前話の余談
前話のくだらない余談です。
余談。
頼親を寝殿へ案内し終えた貞光は、真っ直ぐ自室へ向かった。頼光邸に住みこみで仕えている四天王は一つの別棟に、各自、部屋が与えられているのだ。
「貞光ー、明日の用意のことなんだけどさー」
貞光が自室の襖障子を開けたとき、隣室から季武が顔を出した。貞光は足を止め、そちらに顔を向ける。
「おやつなら持っていっても構わないそうですよ」
「まじ? つーか、お前、そんなこと殿に聞いたのか」
季武が呆れ気味に言ったとき、一番左の部屋が勢いよく開いた。
「さ、貞光!」
転がるように出てきたのは、金時である。顔や服に墨がべったりとつき、斑点模様をつくっていた。
金時は貞光の姿を見つけると、ささっとその背後へまわった。
何です、と貞光が聞くまでもなかった。金時に続いて、綱が飛び出してきたからである。
「金時っ! 逃げるとはいい度胸だな!」
やはり綱の顔や服にも黒い斑点が飛び散っており、その手には墨を含んだ筆が握られている。
「貞光! 大人しくそいつを渡せ!」
「そんなこと言われましても」
貞光はちらりと、自分の背後に隠れている金時を見やる。両肩をがっしりとつかまれているため動けないのだ。
季武が綱と金時を交互に観察して、愉快そうな笑みを浮かべる。
「聞くまでもねぇ気がするけど、何があったんだ?」
「金時が、明日の準備って何すればいいか分からないと言うから、俺がわざわざ見にいってやってたんだ。それなのに、俺の言うことを全然聞こうとしない」
「も、持ち物の準備だけでいいのに、綱が髪の毛を塗ろうとするから……!」
金時が貞光の背後から、そっと顔を出して反論する。
「俺たちは鬼退治に行くんだぞ? そんな金髪じゃ鬼と間違うじゃないか!」
「お前、目まで塗ろうとしただろ!」
「当然だ!」
言うや否や、綱は素早く貞光の背後にまわりこんだ。
「墨で目が塗れるかよっ!」
「こら待て!」
逃げ出した金時を綱が追いかける。二人は庭へ飛び出し、言い争いながら対の屋のほうへ姿を消した。
「あいつら、鬼退治の前に体力使いはたすんじゃね?」
「道中は、静かなほうがいいですけどね」
貞光は冷めた目で、二人が駆けていったほうを眺める。ややあって、季武へ視線を移した。
「で、あなたは何の用です?」
「え? ああ、着替えの巫女装束は何着いるかなって話」
「巫女装束はいらないと思いますよ」
貞光は淡々と返し、さっさと自室に戻った。頭痛がひどいときは寝るにかぎる。
ここまで読んでくださったかた、ありがとうございます! 進展がなくてすみません・・・! 近々、続き投稿いたします。鬼同丸&茨木+酒呑です。
といいながら、21日はとても大事な日なので、そのことに関する話を投稿する予定・・・。十二月最大のイベントですよね。




