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ダンジョンと旅するセカイ  作者: 文月九
第二章 始動するダンジョン、増える仲間、目指すは神の座。
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27話 つくる・つくる・つくる!?

 こねこねこね、こねこねこね。


 俺はレオニルとシィルススの二人と別れて、どのようなダンジョンを造るか考えていた。

 しかし、いくら悩んでもダンジョンの構想が思いつかない俺に、クリスタルは「アカボシの魔法道具でも作りながら考えてみては?」と提案した。

 それもいいなと賛同した俺は、次のダンジョンへの移動をクリスタルに任せて、約束していたアカボシの魔法道具を黙々と作っていた。


 こねこねこね、こねこねこね。


「ふぅ、できたっ」


 真剣な顔でこねること数時間、ようやく完成をしたのはこぶしほどの大きさである八つの玉。

 その玉の一つ一つには俺の故郷である文字が刻み込まれている。

 最後にその八つの玉を糸で繋ぎ、数珠のようにする。

 数珠ではあるが、調度アカボシの首輪になるように調節している。


「名付けて仁義八行の首輪ってとこか。能力を付加してくれクリスタル」

「かしこまりました、闇2、火2、風4の割合でよろしいのですね?」

「おう」


 嬉しいことにクリスタルとは、ダンジョン内でも触れ合うことができるようになった。

 おかげで魔法道具の製作にも思った以上に手伝ってもらい、大変捗ることができた。

 首輪に能力が付加され、特殊魔法道具ギフトアイテムとして完成する。


「ありがとう、アカボシを呼んでくれ」


 クリスタルに呼ばれアカボシが最奥の間へと来る。


「アカボシ、約束していた魔法道具だ。付けていいか?」

「グンッ」


 いいそうだ。アカボシは首輪を付けやすいように頭を下げる。


「どうも。効果はお前の持つ火と闇属性魔法の強化に加え、俺の風属性魔法も込められている」

「グン?」

「風は火を助け炎を生む。つまりより正確で強力な火属性魔法を使えるってわけだ。アカボシが俺の風を上手く扱えることを信じているぞ」

「…………グルルルゥゥウォン!!」


 アカボシに仁義八行の首輪をつけることができた。

 獄炎の魔大狼(ヘルハウンド)に進化を果たし、その体毛は暗く艶のある闇へ、その爪と瞳は朱い炎の色へとそれぞれ深みを増した。

 犬が狼へ、仏は地獄に。首輪の意味も不揃いであるが、アカボシの雄々しさの前では些末な事だ。

 アカボシは早速魔法道具の試験運用をしに、第一階層へと戻っていった。



「それではセカイ様、これからダンジョンを運営するにあたって、私の方からもこの"クリスタル"について述べさせて頂くことがございます」

「そうだな。自分でいうのもあれだが、俺たちの境遇は変だ」

「はい、セカイ様の思い付きで生まれた、この人型移動式ダンジョン。それが先の勝利で、ついに軌道に乗ることが出来ました」


 ダンジョンマスターであるのに、外の世界に積極的に活動し、ダンジョンへ誘い込むのではなく自らの手でDPを集める。

 最後には冥途の館のダンジョンマスターであるホラントとの闘い。

 それは凄まじい死闘の果てに漸く掴みとれた勝利だ。

 クリスタルも相槌を打ち、これまであった出来事を振り返る。


「今までが、そもそもダンジョンマスターとしてどうかしてたんだ」


 外を見て回りたいという欲求を満たすために、ダンジョンをクリスタルとして人型にした。

 そのため初めのダンジョンマスターとしての能力は低く、ダンジョンとしての機能も多くは失った。

 それは弱い、狩りばかり、運営しない!の悪い三拍子の揃ったみっともないダンジョンとマスターであった。

 それではダンジョンを宝の持ち腐れにした愚者か泥棒と違いない。

 しかし、それも昨日までの話だ。


「うふふ、そうですね。私もダンジョンとしてどうかしていました」


 何だかクリスタルの機嫌が良さそうだ。

 たまにだが機嫌のいい時のクリスタルは固い口調を止め、自然に話してかけてくれる。


「そこで、セカイ様に選択肢があります」


 一つの手を腰の後ろへ、もう片方の手で指を二本立て見せる。


「選択肢ぃ? 今更なんだそれは?」

「はい、一つはこのままの通り、おかしなダンジョンとダンジョンマスターであり続けること」

「なんだよその言い方は」

「そしてもう一つは————セカイ様自身の手で私を殺し、新たな人生を自由に生きること、です」

「っ!?」


 おいおいおいおい、突然何ふざけたこと抜かしてんだよクリスタルは?

