表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

あなたを傷つけた男に、私が代わりに終わりを告げてあげましょう

作者: かも ねぎ
掲載日:2026/06/10


「お兄様」


 窓辺に置かれた椅子に、彼女そっくりの顔をした兄セシルが腰掛けていた。カーテンは半分ほどしか開けられておらず、彼の手元の本はほとんど影に埋もれていた。


 セシルはゆっくりと、双子の妹であるセレナの方へ顔を向ける。


「いいよ」


 妹は兄の手から本を取り上げると、その膝に座った。


 衣擦れの音。

 本をテーブルに置いた、ほんの小さな音。


「何を言おうとしたのか、分かってるの?」

「僕がわからないと思ってる?」

「いいえ」


 セシルがセレナの髪をそっと指先ですくいあげ、その銀色の毛先にキスを落とす。


「復讐をしましょう」


 指先から、するりと髪が落ちていった。

 セレナが、セシルの頬を両手でそっと挟む。


 青い瞳と、同じ色の青の瞳。

 交わって、絡まり合う。


「いいよ。きれいなやつがいい」

「そうね」


 互いに顔を寄せた。

 口元に短くキスを落とす。


 そうして、双子は、小さく笑った。




 ――エミリアはきっと、こんな男好きじゃなかった。


「アルフレッド様。お初にお目にかかります」


 ティーテーブルの向かいに座る男アルフレッドは、見目だけはいい男だった。


 丁寧に撫でつけられたダークブラウンの髪。深い藍の瞳。鼻筋の通った美しい顔。

 男はゆっくりと顔を上げた。目元を柔らかく細め、口角をわずかに上げる。


「やぁ、セレナ嬢。

 君と婚約が結べて、僕は嬉しいよ」


 セレナはにっこりと笑んだ。


「大変光栄です。

 以前のご婚約者様……エミリア嬢は残念でしたね」

 

 ティーテーブルに置かれた男の指先がわずかに震える。


「エミリアとは……知り合いなの?」

「えぇ、友人なのです」


 アルフレッドの目が細まった。


「へぇ。彼女、素敵な女性だったけど、少し……体を壊してしまったようだね。

 領地に戻るというので、婚約はなくなってしまったんだ。

 残念だよ。……本当に」


 ――あなたが、エミリアを壊したのよ。


「そうだったのですね……。

 友人……とはいえ、詳細はあまり教えてもらえていなくて」

「君は聞いてないんだ……。そうか」


 アルフレッドは少しだけ眉を下げたまま、淡く笑う。寂しそうに見える、その表情。

 

 だが、口元が、歪んでいる。


 ――あなた、無垢な女が、お好きでしょう?


「はい……何も」


 セレナも、寂しそうに瞳を伏せた。ゆったりと編んだ銀の髪は、室内の白い光を鈍く返し、その白い頬を柔らかく見せていた。


 顔を上げると、視線が交わった。


「……セレナ嬢、よろしくね」

「はい。こちらこそ」


 整った顔。洗練された衣服と立ち振る舞い。均整の取れた体躯。自信のある、微笑み。

 それから

 ――穢らわしい、視線。


 エミリアは清廉な少女だった。

 ――まるで、今の私みたいな。


 ――ねぇ、あなた。

 無垢な女が、お好きでしょう?


 さぁ、こちらへいらっしゃい。




 男の手がうなじに触れる。


 セレナがゆっくりと振り返ると、アルフレッドは微笑んでいた。セレナは触れられた自分のうなじに指先で触れ、頬を染める。


「花びらが、ついていたよ」


 彼が指先でつまむように持っているのは、淡い桃色の花びら。乙女の唇のようなそれを、ひらりと返してみせる。


 男の邸宅にある図書室。ずらりと並ぶ、背の高い木製の書棚に詰め込まれた蔵書。

 黴と、インクの苦い匂い。

 鈍い自然光は、部屋の全てを照らしはしない。

 足元には影が蹲っていた。


 セレナがアルフレッドに向き合うと、彼は一歩寄り、腕を伸ばした。彼女の背には書棚。閉じ込めるための、肩横に置かれた手。

 セレナはうつむき、自分の唇にそっと指先で触れた。


「……アルフレッド様……」

「セレナはかわいいね。頬が真っ赤じゃないか」


 指を顎に添えられ、顔を上げさせられる。

 アルフレッドはその瞳を覗き込んだ。

 

 セレナの青い瞳。

 深い海のようなそれ。

 

 映り込んだのは――金の髪の女。


 男は目を見開く。


 ハッと息を呑んだ。


 手を離し、後ろを振り返る。


「……アルフレッド様?」


 背後にあるのは書棚だけ。

 使用人は入り口に控え、テーブルや椅子も、もっと向こうにある。


 彼は、もう一度セレナの瞳を見た。

 そこに映っているのは、深い色味の髪をした自分。


 ――気のせいか。

 

