その中の異世顛末生~志山風花◆3
成る程、【デイム・メイカー】か……。
それで、この状態…《《葬式》》が無い事に納得する。
宗教が、無い世界。
だから、葬《《式》》が無い。
と、私に合点はついたのだけど、この睨むように見てくるクリストファーに何と説明しようか?
不用意に滑ってしまった口を、後悔する。
声は……二日前に応急措置した、勢雄…さんのもので間違いない、と思う。
イベントの最中、吐血しながら「なんだこれは」って、吐き出した声と似ている。
尤も、勢雄さんは流行りから一歩引いてる声優さんだから、私はその時初めて聴いた声で。
低く、癖のある不思議な声だなと、印象に残ったのだけど。
で、さて。
何と説明しようか?
「なんの事です?」
私はシラを切ることに決めた。
宗教が無い世界観に、葬式を説明できる自信無い。
「ラウノ…今、何とか《《式》》だって言ったろ?」
矢張、“葬式”という、単語自体がないのだ。
聞き慣れない言葉を、聞き取ってない。
「掃除しなきゃな、と言ったんです。聞き間違いですよ」
苦し紛れだけど、通用するかしら?
すると、強ばっていた表情が、ふわっと解けた。
うわっ…!クリス様は推しではないけど、憂いのある良い顔をするじゃない!
「……そうだよな、すまない」
ありがとう。
そう、男は引き際が肝心だよ。
「──ああ、そうだ。ラウノには頼みたいことがあるんだけど」
と、切り出されたのは子守りだった。
───
次の日
……また寝て起きてしまった。
なんて、長い物語性のある夢なんだろう。
そんなことを考えながら、メルクリオス家へ赴く。
これがゲーム通りなら、セイレン様にお会いできるのだろうか?
邪な気持ちが顔をのぞかせる。
仕方ないよね、推しだもん。
やっとセイレン様ルートの分岐点、攻略サイトで見つけたのに。
早く目覚めて、ゲームしたい。
──でも、あんな若いクリス様、公式の立ち絵では見なかったよね?
おじ様枠じゃなかったっけ?
攻略対象だなんて、あのイベントで初公開だったし。
「みりあです!」
と、なんとも愛らしい少女を目の前に、違和感を覚える。
なぜ、メルクリオス家に少女がいる?
どんなサイトでも、見かけない姿。
知らない名前。
「ラウノ…十歳…」
知らない名前、でもこの後の展開は知ってる。
イベントフラグの、着火点───
斯くして。
推しには会えたけれど、私の好きな推しの姿ではなくて。
対峙するなり、彼の手にはナイフがにりゅっ、と湧き出て。
最新情報で知り得た、「町の少年を殺す」という、セイレン様ルートを見事クリアし。
居合わせたクリス様の、悲痛な面持ちが、美しいな、なんて思いながら。
やけにリアルに腹を突き刺された気持ち悪さを携えて、夢から覚めた。