 それもこんな平気な顔して言えるなんて、冥途の館のダンジョンコアを吸収しておかしくなったのか!?

 クリスタルを殺す?そんなことは絶対にあり得ない。

 既にそれは頭の中では一瞬で答えが出ている選択肢だ。ただ少し、クリスタルの態度と思惑が分からなくて、なんと返事をしようか戸惑ってしまっていた。


「お前が死ぬときは、俺も死ぬときだ。馬鹿げた質問をした理由を教えてくれ」


 こんな質問をしたクリスタルはいったい何を思い、どういった感情をしているのだろうか。

 俺にとって彼女は、ダンジョンで、相棒で、もう一つの命だ。

 しかし彼女の心までは、誰のモノではなく彼女自身のモノである。


 また、この最奥の間という白い空間で存在するのは、俺とクリスタルと宙に浮くダンジョンコアだけ。

 それは幻想的な風景ではあるが、反面終幕した世界に自分達だけが取り残されたと錯覚してしまうほど、孤独と不安の恐怖も見せてくる。

 もしも恐怖に圧倒されれば、クリスタルに抱き着いて一人は寂しい助けてと思わず伝えるだろう。

 それだけこの空間と、クリスタルの放つ空気が異彩を含み、次の言葉を待ちわびてしまう。

 それと決めた、先ずはこの空間をリフォームすることに。

 クリスタルは一拍の間を置き、瞳を閉じて何かを思考し、真剣な表情で語りかけてくる


「はい、それにはまず私やダンジョンのことについて知っていただきます」

「聞かせてくれ」


 ダンジョンのこと……思わぬ所で日頃疑問に思っていたことを聞くことができた。


「私はご存知の通り、体は人間ですが本質はダンジョンです」

「それに間違いはないのだろう?」

「しかし、私も一つの生命体であり、貴方・・の眷属でもあります」


 クリスタルが生命体。

 それには今更疑問もない。これほど喜怒哀楽で自我を持ち、超常現象な魔法もある異世界なんだ。

 今までの常識が覆ることなどいくらでもあって、彼女が眷属であったことも薄々感じてはいた。


「それは俺も確信はなかったが、そうでないかと思ってはいた」

「私はいうならば人の姿にダンジョンを組み込まれた新種の魔物です」

「よ、よくそんなことできたな。それでダンジョンとは?」

「ダンジョンは、この世界を管理するための機能の一つだそうです」

「管理? もしかして神でもいるのか?」

「……います」


 神はいたのか。それも世界を管理するほどの者だ。

 いや、魔物の最上の階級には魔神級というのが存在している。

 クリスタルに確認を取ると、やはり魔神級の奴がその神であるらしい。


「いったいその理由は私にも分かりませんが、神の意志で人為的にダンジョンを生み出し、この世界を管理しているそうです」

「人為的? それはつまり俺たちのようなダンジョンのことか?」

「ご理解が早いですね、そうです。私たちのようなダンジョンコアを持ち、DPによりダンジョンを運営するのが、この際人為ダンジョンとしましょう。そして一つの魔石が次第にダンジョンコアのように成長し、その持ち主の巣がダンジョンのように発展したのが天然ダンジョンということです」


 つまり、俺やホラントのようなDPを使い、ダンジョンを成長させていくのが人為ダンジョン。

 これから向かう目的のダンジョンが天然ダンジョンということか。

 前者が神の意図したダンジョン、後者が自然に発生したダンジョン。


「それでクリスタルを殺すことと何が関係あるんだ?」

「実は私を創造するのに最初の能力では圧倒的に足りませんでした。それなのに私はこうして誕生した。つまり神の力を借り、私は創られました」


 最初のDPや機能損失では足りなかったのか……。

 神がクリスタルを作ってくれた。いったい神は何をしたいんだ?


