仔犬拾いました。 質
雪巴が刀を振るうたびに
コエゾイタチの
巨大な体が切り裂かれていく。
そして、その間彼はーーーー
「もー!気持ち悪いぃ!」
倒れ伏しているコエゾイタチの
荷物を荒らしていた。
目的は勿論、『叢雲』の奪還。
だが
手にまとわりつく血の感触が。
生暖かい身体の感覚が。
どうしようもなく気持ち悪かった。
「弱そうな奴を探せ。
多分そいつが持ってる」
「死体に強さも弱さもないよ!」
「人聞きの悪いこと言うな。
まだ一匹も殺してねぇよ」
「余計嫌だぁ!」
若干涙目になりつつも
必死に『叢雲』を探す。
雪巴の他人事のような態度にイラつきはするが
彼は全身の神経を、指先に集中させた。
一匹、また一匹。
どんどん増えていく死体(?)の山。
ーーこれ、見つからなかったらどうしよう。
嫌な考えを振り払うように、彼は次の荷物へ手を入れる。
すると
こつん、と何か固いものに指が触れた。
ーーあ。
恐る恐る取り出してみると、それは薄紫の石だった。
薄紫の石。
これこそ、彼が探していたもの。
親兄弟が彼に託した、犬妖怪の秘宝ーー
「叢雲、見つけたぁ!」
彼の明るい声が、暗い森に響き渡った。
そろそろエンディングが見えてきました。