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名前のない放課後  作者: えあな


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初めて知る感情

夜。


部屋の灯りを落として、

ベッドに横になっているのに、

全然眠くならない。


スマホの画面はもう暗いのに、

目を閉じると、昼間の光景が浮かぶ。


校門の前。

風に揺れる長い髪。

湊くんの袖を掴む、あの人の手。


(……やめよう)


何度も思うのに、

頭は言うことを聞かない。


柏木くんは言ってくれた。


「今はちゃんと由奈ちゃんのこと好きだと思うよ」


分かってる。

信じたい。

信じてる、つもり。


それなのに——


胸の奥が、ざわざわして落ち着かない。


布団の中で、ぎゅっと膝を抱える。


(私、こんなに気にするタイプだったっけ……)


今まで、

誰かをこんなふうに思ったこと、なかった。


比べたり、


(私なんか全然かなわないくらい綺麗なひとだったな…)


不安になったり、


(並んでる姿が…凄くお似合いだった…)


置いていかれる想像をしたり。


それ全部、

湊くんを好きになってから、初めて知った感情だ。



スマホが、震えた。


心臓が跳ねる。


画面を見る前から、

誰からの通知か、分かってしまう。


|今日はごめん|

|ちゃんと話せてなくて|


短い文章。

でも、湊くんらしい。


……やっぱり、優しい。


|ううん|

|大丈夫だよ|


打ってから、

画面を見つめたまま、指が止まる。


(……大丈夫じゃないのに)


でも、

それ以上は書けなかった。


重たいって思われたくない。

信じてないみたいに見えたくない。


少し間を置いて、

また通知。


|由奈、無理してない?|

|ちゃんと寝ろよ|


その一文で、

胸の奥が、ぎゅっと痛くなった。


(……ずるい)


こんなふうに気にかけてくれるのに、

それでも不安になる自分が、嫌だった。


|うん|

|おやすみなさい|


送信。


画面を伏せて、

枕に顔を埋める。



「……大丈夫」


声に出してみる。


柏木くんも言ってた。

久我くんも、きっと同じことを言う。


湊くんは、

私を選んでくれてる。


抱きしめ返さなかった。

ちゃんと、距離を保ってた。


頭では分かってる。


でも——


あの後、二人でどこに行ったの?

何を話したの?


大丈夫ってどんなに言い聞かせても結局浮かんでくる暗い疑問。


あの人は

私が知らない湊くんの時間。

私がいない頃の湊くんの思い出。

簡単には消えない湊くんとの関係。


それを思っただけで、

胸の奥が、ひりっとする。


嫉妬。


ちゃんと名前をつけられるほど、

はっきりした感情。


(……私、こんなに欲張りだったんだ)


湊くんの“今”だけじゃなくて、

過去まで気にしてしまうなんて。


布団の中で、静かに息を吸う。


(私…本当に湊くんの事好きなんだ…)


こんな事で実感する自分の気持ちの重さ…


こんな私…湊くんに知られたくない…

きっとウザいって思われちゃう…


こんなに、いっぱい好きにならなきゃよかった…


こんな感情知りたくなかった…



気を抜いたら涙がこぼれそうで…


ただ天井を見つめて、この初めての感情を持て余していた。

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