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故に存在する世界  作者: 鳴指 十流
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星と少年

「君には意志というものがないのかね。え?」

 ついさっき、道端で突然少年に話しかけた老人はいった。

「そんなこといったって、意志っていったって」

 俯きながら少年はいった。少年の顔は影になっていて、よくみえない。

「君は何でそう俯いているんだ。もっと顔を上げて」

 老人は少年の頭を掴んで、顔を上に上げた。グキッという音がしたが、少年は痛がりもせず、むしろ笑顔になったのだった。

「うん、ありがとう。おじいさん」

「君はいい笑顔をしているんだから、胸を張ってな。頑張れよ」

「うん。この笑顔は大切にとっておく」

 少年は手をふりながら、かけていった。老人も手をふり返した。もう会うこともないのに、「じゃあ。また明日」と少年はいった。老人は叫ぶ。

「明日は来ないぞー」

「そうだっけー」

 少年は笑顔でかけていき、老人は、少年の姿が見えなくなるまで手をふり続けた。

 やがて、少年の姿は空に輝く星たちと、見分けがつかなくなった。老人は、手をふるのをやめ、ふぅと吐息をついた。あの少年の人生が幸せでありますように、そう願った。

 夜空を見上げる。美しい星が輝くこの空を人々は、「地上」という。「地上」に輝く星たちは「都市」という場所に多くある。老人が昔、少年だった頃に教わったことだった。

「さて、今日はもう寝よう」

 老人は呟き、ベッドにもぐり込んだ。暖かい綿が老人の冷えた体を包んでくれる。

「おやすみ」

 老人は闇の中に浮かぶ小さな灯りを消した。星たちもやがて、消えていった。

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