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名前のない放課後  作者: えあな


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52/88

奪略の決意

放課後の昇降口。

由奈が蓮に連れられていく後ろ姿を見送ったあと——

俺は、しばらくその場を動けなかった。


胸の奥でずっと逆流していた熱が、

蓮の背中を見た瞬間に一気に噴き出した。


(……マジで連れてくんのかよ。)


声に出さなくても、全身がざわついていた。


そのとき横から柏木の声が飛んでくる。


柏木「篠原く〜ん!彼女連れ去られてたね〜。大丈夫ッスか?彼氏さん〜?」


久我「てか篠原が悪いだろ。

 “佐伯を大事”とか言っておいて……

 おまえ女の子に囲まれすぎ。」


湊「……別にあれは勝手に——」


久我「佐伯から見たら“勝手に”じゃねぇだろ。

 気づかない方が悪い。」


喉に刺さった。


反論しようとして、言葉が出なかった。


(……たしかに。

今まで女に囲まれること気にしたことなかった。

由奈の事ちゃんと考えれてなかった。)


胸がじわっと痛くなる。


柏木「てかあの御影って人、ガチでゆなのこと大事にしてる感じだったぞ?

 篠原より、ちゃんとしてた。まである。」


湊「……あ?」


柏木「いたっ!ごめん!冗談!でもさ、

 ライバル出現!というより“デカい壁”じゃね?」


久我「しかも壁がイケメンで大学生で家族公認。

 篠原、普通にハードモード。おつ」


言われなくても分かってる。


分かってるから、悔しい。


(……奪い返したい。)

(でも、ただのライバルじゃない。)


由奈の大事な従兄弟。

昔から支えてきた存在。

“適当に反発していい相手じゃない”くらいは分かる。


だからこそ湧いてくるもう一つの気持ち。


(……認めさせてやる。)


“こいつなら任せてもいい”

“ゆなを幸せにできる”

そう思わせたい。


ただ奪うだけじゃ、由奈を守れない。


御影蓮の目は、

由奈が少しでも曇る未来を絶対に許さない目だった。


(あの人が守ってきた時間――越えなきゃいけない。)


柏木「あ、篠原なんか怖い顔してる……」


久我「覚悟決めた顔だわ。」


湊「……煩い。」


そう呟いて鞄を持ち直した。


胸の奥にはさっきより落ち着いた熱がある。


嫉妬じゃない。

怒りでもない。


(ゆなの“家族”に胸を張って会うために。

 まずは俺が変わらないと。)


その決意がゆっくり固まっていく。


立ち止まってる暇はない。


(取り戻すだけじゃなく、認めさせる。)


由奈を幸せにするのは

“俺でいい”じゃなく、

“俺じゃなきゃ無理”にする。


そのための戦いが、今日から始まる。

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