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名前のない放課後  作者: えあな


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17/50

買い出しと小雨

ホームルームの終わり。

委員長「材料、足りないの出ました。買い出し行ける人——」


(沈黙)


(文化祭委員だし、私がやらなきゃだよね)

手を上げる。小さく。

私「行きます」


すぐ横で、低い声。

篠原「俺も行く」


(えっ??)


柏木「はい、俺らも護衛〜」

久我「領収書は愛と勇気で」


(えぇぇーーーっ!!! どういう展開?)


久我くんの発言も意味がわからないけど、この状況の意味がわからない。

(私、でしゃばっちゃったかな……三人で行ったほうがいいんじゃ……)


ーーーーーーーーー



放課後。リストを胸ポケット。

文具店までの道、結局、四人で歩く。


――柏木「水平警察、外勤でーす」

――久我「違反、傾斜二ミリ」

――篠原「減点、二」

――柏木「夢ない〜」

――篠原「夢は等間隔に貼る」

――久我「単位は“ミリと愛”」

――篠原「愛は規格外」


(一軍の会話って理解できないし、全然追いつけない)

(……遠い。半分も拾えてない)


私は相づちだけ置いて、愛想笑いしかできない。



コンビニ前。

柏木「ここで補給」

久我「ここで解散(小声)」


私「え?」


二人は目で合図。

現状把握する前に、二人は手を振って去っていった。

本当に解散した。


昨日と同じ……

篠原くんと二人っきり……


でも昨日より緊張してる。篠原くんのことが好きって気づいてしまったから——。


(これ以上、深く入りしたらダメなのに……)



文具店。紙とインクと匂い。

篠原「見出し用のボード、A2で三。両面テープ、10mm幅」

篠原くんが必要分を短く言う。

私は見本帳を広げる。

私「フ、フォント、どうする?」

(ちゃんと言葉にできてる?)詰まりながらも確認する。

篠原「読めるやつ。目立つより、読めるほうがいいと思われる」

私「……それ、好き」

(派手じゃないけど、伝わる方。篠原くんぽい)

篠原「線は0.7。太らせない」

私「うん」



会計。袋、二つ。


重さ配分を見て、篠原くんが自然に重いほうを持ってくれる。


(こういうの、音がしないのに伝わる。)

(本当に女の子の扱い慣れててスマートで、優しいなぁ)


自動ドアが開くと、外は小雨。


篠原くんが傘を開いて、何も言わず差し出す。

篠原「……入って」

一歩近づく。肩が半分ずつ濡れない角度。


歩幅を合わせる。

(心臓、うるさい)


篠原「重かったら持ちます」

私「平気。ありがと」

篠原「そっか」

(“そっか”の温度が、ちょうどいい)


駅までの数分。

リストのチェックを口実に、言葉を探していると、

篠原「明日、これ貼るんだよね」

篠原くんが言葉をつないでくれる。

私「うん。朝からやっておく」

篠原「了解」

自力で作業するつもりで返事をしたのに、当たり前のように手伝おうとしてくれる。

(用件だけ。短く。……でも、うれしい)


改札の前。

篠原「じゃあ、明日」

私「うん。また明日」

傘から半歩だけ抜けると、肩がひんやりした。

でも、胸の中は、すこしだけあたたかい。




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