 男はセレナを離れて、歩き出す。

 

 毛足の長い藍色のペルシャ絨毯。ブーツのつま先に、わずかに何かが触れる。


 視線を落とした。

 繊細な紋様のその上に、千切られたような一枚の花びら。


 彼自身が持ち込んだのは、先ほどの一枚だけのはず。アルフレッドは、それを拾い上げた。

 

 だが、その先に――また一枚。


 視線でたどる。


 先ほどまではなかったはずの花びら。

 使用人の手によって丁寧に管理されているはずのこの場所に、幾枚もの花びらがある。


 絨毯の上。

 

 花びら。

 

 花びら。

 

 花と同じ色の誰かのつま先。

 

 眉を寄せ、視線を上げる。


 金の髪の女。

 白い指の隙間から何枚もの千切られた花びらを落とし、そして


 ――撒いた。


「え」


 背後から肩に手を置かれる。

 肩を震わせ、勢いよく振り返った。


「アルフレッド様?」


 不思議そうな顔のセレナ。

 アルフレッドはもう一度金の髪の女がいた場所を見る。


 ――いない。


 視線を滑らせ、先ほど花びらが落ちていたあたりへ。


 ――無い。


 顔を上げた。


「……なんでも……ないよ」

「……そうですか」


 セレナは、淡く、微笑んだ。




 庭園。

 背丈ほどにも高い薔薇の木が迷路のように道を作っている。濃い、絡みつくような香りが、漂っていた。

 

 セレナとアルフレッドは並んでそれを歩く。彼の手は、しっかりとセレナの細い腰を支えていた。


 赤い薔薇。

 それは血のように沈んで見えた。


 アルフレッドは自慢げに花の由来や名前を語った。流暢に紡ぎ出される言葉。記憶にも残らない、花の名前。


 彼はふいに、セレナを抱き寄せた。

 腰に撫でるように触れ、華奢な背に手を添える。


「……アルフレッド様!」


 セレナは、頬を染めた。

 男は、その顎に指先を添える。


 瞳を覗き込み、顔を寄せる。

 

「君の唇は、この薔薇より赤いね。

 あまりにも魅力的で、まるで僕を誘っているみたいだ。食べてしまいたい」

「……そんな……」


 セレナは瞳をわずかに伏せた。


 呼吸が触れる。

 熱が頬をなぞった。


 その時――

 空気が震えた。


「きゃっ!」


 強い風が吹いた。


 セレナのつばの広い帽子が飛ばされ、彼女の結っていた髪がほどける。


 アルフレッドも思わず片手で顔を庇った。


 葉が大きく揺らされ、赤い薔薇の花びらが幾枚も舞う。


 やがて、風は通り過ぎていった。


 風が止み、音が止む。

 

 セレナは、小さく笑った。


「……ふふ。驚きましたね」


 アルフレッドも小さく息を吐き、微笑もうとした。


 だが、彼の手。

 何かが触れている。


 顔を庇っていた手に、視線を落とした。


 絡みついていたのは――細い金の髪。


 彼は目を見開き、急いで手を払った。


 ゆっくりと芝の上に落ちる、それ。


 彼はもう一度自分の手のひらを見、セレナを見た。彼女は不思議そうにアルフレッドを見つめている。


「……なんでもないよ……」

「そうですか」


 彼女は、笑んだ。


 セレナは彼から離れ、ゆっくりと歩き出した。


 はらりと、彼女から何かが落ちる。


 一枚の花びら。


 アルフレッドは眉を寄せ、息を呑んだ。


 ここには、赤い薔薇しかない。

 だが、彼女から落ちたのは、桃色の千切られたような花びら。


「アルフレッド様?」


 男は、顔を上げる。


 セレナの向こう。


 今は二人しかいないはずの庭園。


 だが、そこに立つのは――金の髪の女。

 女は、桃色の花の花束を手にしていた。


 目を剥き、一歩下がる。


 その時、足に何かが絡みつく。


 足元。

 一房の金の髪。


「なんだこれは!」


 足を取られ、尻をつく。


「アルフレッド様!」


 セレナが悲鳴のような声を上げ、駆け寄った。彼のそばにしゃがみ、アルフレッドの手を取る。


「突然どうされたのです。

 ……お怪我はありませんか?」


 アルフレッドは彼女の顔を見た。そして、向こうにいた女をもう一度探す。


 あるのは、薔薇の木だけ。

 女などいない。


 視線を落とす。

 金の髪も、ここにはない。


 彼は眉を寄せ、口を手で覆った。

 震えた息を吐く。


「なんでも……ないんだ」

「……そうですか」

 

