表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当世流行りの異世界顛末生  作者: 有城 沙生
異世界顛末生
6/41

5話 これ、フラグじゃね?

 とは言ったものの。

 フラグって、良く分かってないのねん。


 聞いたことがあるので、カッコつけてみした。

 てへ。


 意味ありげに立ち去ったラウノ君。

 居なくなってしまった。

 もう、一週間は逢ってない。

 とーちゃんに聞いてみたら、どうしたんだろうねえ?と暗い顔をされた。


 …何か知ってるんですか?

 日本(元の世界)に無事に帰ったのなら良いけのだけれど。

 

 にーちゃんの物語は、あたしを殺すことで、動き出す。


 にーちゃんの物語は、ちゃんと終結するのだろうか?



 にーちゃんは三十日の長期のお休みで、子供部屋で宿題をしながら、わたしの子守りです。


 常春のこの世界の学校は、九十日毎に三十日のお休みとなるらしいです。

 その代わりに九十日はお休み無しで、一日四時間程度の授業が毎日あるそうです。

 ゆとりなんだか、詰め込みなんだか分からない授業内容です。


 書庫にある本を、日本語に書き起こすってのを日課にしていたのだけど、にーちゃんの前では流石に出来ないので、本は読むだけにしています。

 相も変わらず惰眠を貪り、ラジオ体操に勤しんでいます。


「なに?それ」

 吹き出すのを堪えるようにして、にーちゃんに尋ねられる。

「うんどうです。くっちゃねはでぶのもとですから!」

 にーちゃん、きょとんとしてますね。


 やー、これ以上は聞かないようにしてくれ給え。

 あたしも説明のしようがない。

 どうしようもない子を見る労るような、優しい微笑みにどきっとする。


 どきどきする。

 ………どきどきする。

 ………………どきどき……………する。



 残念ながら、この世界に魔法は無かった。

 折角のゲーム世界なのに、と思うが無いものは仕方ない。


 文明は不便でない程度に発達している。

 テレビやパソコンこそ無いけれど、電気や電話がある。


 自動車もあった。

 クラシックカーて言うのかな?

 動かし方はMT(ミッション)みたいだ。

 エンジンも外掛けじゃない。

 AT(オートマ)免許しか持っていなかった、あたしが言うのもなんだけれど。


 街並みは、キレイな大正時代っぽい。

 映画に出てくるより、キレイな感じ。

 石や煉瓦造りの建物が並んでいて、路面電車が走っている。


 絶妙に有り得ないこと、が混ざり合っている。

 本当に創作物の世界なんだろうな、と実感する。


 その上。

 戦争、という概念が無かった。

 そのせいか宗教がない。

 逆かもしれないかど。


 人が死んだら、焼いて灰にする。

 お墓はなく、灰を自然に埋める。

 輪廻も供養の概念も当然無いので、死んだらお仕舞い、それだけ。

 かーちゃんの灰も、庭に埋められたらしいが、特別参る事もない。


 結婚《《式》》も無いようだ。

 結婚は役所に書類を提出するだけ。

 ま、楽でいっか。

 花嫁衣装は着てみたかった気もするけど。

 ち、また着られないのか。



 平和なのは喜ばしい。

 けれども、人類の歴史に争いがないというのは、在り得ないことなんだろう、とは思う。


 戦争によって発展するものもあるのが、悲しいけど世の常だ。

 だから、実は平和って想像の中でしかありえないのかな、と悲しく思った。


 思っただけだけど。


 あたしゃ今、この世界では三才児だ。

 偉そうに哲学ぶっても、机上の空論なんだ、


 不思議と享年プラス(ミリア)の年齢という意識はなかった。

 前の年齢は享年で止まったまま、(ミリア)の人生を上書きしている。


 物語を読んでる感覚なのかも知れない。

 入り込んでいるけど、何処か他人。

 尤も違う意味で忘れていることも沢山有りはするけれども。


 いつかは、帰らなきゃいけないんだろうか?


 帰る?

 ――――ナンノタメニ?

 帰る?

 ――――――ドコニ?




 あたしは十三歳になった。


 生前(ばばあ)の記憶は、はっきりしっかりとある。

 にーちゃんは二十歳だ。

 今もキラキラエフェクトは仕事しいて、その美しさに拍車を掛けている。


 にーちゃんは五年で学校を卒業していた。

 あたし自身は危うく三年で卒業になりそうにだったのを、学生生活でしか学べない事かあるとかごねて五年掛けてみた。


 一年かけてローマ字習得するて、どんなよ。

 漢字も無いし、算数は四則演算だけだし。

 戦争がないお蔭か外国語が存在しないし。

 歴史や地理はそれなりには学ぶことがあったけれど、やっぱり戦争がないせいか繁雑さは無かった。

 この先は研究院の扱いになるらしい。


 五歳上の黒髪の少女が、金髪の少年に寄り添っていた。

 同じクラスで短い間学ぶことがあったけれど、一言二言、挨拶を交わす程度でわたしは別のクラスへ移動した。

 


 思えば、あれがヒロインだったのかしら?

