帰郷
掲載日:2026/04/21
帰れる場所があることを。少女は思い出した。
「いつでも帰っておいで。」
そう言ってくれたのは、いつだっただろうか。
この街に帰ってくるのは、あの日以来だ。
東京からは朝に家を出ても、着く頃には終電になる。
東京とは違う、静かな街だったことを懐かしみながら、少し早足で高校時代によく寄っていた自販機でお茶を買う。
あの頃からポケットにはたくさんのレシートが入っている、変わったのは1人分になった金額と地名だけ。
輝く世界に憧れ、単身でこの街を飛び出した。
さよならも言わずに。
あの頃の憧れも豊かさもあのコンクリートに吸い込まれてしまったのだろうか。
あの頃は大きく見えた家が、今は少しこじんまりとして見えた。扉を開ける。
「ただいま。」




