仔犬拾いました。 詠(よん)
いよいよ、彼の過去が明らかになります。
「……叢雲?」
「うん。ぼくの一族に伝わる秘宝なんだ。
叢雲は、気配を消す力があるから
一族で一番弱い人が、継承するんだって。
それで今度は、ぼくが受け継ぐことになって……」
「……つまり、」
「……ぼくが、一番弱いってことだよ。
色々とこう……辛いものがあるけどね……」
あはは、と乾いた笑いを浮かべた彼を
「……まぁ、あれだ。お前まだ成長期だから。あんまり、その……気にするな」
そう慰めた雪巴の表情は、憐れみに満ちていた。
彼は、ひとつひとつ言葉を選んで話した。
3日前、継承が行われる予定だったこと。
それが、他の妖怪にバレてしまったこと。
そして
その妖怪に、彼の一族が襲われたことを。
「……ぼくは、兄様が逃がしてくれたから助かったけど……皆は、」
「……殺された、のか……」
「……うん」
「誰にだ?」
「わかんない……イタチだったと思うけど……」
「イタチ……『コエゾイタチ』だな」
「‼……知ってるの?」
がばっと顔をあげた、彼の目が雪巴を捉える。
雪巴は、なんの躊躇いもなくはっきりと言い放った。
「あいつら、最近派手に暴れまわってるからな。……コエゾイタチは貪欲だ。そんな秘宝があるなら……力ずくで、奪おうとする。
その結果が、これなんだろうが」
「…………」
黙り込んだ彼に、雪巴は問う。
「仇討ちと、叢雲の奪取……
お前の目的は、どっちだ」
「ぼ、くは……」
彼は少しだけ戸惑ったが
すぐに覚悟を決めて
雪巴の、目を見て答えた。
「どっちも!
ぼくは、どっちもやってみせる!」
意思のこもった彼の言葉に
雪巴は、口角をあげて笑ってみせる。
ここから彼等の、逆襲劇がはじまった。
長くなりそうだったので、一旦切りました。
会話文が多くなってしまった……