あとがき・「夢」の始まりに、「言葉」を隠し、物語を育む。
「瀧の竜」と「温泉の白狐」は、実際に存在する場所の言い伝えをモチーフにしています。
その土地には、父の実家があり、子供のころは夏になると、毎年のように、そこへ行っていました。
海の無い県の山奥の町。
河原には、球状の石灰質団塊 があって、それを割れば、運がよければ、そこには眠る貝の化石たちを、見ることができました。まれではありますが、サメの歯を見つけることもあったようです。
水の囁く言葉をこっそりと聞いた、海が無い山奥の中にあっても感じる、大いなる海の気配。
その化石の眠っているの川の、少し上流にある瀧で行われていた夏のお祭り。
そこで出会う、もう顔も名前も忘れてしまった一夜限りの友達。
現世か幻世か、それは子供の頃の思い出。
あの友達たちが、そこにいたという記憶だけは思い出せる、「彼らの名」を呼んでいた事も覚えている。
でも、今はもう思い出せないその顔、それは口にできない忘れてしまった「名前」
それは、本当のことなのか、それとも、記憶の作り出したものなのか。
もう記憶の中にしか存在しない、幻の夏祭り……
子供は大人と異なる世界に生きているのかもしれない。その子供の頃、今は忘れてしまった、この世のものではないものが住む世界を感じた事。
心の奥にある、無意識の記憶からそれぞれの夏の思い出を、どこかで見たような既視感、映像を、お届けできれば、と。
そういうのを、表現できていたら良いなと思っています。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。
ネタバレがあるので注意。
★蛇足1★
-泡の夢-魚の夢-縁の夢-現の夢-の章には、ちょっとした仕掛けがあります。
「」や()の行を除いた頭文字のみを読んでいくと……その話のタイトルになります。
重要でもなんでもない単なる言葉遊びです。
★蛇足2★
泳魚という名前の読み方は、不明です。
現世の人間で、彼の名を正しく発音できる者は、いません。なんかこういう感じ(漢字)の名前であるとぼんやりと認識するといった感じです。
作中、彼の名を言葉にできたのは、白狐のハクアと、-現の夢-を見ていた飛鳥だけです。