仔犬拾いました。 捌
完結です。
雪巴が全て切り終えたのは
夜が明け、朝日が昇るころだった。
近くの池で、手を洗っている彼の首には
きちんと紐に通した『叢雲』が光っている。
「……ちゃんと取り返したよ。
父様、兄様」
誰に言うでもなく呟くと
暖かい風が、彼の頬を撫でる。
それに確かな安心感を感じて、ゆるりと微笑んだ。
そして、不意に思い出す。
ーーあれ、そういえば……
「ねぇ、おじ……雪巴さん」
「なんだ」
「なんで、ぼくのこと手伝ってくれたの?
今日、会ったばっかりなのに」
「…………」
「ねぇ?」
何か理由があるのだろう。
そう思って聞いただけなのだが
雪巴の微妙な様子に、彼は少し戸惑った。
「後で教えてやる」
そう言って、先に歩き出す雪巴の後を
パタパタと彼が追う。
なんとも微笑ましい光景だが
彼らの服は不釣り合いなほど、血塗れだった。
森を出た瞬間、雪巴は唐突に口を開いた。
「知り合いに、」
「え?」
「……知り合いに、犬好きな巫女が居るんだよ」
「う、うん」
「そいつが、『犬妖怪がウロついてたから捕まえてこい』……と」
「え、えぇ?それって、つまり……」
「……」
「その巫女さんに、頭が上がらない……ってこと?」
「……そこに注目するな。
まぁ、あれだ。捨てられた犬猫を見ると拾いたくなる衝動を人間は持ってんだよ」
「ぼく捨てられてないよ!?
ちょっと路頭に迷ってただけで……」
「同じようなモンだろ」
彼は、呆然と雪巴を見上げる。
ーーまさか、そんな適当な理由で助けられてたとは……
思わず、苦笑が漏れる。
でも。
巫女さんの気まぐれに助けられたのは本当で。
これから、行く場所が無いのも事実だ。
彼は、にっこりと笑って
言った。
「じゃあ、ぼくを拾ってよ。雪巴さんっ」
妖怪。
存在するのか、しないのか。
それすらわからない不確かなもの。
だけど彼らは、だからこそ、彼らは
今もきっと、どこかでーーーー
なんか後半適当じゃね?と思ったみなさん。
その通りです。
今後の課題ですね……
今までありがとうございました!