【最終回】これからも…ずっと…
目を開けた時、
部屋はもう、真っ暗だった。
カーテンの向こうに、街灯の光が滲んでいる。
(……あ)
一瞬、どこにいるのか分からなくて。
それから、ゆっくり思い出す。
私は今、
湊くんの腕の中にいる。
背中に回された腕。
胸に触れている、規則正しい鼓動。
動こうとしたら、
その腕が、ほんの少しだけ強くなった。
湊「……起きた?」
低い声。
眠っていると思っていたのに、起きてた。
私「……うん」
声が、少しだけかすれる。
その瞬間、
一気に色々なことを思い出してしまって。
湊くんの家に来たこと。
一緒に過ごした時間。
言葉も、間も、全部。
胸の奥が、熱くなる。
恥ずかしくなって、
私は思わず視線を逸らした。
湊「……あれ?」
少し、からかうような声。
湊「照れてる?」
私「……っ」
言い返せなくて、
そのまま湊くんの胸に顔を埋める。
すると、
小さく笑う気配がした。
湊「嘘」
声が、急に優しくなる。
湊「今日は……ありがとう」
それだけで、
胸がいっぱいになった。
湊「体、しんどくない?」
心配するみたいに、
私の背中を、ゆっくり撫でる。
その仕草が、
さっきまでより、ずっと大切に思えて。
(……あ)
分かった。
私は今、
ちゃんと「ここ」にいる。
湊くんの隣に。
湊くんの腕の中に。
私「……大丈夫」
小さく答えると、
湊くんは、ほっとしたみたいに息を吐いた。
湊「よかった」
それから、少しだけ間があって。
湊「……これからもさ」
囁くみたいな声。
湊「一緒にいような」
その言葉が、
胸の奥に、静かに沈んでいく。
一緒に、いよう。
今日だけじゃなくて。
明日も、その先も。
私「……うん」
短く返事をして、
ぎゅっと、湊くんの服を掴んだ。
離れない、って決めた。
怖くなる日があっても。
不安になる夜があっても。
そのたびに、
ここに戻ってくればいい。
湊くんの声。
湊くんの体温。
この、安心できる場所に。
(……幸せって)
慣れるのは、きっとまだ怖い。
でも。
目を覚ました時に、
一番近くに湊くんがいるなら。
その怖さごと、
抱えて生きていける気がした。
私は、もう一度目を閉じて、
その胸に、静かに身を預けた。
——これからも、ずっと。
この人と一緒に。




