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仔犬拾いました。 壱
騒がしい街中を、必死に駆け抜ける。
普段は柔らかい草の上を歩いている彼も、
今度ばかりは、
焼け付くようなアスファルトの上を
走らなければならなかった。
裂けた足裏の血が、道路に赤いシミを
つくっていく。
それでも彼は、痛みをこらえて走った。
ー父様…母様ぁ…!
心中で両親の名を叫べば、
自然と涙があふれてくる。
父や母、兄姉達の悲鳴が頭をよぎった。
「うぇ、」
涙を拭い、
ろくに前も見ず飛び出した先は交差点。
信号はー赤。
「…あ…」
気づいたときにはすでに遅く、
見上げるほど大きなトラックが、
彼の目前に迫っていた。
もしも彼が、一般人にも見えていたなら
辺り一帯に、悲鳴がこだましたことだろう。
彼自身も死を覚悟したのだが、
…突如現れた人影が、彼を救った。
うずくまる彼を抱き上げるのと同時に地を蹴って
跳躍し、歩道橋の上へ。
「え…えぇえ?だっ…誰…⁉」
慌てて彼が顔をあげると、そこには黒い髪と紅い目の青年が呆れ顔で立っていた。
初投稿です!これからも頑張ります。
読んでくださってありがとうございました!