「そして神がダンジョンマスターであるセカイ様を操作することがあります」

「っ!?もしかしてそれが、ダンジョンマスターの衝動か?」

「そうです。そのためセカイ様はこれからも、非ダンジョンであり続ける限り、その欲望に苛まれる可能性が高いと思われます」

「……それはあくまで可能性だろ?」


 常々人間の欲求とダンジョンマスターの欲求の間で葛藤をしていたが、それにもちゃんと理由があったのだと知れただけでも有意義な情報だ。

 俺がおかしくなったのも全部神のせい、これから失敗しても全部神のせい、俺は何も悪くない。

 そう楽観的に捉えるだけでも、心の持ち様は軽くなる。

 無論、全ての責任を神とやらに押し付けるつもりは毛頭もないが。

 神はわざわざ俺のためにクリスタルまで容易してくれた。神は案外良い奴なのかもしれない。


「しかし何度もその心は侵されたではありませんか? ただでさえ記憶を失い、不安定な状態では、神の付け入る隙はいくらでもあります。そしてそれを解消する手段が————」

「クリスタルを殺すことか?」

「私を殺し、このダンジョンコアを奪い取れば、DPも失いダンジョンの機能は崩壊します。しかしその瞬間セカイ様はダンジョンを持たない、ただ一人のダンジョンマスターとして生きていくことができます」

「そんなことができるのか?」

「はい、私の持つ高度な演算能力と、二つのダンジョンコアと十万DPさえあれば可能だと算出しました。そうなればダンジョンを持たないために神の介入も許しません」


 調度ギリギリではないか。

 それはまだダンジョン運営もまともにしていない状態だからこそ、まだ引き返せるとクリスタルは考えたのだろう。

 そして彼女がそう言った理由は——。


「私はダンジョンマスターとしてではない、残された人の部分が持つ、セカイ様の願いを叶えたいのです」


 異世界を冒険したい。

 確かにこれは紛れもない人である部分の持つ願いだ。

 ダンジョン運営と旅は矛盾しているようなものだ。

 きっとクリスタルは自分ダンジョンの存在が、いつかその願いの妨げになると感じたのだろう。

 クリスタルの労る想いに万感こもごも到る。


「俺は異世界を冒険したいと思っている。ただそれ以上に、クリスタルと一緒に幸せになりたいとも願っているよ」

「……っ」


 クリスタルを失ってまで叶えたい願いなどあるはずがない。

 それに人は満足を覚えない強欲な生物だ。だから道は険しく長い方がいい。 

 たった今思いついた、別の解決策をクリスタルへと述べる。


「それにもう一つ完璧の解決法がある。俺たちがその神と同じ位階である魔神級になることだ!」

「…………はい」


 神の介入を防ぐためには、同じ神になればいい。

 そっと小さな声音であるがクリスタルはそれに同意してくれた。

 それもそうだ最上級の位階である魔神級を目指すのだ。途方もない困難の前に道半ば倒れる方があり得るだろう。

 しかし魔神級の持つダンジョンこそが世界一のダンジョンと捉えられる。

 そして俺は思い切ってダンジョンコアへ触れるとDPを操作する。

 使え、使え、調度十万DPを切るように。クリスタルの提案を断ち切るように。


我、願う(ディ・ザイン)


 すると真っ白な空間である最奥の間は、新たに生まれた階層として機能し始める。

 それはホラントの神殿を真似た作りではあるが、床や壁に白く、石柱はなく、天井にはシャンデリアのような装飾電灯もあるため非常に明るい。

 また俺達の場所だけが盛り上がり、3段ほどの段差ができあがる。

 段差の上の階には豪華に装飾された玉座もあり、その玉座の背にはダンジョンコアも埋め込まれ、二人でこの部屋を見下ろす。

 この部屋は高さ10m、縦横50mと階層として広くはないが様々なギミックが用意している。


「ここはこのダンジョンの最下層で、俺たちの始まりとする場所だ」

「もう後戻りはできませんよ?」

「問題ない、早速だが俺が神となるための最強の魔物を召喚しようじゃないか!」

「……分かりました。このはてもない旅、全身全霊を捧げてお伴します」






 人型移動式ダンジョン"クリスタル"

 DP:99,889DP

 概要:102,889-(アカボシの魔法道具1500+最奥の間の改装1500)

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