ぐにゃぐにゃな猫
「おーい、トマンボー。トマンボー」
誰かの叫ぶ声がする。トマンボって、この猫の名前だろうか。変わった名前だ。
「トマンボー。トマンボー。トマンボー。トマン……。もういいや。行こうよ、タマ」
声が止んだ。タマと呼ばれる猫の鳴く声がする。どちらかといえば猫というよりライオンだった。
「最近は動物を見た目で決めるやつがいて困る」
私は独り言を言った。トマンボと呼ばれるこの猫は、ぐにゃぐにゃな体をより一層ぐにゃぐにゃにさせて、鳴いた。
「ペペロンチーノ。ペペロンチーノ」
変わった鳴き声だ。私も鳴いてみようと思った。どうやるんだろう。喉に雷を落とす感じで……。こうかな。よし、いくぞ。
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ」
「ペペロンチーノ。ペペロンチーノ」
私の鳴き声とトマンボの鳴き声が重なる。
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ」
「ペペロンチーノ。ペペロンチーノ」
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ」
「ペペロンチーノ。ペペロンチーノ」
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ」
「ペペロンチーノ。ペペロンチーノ。ペペ……。もういいや。行こうよ、トマンボ」
声が止んだ。
私の体は水となり、いつしかその水も全て蒸発した。