える。


 何も考えずに魔物召喚をするとみな全裸で現れるらしい。

 クリスタル、バルセィーム、リンネルの三体目で確信が持てた。

 バルの包帯も恐らくバル自身で生み出したものだ。

 確かに動物や昆虫の魔物を召喚すると服は着ていないだろう。

 人型だからとつい意識してしまうが、こいつら皆魔物だ。

 しかし疑問が出来た。

 何故アルラウネは湿地帯で出会った醜い魔物ではなく、こんなに可愛らしい少女のような姿であろうか。


「リンネルの姿を見て疑問に思ったが、あれが本当にアルラウネか?」

「恐らくですが、私のダンジョンの特性は『人』。つまり私に影響されたのではないでしょうか?」

「あっ。確かにそれだとしっくりくるな」


 ダンジョンの特性によって召喚される魔物に補正が掛かる。

 例えば冥途の館の特性はアンデッドであり、アンデッドを召喚した場合は初期能力値が高かったり、必要DPが減少されるらしい。

 俺のダンジョンであるクリスタルの特性は人。

 その補正がこのような形で現れるなんて想像もしていなかった。

 となるとバルの褐色の男性のような姿もクリスタルの影響が大きいと考えられる。


「よし出来た、リンネルよ。この服でも着てくれ」

「ご主人さま自らのお手を煩わし大変申し訳ございません」

「いいよいいよ。それにそんな堅苦しいのもいいから、さっと着てくれ」


 リンネルに背中のぽっかりと開いたワンピースを渡す。

 これなら綺麗な花も傷つくことなく服を着ることができる。

 また服はすぐに仕上げるのとDPの節約のために魔法道具にはしなかった。

 それは着用型の魔法道具は常に持ち主の魔力を吸収する危険があるからだ。

 遂にリンネルは俺たちの前に立ち上がる。

 今までずっとしゃがんでたからね、ごめんよ。


「うん、似合っている。これよりリンネルのテストを始めよ……っと、その前に気になることができた」


 アルラウネとは花冠の中から上半身を出し、主に蔓や毒の粉で攻撃をしてくるのが特徴な魔物だ。

 しかしこのアルラウネの少女であるリンネルは、見ての通り根の脚を生やし直立して花は背中に咲いている。

 つまりリンネルからは超々希少とされるある素材がとれるかもしれないのだ。

 俺は王座から立ち上がり、リンネルの側による。


「えっ、あっ、どうかしましたか?」


 驚くリンネルを無視してその背中へ回ると植物の体をまじまじと観察する。

 その桃色の花は見事に咲き誇り、花の最も外側には緑のガクもある。

 何より花の中心部分には目的としていたしべもあった。


「とても綺麗な花だな」


 リンネルの耳元で素直な想いを囁く。

 リンネルも突然の主より贈られた称賛の声に顔を赤くする。


「あぅ……ありがとう、ございます」


 そして咲き誇る花弁の一枚を掴むと、先から根元までを羽毛で撫でるように優しく触る。


「ひやっ!?」

「いけなかったか?」

「いえ、少し驚いただけ、ですぅ」


 リンネルの顔は正面を向いていてよく分からない。


「あ……ふぁ……」


 しかしリンネルのその可憐な花を撫でるたびに身体が小刻みに振れ、艶のある吐息が微かに漏れるのが伝わる。

 そのまま裏の小さな花弁も余すことなく愛でる。


「そ、そこ……やめ、あっ……て、くだ……さい」

「ん? リンネルの全てを俺に捧げると、さっき誓ったではないか?」

「あんっ、そうはっ……い、いいまし、た、けど……ああんっ」


 悶えるリンネルを畳み掛けるため更に、熱くなっている花の中央である花芯を指でつまむように刺激をする。


「ごご、主人、さまぁあ、それぇ、はみぁ!た、だめぇ……も、ぅ……あっ、あたし、の…だめ、なのぉ!」


 するとリンネルは立ち上がることもできず、ついに床へと項垂れる。

 そして鼻孔には人がとろけてしまうほど甘く、ねっとりとした芳香が広がる。


「出せ! 身体を楽にするんだ!」

「ぅ、あん、んぁ! いやぁああああ!!」


 もうそろそろだと感じたので、最後の止めとばかりに指で花弁を上下に刺激しながら、舌でリンネルの「バコーーーーーンっ!!!」




っつつうううううう!! 本気だったなクリスタル!」

「当たり前です! リンネルの様子を見なさいっ!」


 クリスタルによって側頭部を思いっきり殴られ部屋の奥へと転がった。

 事が上手く運んだために調子に乗ってクリスタルを完全に怒らせてしまった。

 今までの経験上、このクリスタルに言い訳は通用しない、口論すると確実に負ける。

 ただリンネルのお花を触っていただけなのにぃ! お花を触っていただけなのにぃ!

 とてもとても大事なことなので二回言った。


「リンネル、大丈夫ですか?」

「はい、その……少し休めば平気です」


 顔を赤くして涙目になっているリンネルをクリスタルが介抱しようとする。

 待て待てクリスタルさん、肝心なことを忘れてないか?


「ク、クリスタルよ。せめてアルラウネの密だけは回収させてくれ……下さい……お願いします」


 リンネルの背中にある花のしべ、蜜線からは透明でヌルっとした液体が甘い香りを携わって流れている。

 クリスタルの軽蔑するようなジト目に耐えながら懸命に謝罪と誠意をみせる、土下座で。


「はぁ……。リンネルはどうでしょうか?」

「あたしはそのぅ、別に……大丈夫です」

「だそうです、良かったですねご主人様! リンネルにはお詫びも忘れないように」

「……はい」


 二人に許されたことで、クリスタルのダンジョンの機能を使った多角的な視野からの絶対監視の下、蜜の回収をする。

 何かミスをすれば怒るクリスタルさんが現れるので、震える手で漸くリンネルから出た蜜を掬い小瓶へと回収する。

 蜜を出す行為をクリスタルによって途中で打ち切られたものの、瓶の三分の一にまで回収することはできた。

 これだけあれば十分と言える成果だ。


 物は試しと一口指で掬って蜜を舐めてみようとする。

 その動作を見てリンネルが羞恥で顔を覆っているも、リンネルの犠牲は無駄にはしない。

 蜜を口の中へ運ぶと。


「う、美味い!だけでない、何だこの快感はっ!?」


 アルラウネの蜜には媚薬の効果がある。

 しかしリンネルの蜜からは興奮作用よりも、健全で体がゆっくりと覚醒するのを感じる。

 リンネルは上級下位のアルラウネでそもそも上級となるとそうはいない。

 それもこのように人型でとても可愛らしく可憐な少女だ。


 アルラウネの蜜の質は強さや花の成長具合や美しさに左右されると聞く。

 即ちリンネルの蜜は蜜の中の蜜、まるで伝説級だ!

 実はまだホラントの決戦での怪我は完治していなかった。

 しかし蜜を舐めたことで傷の治りも急激に早くなり、脚の包帯を外しクリスタルに怪我を見せると彼女も目を丸くした。


「クリスタル、これは凄いぞ」

「リンネルが花を散らしたのも、無駄ではなかったのですね」

「あたしの花は、まだ散らせてませんよぉぉお!」


 中級アルラウネの蜜は媚薬と知られるが、上級アルラウネの蜜には超回復の効果があるなんて召喚しない限り知れなかった。

 涙ながらに大声で喚くリンネルの頭を二人でよしよしと宥める。





 人型移動式ダンジョン"クリスタル"

 DP:87,427DP

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