どーでもいいどんぐりこまの話
ごめんなさい。ほんとうにごめんなさい。
なんじゃこりゃと思われたかたは全力で逃げてください。
頼光邸、渡殿。
貞光が一人で歩いている。
頼光(以下、光)「貞光ー!」頼光が楽しそうに走ってくる。
貞光(以下、貞)「……どうかなさいましたか」冷めた目無表情。
光「どんぐりこまが作れたんだ!」見せる。
貞「……」
光「ちゃんと回るんだぞ?」嬉しそう。
貞「よかったですね」冷めた目無表情。
光「うん!
綱に見せたいんだけど、どこにいるか知ってるか?」
貞「綱なら今、市へ出かけておりますが」
光「……そうか」
貞「帰ってくるまで、お待ちになっては?」
光「う~ん、出来たてを見せたほうがいい気がするんだよな。回らなくなるかもしれないし」
貞
「では、綱を呼び戻して参ります」
光「いや、それは俺が行く。というわけで、俺がやるはずだった事務仕事(荘園の管理のあれこれ、従者のあれこれ)の方をよろしくな!」☆
貞「……頼光様」
光「あ、どんぐりこま、回ってるとこ見るか?」
貞「いってらっしゃいませ」超冷めた目、無表情。
頼光が出ていってから、しばらくして……
頼光邸、母屋。貞光が一人で、事務仕事。綱が飛び込んでくる。
綱「頼光様ーッ、市で面白いものを――なんだ、貞光か」
貞「私がここにいるのは、あなたのせいですよ」
綱「はぁ?」
貞「頼光様とは、お会いになりませんでしたか?」
綱「頼光様と? 会ってないぞ?」
貞「……どんぐりこまが出来たとかなんとかで、あなたに見せるとお出かけになったんですがね」
綱!?「本当か!? しまった、俺が路地裏で京童とケンカなどしていたせいで、お気づきにならなかったんだ……!」
貞「別にたいした用ではないですし、そう慌てる必要はないのでは?」
綱「た、たいしたことないだと……!? どんぐりこまを見せるということがかッ!?」
貞(それ以外に何があるんだ)
「たいしたことないですよね」冷めた目、無表情。
綱「あほか貴様!!」
貞「……」
綱「頼光様が一生懸命お作りになったんだぞ!? 早く見て、その喜びを共にしてさしあげたいじゃないか! それに時間がたったら回らなくなるかもしれないし」
貞「……どんぐりこまは鮮度が命とは初めて知りました」冷めた目、無表情。
綱「はぁ?」
貞「いえ何でも」
綱「とにかく、早く見てさしあげねば!」出て行こうとする。
「あ、貞光」振り返る。
貞「何です?」
綱「市で見つけた面白いもの見るか? 蛇の脱皮した――」懐から出そうとする。
貞「いってらっしゃいませ」超冷めた目、無表情。
朱雀大路。頼親(頼光の異母弟)が馬に乗って歩いている。隣に徒歩で為頼と氏元(頼親の家来)。
為頼(以下、為)「頼親様、京の別荘の手入れするため(に京に行く)とおっしゃっていたのに、結局、頼光様の家に行くんですね……」
頼親(以下、親)「ついでに大和のウリを届けてやるんだよ。兄貴が送れってうるせーから」馬の鞍にウリの入ったかごを積んでいる。
為「それなら、使者を出して送らせればいいのに……なんだかんだで、頼親様は頼光様の家に行きたがるよな」氏元に耳打ち。
氏元(以下、氏)「何かのついでってことにでもしないと行けないからだろ。何か用事がなくても素直に遊びに行けばいいのにな」ひそひそ。
親怒「お前ら、馬が疲れてきたから、ウリ全部持て」
為・氏!?
そのとき、前方から綱が馬に乗って走ってくる。
為「あ、頼親様、あれって渡辺綱殿じゃないですか?」ウリから話題を逸らすように。
親「あー……」前方を見る。
綱「あれ、頼親様。どうして京に?」馬を止める。
親「兄貴に会いに来たわけじゃねぇぞ。ちょっと用事のついでに、ウリを届けてやろうと思ってな。断じて兄貴に会いに来たわけじゃねぇぞ」
綱(頼光様に会いにいらしたんだな。普通ならここで俺がウリを受け取って、持ち帰るべきだが、それでは頼親様の気持ちを台無しにしてしまう……)真剣に考える。
親?
