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1.~野良猫と縁日のひよことオリオン座~

その日は、仕掛けを作って

すずめを捕まえようとしてた。


家からお米の粒を持ち出した。


それを、仕掛けの下に置いて、

物陰にかくれてじっとしていた。


ーーー短い木の棒にひもを結び、それをざると地面にかませて、ざるの下にお米を置く。すずめが米粒に誘われて、

ざるの下に入るのを

物陰に隠れてじっと待つ。

ざるの下に入ったらひもを引く。ーーー


何度か失敗して、

また、仕掛けを準備しなおして

じっとかくれて見ていると、


すずめはいないのに、

小鳥の声が聞こえてくる。

遠くの方から聞こえていた

その鳴き声が、どんどん近付いてきて


もう、

耳のすぐそばで聞こえてる。

だけど、

目の前の仕掛けには、何もいない。


不思議に思っていると、

知らない女の人が

後ろに立っていた。


その人が抱えたカゴの中には

3羽のひよこがいた。

ピヨピヨピヨと元気よく鳴いていた。


顔の近くまでカゴを差し出すようにして

それを見せてくれた。


黄色とみどり、そしてピンクの色鮮やかな

3羽のひよこ。


先週の秋祭りの夜、

縁日で見かけたあの可愛いひよこ達だった。


電球の明かりに照されて

眩しそうに体と体を寄せあっていた。


あの時は、買うのをあきらめた。


ほしいならあげるよ。


と言われて。

嬉しくて、そのまま家に連れて帰った。


両親は、驚き、あきれ、

どうしたものかと、考えていた。


段ボール箱にいれて、水と餌を与えた。


夜は冷えないように、

箱の上からバスタオルをかけたりして、

そのまま家族の一員になった。


その夜から、匂いがした。


ひよこの匂いと温もりと

ピヨピヨピヨと聞こえる声と全部が

なんだか、たまらなかった。


ある日、学校から帰ると

ひよこがいなくなっていた。


お父さんが、金網と、木材で、

手作りの鶏小屋を作って、

そこに引っ越ししていた。


だんだん大きくなるから、


段ボール箱ってわけにもいかないだろう。


と、作ってくれた。


少し広くなって

自由に動き回れるようになった。


元気よく動き回ってるひよこ達を

みんなで可愛がった。


このまま、大きくなったら、鶏になる。

そしたら朝から大きな声で鳴くんだよ。

近所迷惑にならないか?


と心配しながら家族で夕ごはんを食べた。


その3羽のひよこがかわいくて、

学校から帰るのが楽しみで仕方なかった。



ある日の夕方、

いつものように、鶏小屋の前で、

皆でひよこを見ていたら

野良猫が凄い勢いで、

少しの隙間から入ってきて、

黄色のぴーちゃんをくわえて

行ってしまった。


あっという間の出来事で、ほんとに、


あーっ‼️


と、言ったまま、

大人も子供も、何もできなかった。


その後のことはあまり覚えてない。


それからの私は、

野良猫を見かけると敵視して、

必ず、思いっきり睨み付けた。


自分の目がどうにかなるんじゃないか。

というほど

力一杯、睨み付けてやった。


しばらくして、ピンクのぴーちゃんも

みどりのぴーちゃんもやられた。


賑やかだった家の中がシーンとしてしまい、寂しくなった。


ストーブを使う季節になっていた。


ある日、お風呂屋さんの帰りに

夜空を見上げると、


そこに、いた。


あの、かわいかった3羽のひよこが

きれいにならんで、


ここにいるよ。


と、私にその姿を見せてくれていた。


それからは、お風呂屋さんの帰りに

夜空をみあげるのが好きになった。


夜空を見上げれば

ぴーちゃんたちが

美しく煌めいて、


ここにいるよ。


と教えてくれる。


子供の私は、本気でそう思っていた。


大きくなって、学校の理科の授業で、

何億光年も前から

あの場所にあるんだと習っても、


違うよ、

あの星はうちの3羽のぴーちゃんなのに・・

と、思った。


あの三つ星があの場所に現れたのも、

ぴーちゃんたちが

野良猫にやられたときと

ちょうど、同じだったから

間違いないと本気で思ってた。


でも、

オリオン座は何億光年も前からそこにある。

と聞いて、

ぴーちゃんたちじゃないのか。とも思う。

それでも、あの頃の私は夜空を見上げては、


やっぱり、ぴーちゃんたち。

色だって、

ピンクと黄色とみどり色に輝いて

どう見たって、間違いない。

あの少し、列からずれてるのが、

みどりのぴーちゃん。


エサを持っていった時に

いつも決まって出遅れてたっけ。



と、考えていた。


今でも、そう信じている。



オリオン座の三つ星を見上げるとき、

あの日々の遠い記憶と

ぴーちゃんたちの元気な声と

その匂いが

何処かから、静かに響いてくる。

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