 不思議な魅力のある子だなと思った。


 にーちゃんは狙われてないのかな?


 金髪の男の子が、冷たい目をしてあたしを見てたのが印象的だった。


 にーちゃんは、さらっさらの銀髪のままだ。


 あたしは黒っぽい銀髪に黒っぽい緑の目。

 ん。取り敢えずは美人の部類、のはず。

 もうちょっとウエストは細い方があたしの好みだけど。

 多くは望むまい。


 良かった、良かった。

 のか?


 如何せんゲーム自体の知識が全くない、あたしには知りようもないことだ。


 卒業後はにーちゃんととーちゃんの手伝いをしてる。

 とーちゃんはいわゆる商社の社長だった。

 社長て概念も無いんだけど。

 この街の、衣食住を円滑に回している。

 社長というよりは、市長とかに近いんじゃ?と思うけど、肩書きや階級はない。

 貴族制度も存在していない。


 どうやらこの世界の制作者は、徹底的に格差を無くしたいのかな?

 あたしはただの、ちょっとだけ裕福なお嬢さんということだ。

 とーちゃんの手伝いは楽しい。

 目まぐるしい毎日に、生前にはなかった遣り甲斐を見出だしていた。


 時折、にーちゃんの頭を抱き抱えながら髪に指を(くぐ)らす。

 さらさらで柔らかい髪。


 わたしはにーちゃんと呼び乍らも、セイレンを兄とは認識していなかった。



 それが恋愛対象としてか?と問われると甚だ疑問はある。

 もしかすると、物語の登場人物(キャラクター)や、アイドルのような認識かもしれない。

 生身の人間との恋愛は、禄な思い出がない。

 何だったら、恐怖さえ感じる。

 こうもあたしの意識がはっきりしていると、ミリアとセイレンの恋愛は、物語を読んでいる感覚に近くて、第三者として単純に応援したい気持ちもある。


 けれども、あたし自身は今までこんなに他人(ひと)から好意で構って貰ったことが乏しく、手放し難いのも事実だ。


 構われたいのに、上手く甘えられない。

 大抵の事は一人でしたし、一人で出来ない事はしなかった。

 傷付くのも、傷付けられるのも嫌で、一人でいた。

 だから。

 こんなにも誰かに甘え、構われることができる幸せを、あたしは知らなかった。



 とーちゃんの仕事を手伝う際に、名前の横にこそっと『美』と印す様にした。

 偽造防止も兼ねて。

 ミリアで『美』

 造形的に格好良いのと、生前のあたしの名前にも使われていた、記号。


 したら、にーちゃんには見付かった。

「これ、なに?」

 サインだよ。マークかな?

「どんな意味があるの?」

 わたしが書きましたて証拠だよ。

「そうじゃなくて、マーク自体の意味だよ」

 ああ。美しい…と言おうとして、はっとした。

 漢字の無い世界でそれ言うとナルシストっぽくないか?


 ちょっとだけ考えて

 羊が大きいと嬉しいのですと、答えた。

 にーちゃんは目を点にしていたけど、

「ああ、ミリア文字だね」

 って微笑(わら)った。


 実は、書庫の本の漢字化計画は早々にばれていた。

 書庫に籠ってがりがりと夢中になってノートを書いていたら、覗かれているのに気が付かなかった。

 隠すのも何なので、ローマ字の羅列は分かりにくいからって、象形所以の漢字を中心に、さも自分で思い付いたかのように教えた。

 "木"とか、"川"とか。

 木が囲まれると"困"るでしょとか。


 ほら、似てるでしょ?て自慢気に。

 そしたら、それをにーちゃんはミリア文字って面白がってくれた訳だ。

 ごめんなさい。大昔から使われているモノで、わたしのオリジナルじゃないんですけど。

「でも、羊が大きくて嬉しいのが、何でミリアのマークなの?」


 そうですよねぇ、分かります。

 でもお願い、突っ込まないで。

 内緒。

 でも、二人だけの秘密だよってだけ返したら、髪の毛ぐしゃぐしゃされた。


 あー楽しい。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