綱「……頼親様、本日、頼光様は偉業を成し遂げられたのです。俺はその成功を共に喜ぶために、今から頼光様をお探しせねばなりません」
親??「はぁ……?」
綱「頼光様が戻られるまで、屋敷でお待ちください。頼光様も、頼親様とゆっくりお話ししたいでしょうし……。では、俺は急ぎますので」行こうとする。
親「ちょ、ちょっと待てよ。偉業って何だよ?」
綱「……どんぐりこまですよ」にっこり。
親「……」
為「……」
氏「……」綱が見えなくなる。
親「お前ら、意味分かったか?」
氏「ええっと、つまり、頼光様が『どんぐりこま』という偉業を成し遂げられた、と」
親「どんぐりこまって何だよ。まさか、どんぐりこまが作れたとか、そんなんじゃねぇだろ?」
為「…………あッ!」
頼・氏!?
為「も、もしかして、『どんぐりこま』って隠語なんじゃ……何か、他人にバレたらマズイような……」
氏「他人にバレたらマズイ……まさか謀反――」
親!!「氏元ッ、めったなこと口にすんじゃねぇ! 綱は『偉業』を『成し遂げた』っつったんだぞ!? 謀反が成功してたら、こんなに平穏なわけねぇだろ!」
為「でも、綱殿は『その成功を共に喜ぶために頼光様を探す』とも申していましたよ。頼光様は、その成功が分かるまで、どこかにお隠れになっていたのでは……」
氏「謀反ではなくとも、政界の誰かを陥れた、とか」
親「……………………。それは、あるかもしれねぇ」源高明を讒言した父親のことを思い出してる。(安和の変)
為「『どんぐりこま』……政界を『回す』ですかね」
親「………………………」
不穏な空気……
数刻後。
頼光邸、母屋。
貞(大方、終わった)←事務仕事。頼親が思いつめたような表情で入ってくる。貞光に気づく。
親!「なんだ、お前、いたのか」
貞「頼親様、お久しぶりです。せっかくお越しくださったのに、頼光様は今――」
親「いや、兄貴がいねぇのは知ってる」貞光に向かい合って座る。
「文でも書いて置いとこうと思ってたんだが……お前がいるなら、お前に伝えてもらえばいいか」ぼそぼそ
貞「頼光様なら、じきにお戻りになりますよ。たいしたものもございませんが、ゆっくりしていかれては……」
親「別に兄貴に会いたいわけじゃねぇよ。ウリを届けに来たんだ。もう少ししたら、為頼と氏元が運んでくる」
貞(何故、馬に乗せてこなかったんだ)
「それは誠にありがとう存じます」
親「それでな……」
貞「はい」
親「どんぐりこまかなんか知らねぇが、兄貴に、あんまり危ないことすんなよって言っといてくれ」言いにくそうに。
貞「……」
親「いや、その……父上もそういうことで出世して、それで俺たちが今の地位でいられてるわけだから、あんまり言えねぇけどな」ぼそぼそ
貞「マジですか」
親「ああ。でも、そういうことは初めは成功したっつっても、のちのち……」
貞「回らなくなる?」
親「え? ああ、そうか、そうだな。回らなくなるだけじゃなくて、大怪我するかもしれねぇ」
貞「マジですか」
親「だから、あんまり危ないことすんなって、兄貴に言っとけ」立ち上がる。
貞「承知いたしました」冷めた目、無表情。
頼光邸近く。
為「……重い」ウリの入ったかごを氏元と二人がかりで持ってる。
氏「がんばれ、もうちょっとだぞ」
季武(いつも通り巫女装束)が屋敷から出てくる。
為「あ――」
季武(以下、季)「頼親様の家来さんたちじゃねぇか」為頼と氏元に手を振る。
氏「季武殿、丁度良かった。申し訳ないが、ウリを運ぶのを手伝って――」
為「こら、氏元! 女の子に何頼んでんだ!」小声で。
氏「……季武殿は男だぞ?」
為「俺はそんなの信じてない!」
氏「……」呆れ。
季?「これ、大和のウリ? ウチの殿に?」かごを持つ。
氏「そうなんだ。頼親様が先に行ってるはずだけど」
季「まじ? 気づかなかったわ。母屋に直行なさったのかな?」三人でウリを運びながら。
氏「……。それがな、少し気になることがあって……そのことで頼親様も頼光様と内密にお話ししたかったんだと思うんだが……」ごにょごにょ。