 セレナは優しく、笑んだ。




 夜半。


 アルフレッドは、目を覚ました。

 ベッドから起き上がり、ベッドサイドに置かれていた水差しに手を伸ばす。


 衣擦れの音。

 だが、金属が擦れるようなかすかな音が混ざる。


 天蓋のカーテンを開けて、向こうを覗いた。


 カシャン――と、小さな音。


 ゆっくりと、何度も、その音が部屋に落ちる。


 アルフレッドはベッドを降り、スリッパに足を入れた。

 ゆっくりと、部屋に視線を巡らす。

 この部屋の窓には厚手のカーテンが引かれているが、一箇所だけ、開いていた。


 奥の縦長の窓。

 月光が青白く差し込んでいる。


 女が――佇んでいた。


 アルフレッドは呼吸を止めた。


 足は縫い留められてしまったかのように、動かない。


 長い髪の女。


 女は、ゆっくりと振り返った。


 片側の耳横の髪だけ、短い。


「なくしてしまったの」


 アルフレッドは口を手で覆う。


「髪」


 女のもう片側の髪が、はらりと落ちる。


「あなたのせい」


 アルフレッドは右手に違和感を感じ、視線を下げた。


 自分の手が持っていたのは

 ――銀の鋏。


 彼は悲鳴を上げ、それを投げた。


 投げられたそれは書物机の椅子に当たり、高い音を立てる。

 

 アルフレッドは踵を返し、天蓋の奥へと急いで戻った。


 


 女は、それを見送った。

 

 月光の中で、その姿がわずかに揺らぐ。


 金の髪はほどけるように消え、そこに残ったのは青い瞳の青年だった。


「セレナは、褒めてくれるかな」


 吐息だけの呟き。

 震える男には届かない声。


 セシルは満足そうに目を細めた。

 



 アルフレッドの私室。

 革張りのソファに、アルフレッドとセレナは並んで座っていた。


 彼がカップをテーブルに置く。


「セレナ」

「……はい」


 人一人分空けて座っていたその距離をアルフレッドは詰め、セレナの手からカップを取り上げた。それをテーブルに置くと、彼女に向き合う。


「君は可愛いよね。何も知らなそう。

 そこが、とてもそそられる」

「え?」


 アルフレッドはセレナの肩を押し、ソファに押し倒すとその手首を掴んで縫い付けた。


「楽しいことを教えてあげる。

 どうせ、結婚するのだし。ね?」

「……アルフレッド様?」

 

 掴んだ手首が震えている。

 彼を見上げてくる青い瞳に沈む怯え。


 ゾクリ――と、腑が震える。


 顔を寄せた。

 セレナは瞳を伏せ、顔を背けようとする。


「……やめてください!

 嫌!」

「どうして嫌がるんだろう。

 とても楽しくて気持ちいいのに」


 笑いながら、手のひらでセレナの銀の髪を掴み、押さえつける。


 途端に

 ずるり――手が滑った。


 驚いて自分の手のひらを見る。

 

 簡単に抜け落ち、手のひらに残ったのは――金の髪。


 セレナを見下ろす。


 肩が震えた。


 そこにあったのは、

 何も映さない、琥珀色の瞳。


 呼吸が止まる。

 喉が張り付いたように、うまく息が吸えない。


 アルフレッドはセレナを押さえつけていた手を離し、起き上がった。


 少女も、ゆっくりと起き上がる。


 無表情の琥珀の瞳は、まっすぐにアルフレッドをとらえたまま。


 長い金の髪が、はらり、はらりと落ちる。

 琥珀の瞳から、一粒、涙が落ちた。


「あなたのことも、こわしてあげる」


 少女がアルフレッドに向かって手を伸ばした。


 男は、悲鳴を上げた。


「――アルフレッド様?」


 ハッとして、もう一度少女を見る。


 銀髪に青い瞳の少女、セレナはアルフレッドから少し離れたところに座り、カップを両手で持っていた。

 何事もなかったかのように、静かに座り、不思議そうにこちらを見ている。


「……今のは?」

「……今の……とは?」


 彼は、小さく首を振った。


「……すまない。今日は帰ってくれ……」


 震えた声。


「……体調が優れないのですか?」

「帰ってくれ」

「え? えぇ」


 セレナはカップをテーブルに置くと、立ち上がる。軽く頭を下げ、扉へ向かった。


 彼女の口角が、わずかに上がる。




 夜。


 アルフレッドは息苦しく感じ、目を覚ました。

 眼前に、男の顔。


 自分の体に馬乗りになったその男は、丁寧に撫でつけられたダークブラウンの髪に深い藍の瞳。

 自分そっくりの顔をしていた。

 

 息を呑む。


 アルフレッドは声を上げようとしたが、喉からは何も音がでない。


 代わりに、女の声が聞こえる。


 “やめて! 私に触らないで!”


