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故に存在する世界  作者: 鳴指 十流
3/13

ブロック

 夜の七時を少し過ぎた時刻。住宅街のある一軒家に、元気な声が響いた。

「パパ、おかえりー」

「ただいま、ユウタ。ほら、お土産持ってきたぞ」

「わーい、何だろう」

「あら、あなた、おかえりなさい。早かったわね」

「ああ、会議が思ったより早く終わってな。久々に早く帰れたから、ユウタにお土産を持ってきたんだ」

「何かしら、これ?」

 と、帰宅した夫を迎えた妻は、夫の持ってきたお土産をみて首を傾げた。

 それは、大きな袋に入っていて、その袋にはとあるおもちゃ屋のロゴがプリントされていた。

 袋からおもちゃを出した子供が、歓声を上げた。

「わー、ブロックだー」

 それには、今子供に人気のキャラクターがデザインされていた。

「あら、これ、ユウタが欲しがってたおもちゃでしょ。高かったんじゃない?」

「いや、いいんだ。こうして家族三人で、顔を合わせるのは久しぶりだからな。ユウタも寂しがってたらしいし、喜んでもらえてよかったよ」

「パパ、ありがとー」

 可愛らしい笑顔でいった子供に、夫は微笑んだ。

「どういたしまして。大事に使えよ」

「うん」

 子供はそういうと、ブロックを持って廊下をかけていった。行く先は子供部屋。彼は、いつもそこで遊んでいる。

 それを見届けた後、夫は玄関で靴を脱ぎ、リビングへと向かった。リビングからは、先ほどから料理のいい香りがしてくる。

 妻は、リビングに向かう途中、子供部屋を覗いた。子供はきゃっきゃと笑いながら、ブロックを転がして遊んでいた。

「おっ、今日はシチューか。美味そうだな」

 リビングから夫の声が聞こえてきたので、妻は子供部屋を後にし、夫のため、料理を温め直した。



 夜の八時を回った頃。夫は夕食を食べ終え、ソファーでテレビをみていた。妻は台所で皿を洗っている。平穏な時間だった。リビングには、テレビに出演しているタレントの声と、妻が皿を洗う音だけが響いている。子供は、さっきからずっと、子供部屋にいて、ブロックで遊んでいるらしい。笑い声が聞こえてきた。

「ユウタ、喜んでもらえて、良かったな」

 突然、夫がいった。妻が、洗い物をしながら、答える。

「ええ、よっぽど、欲しかったんでしょうね。今まで、ずっと買ってやらなかったから、あなたからあのブロックを貰えたときは、飛び上がる程嬉しかったんじゃないかしら」

「ああ、そうだな。ここんとこ帰りが遅くてユウタとも、顔を合わせる時間がなかったけど、今日早く帰ることができて良かったよ」

「ええ、私も。今日は本当に良かった。ユウタのあんな笑顔みることができたの、久しぶりだったから」

「これからはできるだけ早く帰るようにするよ」

「ええ」

 と、妻が最後の皿を洗い終えたとき、突如家全体に、子供の悲鳴が響き渡った。

「うわああああああああ!」

 夫と妻は、それを聞きつけ、すぐに子供部屋に向かった。扉を開けると、子供が泡を吹いて倒れていた。みれば、子供が遊んでいたブロックが、親父顔をした赤ん坊に変わっていた。

「パパとママ、ぼく、ユウタだよ」

 気色悪い声で、親父顔の赤ん坊はいった。そのとき、妻は言葉にならない悲鳴を上げ、気絶した。夫は、虚ろな眼差しで、ただそれをみつめていただけだったが、しばらくすると我に返り、親父顔の赤ん坊をボコボコに殴った。





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