季「気になること?」
為「こら、氏元! 女の子に政治の話なんて――」
季「政治?」
氏「為頼、もうお前は黙ってろ。
ああ、こんなところで話せることじゃないんだけどな――」
その後、頼光邸の下人にウリを預けて、客室へ。季武に、綱から聞いた『どんぐりこま』について話す。
氏「……ということなんだ。一体、頼光様は何をなさっておいでなのか。あまり危ないことはなさらないほうが良いと俺も、思うんだが……」
季「……」ぽかーん。
為「ほら、氏元、女の子に政治の話しても分かんないんだって」ひそひそ。
季「あんたら、何か勘違いしてないか?」笑いをこらえながら。
氏!「俺はしてない! ちゃんと男だと思ってる!」
為!?「俺のほうがしてない! ちゃんと女だと思ってる!」
季「そこじゃねぇよ。どんぐりこまだ、どんぐりこま」こらえきれなくなって、笑い出す。
為・氏「……?」
季ww「どんぐりこまに隠れた意味なんかねぇよw」
氏「……ということは、そのまま、頼光様がどんぐりこまをお作りになったという意味で?」
季w「そーそー」
為・氏「……………………」
季www「そんな勘違いするやつ、普通いねぇよwww」
為・氏「……………」顔を見合わせる。立ち上がって部屋を飛び出す。
「よ、頼親様ぁあああ!」
頼光邸、客間。
親「……」なんやかんやで頼光を待つことにした。
為・氏「頼親様ッ!」飛び込んでくる。
親!?「べ、別に兄貴が心配だからここにいるわけじゃねぇからな!?」
氏「誰もそんなこと言ってませんよ! それより、大変なんです!」
親!?「どんぐりこまのせいで、兄貴が危険なのか!?」
為「……いや、あの、それが……」
かくかくしかじか。
親「……………………………………………」
氏「というわけで、そのまんま頼光様がどんぐりこまをお作りになったと……」
親「為頼、氏元。ウリ回収して帰るぞ」
為・氏「はい」
東市。
頼光と綱、子どもたちとどんぐりこま作ったり、まわしたり。
綱「頼光様、お上手になりましたね」どんぐりこまを作って、子どもに渡す頼光を見て。
光「慣れれば簡単だな」嬉しそう。庶民的な水干。
子ども1「おにーちゃん、俺もー」
子ども2「うまくまわらないよ~」頼光が貴人だと気づいてない。
光「よしよし、今作ってやるからな。そうそう、そうやって回せば……」
綱(一般庶民のガキの分際で頼光様に馴れ馴れしく……頼光様が楽しそうにしていらっしゃるから仕方ないが……いや、しかし……)頼光と遊ぶ子どもが羨ましい。
光「綱」
綱!「はい」
光「お前もいるか?」どんぐりこま差し出す。冗談のつもり。
綱!!!(ら、頼光様が御手でお作りになったどんぐりこま! いいのか、いただいてしまっても。いや、いいだろう、子どもだってもらってるんだから)
「はい、ありがたく頂戴――」
貞「頼光様!」馬で走ってくる。
光・綱「貞光?」
貞「頼光様、ご無事ですか?」馬から降り、膝をつく。
光?「うん?」
貞「早く、それをお離しください」頼光の手のどんぐりこまを見て。
「おそらく、じきに暴走するでしょう」
光!?「ど、どんぐりこまがかッ!」
綱「貞光、お前、頭でもうったのか……?」
貞「頼親様がおっしゃっていました」
光「よ、頼親が!?」綱「頼親様が!?」
貞「はい。満仲様(頼光・頼親の父)もどんぐりこまで出世なさったそうなので、あまり強くは止められないともおっしゃっていましたが」
光「父上は一体何をやってるんだ」
綱「しかし、頼親様が御冗談でそのようなことをおっしゃるとはとても……」
光「……だよな」
貞「危ないことはするなと非常に心配していらっしゃいました」冷めた目、無表情。
光「……」
綱「……」
子ども1「どーしたの? どんぐりこま、あぶないの?」
光!(そうだった、子どもに渡したんだ)
「ああ、ごめんな。どんぐりこまにはとんでもない鬼が取り憑いていることが今わかった。また今度、別のおもちゃ作ってやるから……」子どもからどんぐりこまを回収。