 眼前の男は、笑った。


「どうして、君は言うことを聞かないの?」


 アルフレッドは顔色を変えた。

 動かそうともしていないのに、腕は勝手に顔をかばう。


 “誰か! このけだもの!”


「ひどいこと言うね。大きな声出すのもやめてほしいな」


 眼前の男はクツクツと笑った。

 愉悦に歪んだ顔。

 彼は腕を振り上げ、拳を振り下ろした。


 鈍い音が響く。


 頬を強かに打たれ、口の中に鉄の味が広がった。


「あんまり言うこと聞かないから、なんか、冷めちゃったなぁ……。

 ――あぁ、そうだ」

「やめろ……」


 喉から絞り出した声は、あまりにも震えていた。


 眼前の男の手には、銀の鋏。


「……やめてくれ」


 刃が、鈍く光を返している。


 刃が開く。

 男はそれを無造作にアルフレッドの顔に向けた。


「やめろ!」


 耳横で――音が響く。


 男は声を立てて笑った。

 その手の上にのっているのは、一房の金の髪。

 それを、投げ捨てる。


 そうしてもう一度、今度は反対側の耳横へ。


 ジョキリ――鈍い音が耳に届く。


 男は手のひらの上にのせた金の髪をひと撫ですると、それも捨てた。


 アルフレッドはうまく呼吸が吸えず、胸元を強く押さえる。


「ねぇ」


 女の声。

 

 眼前にいたのは――男ではなかった。


 髪の短い、女。

 金の髪に琥珀の瞳。


「こわかった?」

「……お前」

「わたし、こわかった」


 女が顔を寄せる。

 冷たい呼吸。

 それは頬を撫で、唇を這う。


「なくしちゃったの」


 唇が首筋に触れた。


「だから、ちょーだい」

 

 女の指が、髪に触れる。

 

「ちがう」


 ゆっくりと、唇が滑り、それは喉元に触れた。


 女は時間をかけて顔を離す。


「決めた」


 琥珀の瞳。

 アルフレッドは視線を外せずに、まっすぐに見つめた。

 

 呼吸が浅い。

 耳鳴りが煩いほどに鳴っている。


 女は、のどほどけを軽く押した。


「これにする」


 笑った。

 楽しそうに。

 

 彼女は、鋏を持った手を振り上げた。


 そして、まっすぐに、振り下ろす。


 悲鳴。




 セシルが部屋の扉を開けると、セレナは窓辺の籐椅子に腰掛けていた。


「お兄様」

「壊れたよ。

 もう僕の顔も見えてなかった」


 ゆったりと歩いてセシルがセレナに近づくと、セレナは立ち上がって彼を迎えた。両腕を広げ、彼の身体を抱く。

 

「あいつ、僕に興奮してた」


 セシルがくつくつと笑うと、セレナはその頬に手を添えて、口角を上げた。


「最後までやってあげても良かった。

 欲しそうだったからね」

「お兄様」

「ちょっと品が無かったね」 

「そうよ」


 セシルがセレナの腰に手を添え、彼女を抱き返す。


「……ご褒美は?」


 セレナは彼の顔を引き寄せると、唇にキスをした。互いに互いの熱を滑り込ませ、深く絡ませる。


「ふふ」


 どちらかが、笑う。

 もう片方も、つられるようにして、笑った。


 

 

 葉擦れの音。

 木漏れ日の下を、エミリアは花のついた枝を一本持ち、ゆっくりと歩いた。空を見上げる。真っ青な空は、果てがないほどに澄んでいた。


 彼女は立ち止まる。

 うつむき、花を胸に抱いた。


 セレナとセシルは後ろから静かに彼女に近づく。セレナはエミリアをそっと抱きしめた。

 セシルは少し離れて二人を見守る。


「セレナ……」

「エミリア」

「セレナ、私も早くあなたのところへいきたいわ……」

 

 セレナは首を振る。


「だめよ。まだ、あなたはここにいるの。

 愛しているわ。

 あいつも壊した。大丈夫。もう怖いものは何もないの」


 セレナが彼女を離れる。

 エミリアはうつむいたまま、その場にかがみ込んだ。


 セレナとセシルは手を繋ぐと、短くキスを交わし、エミリアに背を向けた。


 エミリアの視線の先。


 小さな灰色の墓石。

 エミリアはそこに花のついたシャクナゲの枝を置いた。


 彼女はしばらく墓石を見つめる。

 風が、そっと短い金の髪を揺らした。


 やがて、エミリアは、少しだけ微笑んだ。 


「でも、もう少し……頑張ってみることにするわ。

 見守っていてね」


 彼女は立ち上がり、踵を返した。


 



 墓石には

 

 Serena

 Cecil


 そう、彫られていた。


 シャクナゲの花が、かすかに揺れている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