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名前のない放課後  作者: えあな


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Re:帰り道

昇降口を出る。夕方の匂い。

歩幅を半歩だけ縮めて、足音のテンポを合わせる。


(あー……今日の俺、世界一ついてる)

沈黙の空気が嫌じゃない。——でも、何か話したい。


信号、赤。

空を仰いで、口が先に動く。


俺「今日のやつ、助かった」


(舞い上がりすぎだろ俺。自分でも意味わからん)


佐伯が笑う。


(俺、はず……ダサ……でも、佐伯はかわい)


俺「いや、助けて“させてもらって”、どうもありがとうございます」


無理やり軌道修正する。


助かったのは本当。

どうやって佐伯に意識してもらおうか、ずっと考えてたから——。


佐伯「ノート返してもらった時の私とお揃いだ。ふふふ」


無自覚に俺の心を揺さぶってくる。 


(お揃いなんて言葉に動揺するとか恋愛経験ないやつじゃん)


青。足を踏み出す。

コンビニの前で速度を落とす。


俺「喉、平気?」

作業中、何も飲んでないのを見てたからの気遣いと、もっと一緒にいたい下心。

佐伯「平気。ありがと」

俺「そっか」

(俺の下心……残念)


駅の光。改札。


俺「……遅くなった。家着いたら、連絡して」


ポケットから、佐伯画伯のイラスト入りスマホを出す。


佐伯「れ、連絡……?」

目が丸くなる。


(心配半分。もっと繋がりを作りたい下心半分)


俺「既読だけでもいい」


言い切ってから、視線を一瞬だけ外す。

(でも負担には思わせたくない。俺の勝手な“好き”だから)


画面にコードを出す。

佐伯が読み取る。ピッ。

佐伯「ありがと」

俺「ううん。……心配だから」


(これは本当に本当。可愛いんだから、

誰かに連れ去られないか心配になるのは当たり前。)


本当は家まで送りたい。でもまだそんな距離感じゃないから…

不信がらせたくない。


改札の手前。

俺「じゃあ」

佐伯「うん、じゃあ」


手は振らない。

会釈だけ交わして、彼女が階段を降りる。

(足音、同じテンポのまま遠のく)


——手の中のスマホに目を落とす。

|連絡先、ありがと。気をつけて|

送る。既読がすぐつく。

(反応、速いな)

それだけで嬉しくなる。佐伯を俺を幸せにするのが上手い。


改札の向こうで、彼女が小さくうなずいた気がした。

(見間違いでもいい)


帰り道。線路沿い。

透明ケースの白い紙は、隠さない。


家。玄関で靴を脱ぐ前に、スマホが震える。


|着きました。今日はありがとう|


画面を見て、にやけ顔が止まらない。

(俺、こんなキモかったっけ……)


|はーい。おつかれ。おやすみなさい。|


一拍置いて、OKスタンプを一個だけ。


(“既読だけでいい”って言ったのは俺なのに返信する。

返さないと、俺が寝れない)


スマホを伏せて、ケースの内側の彼女のスケッチを親指で軽く弾く。


(明日も、普通に。普通の顔で……

でも、もう少しだけ、近く)

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