綱「危ないから、早くこの場を去れ。他のガキで、どんぐりこまを作ろうとしているやつがいたら止めるんだぞ」子ども、逃げるように去る。
光「さて……。
とりあえず、切り刻むか」太刀抜く。
貞「頼光様、危険ですからお離れください。綱、頼光様を頼みます」
綱「おう」
綱が太刀を構えて頼光を背に立ち、貞光がどんぐりこまと対峙する。
貞(久々に血が騒ぐ)
一つ一つ気合を入れて突き刺す。
光・綱 はらはら
道行く庶民たち ( ゜д゜)ポカーン
数刻後、頼光邸。
光「それにしても、何事もなく済んでよかったな」頼光、綱、貞光の三人で馬をおりたとこ。
綱「……申し訳ございません。俺はそんなに危険なものの作り方を頼光様にお教えしていたなんて……」
光「いやいや、どんぐりこまが暴走するもんだなんて誰も知らねぇよ。頼親は一体どこでそんな情報を得たんだろうな?」
綱「大和で噂にでもなっていたんでしょうか……?」
季「殿~、お帰りっす♪」屋敷から出てくる。
貞「季武、頼親様は?」
季「お帰りになられたよ。それで、すっげぇ面白い話があるんだけど――」かくかくしかじか。
光・綱・貞「…………………………………」
季w「つーわけで、頼親様たちはどんぐりこまを謀反かなんかの隠語だと思ってらしたみたいでw」
光「で、頼親はウリも持って帰ってしまった、と」
季「なんか相当怒ってらっしゃいましたよ。そろそろ兄弟の縁きりたいとかぼやきながら、たぶん、京にある別荘のほうにお帰りに――」
光「よ、頼親ぁあああぁっ!」再び馬に乗って出ていく。
綱「貞光ッ、貴様のせいで俺は頼光様のどんぐりこまをもらい損ねたじゃないか!」
貞
季?「どういうこと?」
綱怒「貞光がどんぐりこまは危険だって……」
季「貞光、もしかしてお前……」
貞「……」
季「まさか頼親様の言葉をそのまま信じたんじゃ……」
貞「どんぐりこまは時間がたつと暴走するんですよね?」冷めた目、無表情。
季「嘘だろ?」
余談。
京の頼親の別荘。暗くなりかけ。
親「……」縁側で黙々と酒を呑む。
氏「うわ……超機嫌悪い」柱の影から見てる。
為「今近づいたら殺されるな……」同じく柱の影から。
光「頼親ぁああぁあああっ!」築垣の破れ目から馬で突進。ぎりぎりで飛び下りて、頼親に跳びつく。
親!?!? 盛大にむせる。「あ、兄貴ッ」
光「ごめんなッ、お前がせっかく心配してくれたのに、ほんとにどんぐりこま作ってただけで!」
親「べ、別に心配してたとかで怒ってんじゃねぇよッ! いい歳してどんぐりこまなんか作ってんじゃねぇって――とにかく、離れろッ!」引きはがす。
光「兄弟の縁きるつもりなのか……?」しょぼーん。
親;「い、いやそれは……」
光「……」どよーん。
親;;「………き、きらねぇよ」小声。
光!「そっか!」にっこり。
親;(わざわざ、それ聞きに来たのか……? あんなに急いで……)罪悪感+ちょっと嬉しい。
「……あ、兄貴…………どうせなら酒でも――」
光「あ、俺、ウリ取りに来たんだった」
親「……」
光w「いや~、俺に家に来てほしいからって持って帰るなよ。あ、ここで一緒に食べようか?」
親怒「帰れ」
為!「ウリ、俺も食べたいです!」柱から出てくる。
氏「こら、為頼!」止めようとする。
光「別にいいじゃねぇか。みんなでわいわいやろう」
親怒怒「おい、兄貴」
綱「頼光様ッ!」追ってきた。
光「綱、いいところにきた! 今、みんなでウリを食べようって話になってたんだ」
親怒怒怒怒
綱!(貞光も季武も金時もいない! 頼光様の家来としてお役に立てるチャンス!)
為「俺、ウリ切ってくる~♪」
氏「じゃあ酒も、もっといるよな……」二人、取りにいく。
親怒「兄貴いいかげんに――」
光「仲直りな♪」杯に酒をついで、頼親に渡す。
親「………………………」目を逸らして、受け取る。
めでたし、めでたし。
改めてごめんなさい。
ご覧のとおり、小説でもない非常にどーでもいい話です。ちょっと休憩がてらに・・・近々、本編投稿いたしますので・・・!(でも、たまにこういうのやりた――)
これが本編に関わってくることは一切ありません。




