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当世流行りの異世界顛末生  作者: 有城 沙生
補綴 余人安生諸順(ほてつ よにんのあんじょうしょじゅん)
32/41

──もしくは誰も知らない想像主の話─前

「勢雄さん!この度は、誠に申し訳ありませんでした!体調が芳しくなかった処を、無理にイベントに出演して下さって…て、あれ?お子さんですか?」


 リハビリが終わった談話室。

 約束した訳でもないけど、勢雄さんとお話しするようになって二日。

 勢雄さんに来訪者のようだ。

 お仕事関係の方かな?スーツに身を包んでいる。


「俺は独身だ。こんなガキいてたまるか。コイツは…何だ?」


「失礼だな、ファンデスヨ。あれ?勢雄さん、独身でしたっけ?」


「それこそ、失礼だな。仕事しなくなったら出ていったんだよ。バツイチだ、悪いか」


「……いや、悪くない。

 むしろ、御褒美じゃ?」


「はぁ?大概、おかしいな。おまえも」

 

 うわっ!おもいっきり笑顔で答えるよ。

 もー!勢雄さんたら!


「あ、コイツ。お前のとこのゲーム、クリス()まで落としたんだと」

 

 ??ん?


「え?クリス?あの、隠し中の隠し?見付けたんですか?!」

「あれ?え?もしかして【ディムメイカー】の制作者さん?!」


「正確には、会社が製作したんですけどね。凄いなー“クリス”見つけたんだ」


 しみじみと言われて、なんとなく誇らしく思ったから、スマホをさわって特設ページを見せる。

 クリス様を落とした証拠。


「うわっ!ほんとだ。このページにたどり着いてる!!へえ…いるんだ」


 珍獣を見るかのように、見られてる気がするぞ?


「だって、勢雄さんがお声ですよ?NPCなわけないじゃないですか?追っかけ回しましたよ」


「え?もしかしてゲーム中に気がついたの?この間のイベントが解禁だったのに??……あー!!あの時の看護師さん!!この病院ですよねっ!」


「ああ、そうだな。なんてったっけ?アイツの名前」


 あたしに聞いてくるので、

「志山さんのこと?今日は非番じゃないかな?」

「そうそう、ソイツ。あー夜勤明けか?」


「えー折角、お礼とお詫びの品を持ってきたのに…出直します」

「俺の見舞いじゃ、ねえのかよ」

「そうでした!」


 なかなかドジっこさんなのかな?


 ───


「嬢ちゃん、コイツは俺の高校の後輩でゲーム屋。俺を昔のうっすい縁で引っ張り出した張本人」

 

 ゲーム屋さんからは名刺をいただいた。

 ──プロダクションテルル。

 ここ数日、見慣れたロゴだ。


「杉田 弥依(みい)です。この度は勢雄さんをありがとうございます」

 全霊を込めてお辞儀をした。

 車イスだけど。

 ん。よくぞキャスティングしていただいた。


「だから、お前は俺の何なんだ?」

 勢雄さんの呆れたような二度目の台詞。

「だから、ファンですってば。何度言わせるんですか」

 

「……ぷっ!勢雄さん、漫才でも始めるんですか?息があってますね」

 ゲーム屋さんは、笑いが止まらないようです。


 ───


「院内ではお静かにお願いしますね」


 あれ?


「志山さん、今日は夜勤明けではないのですか?」


「今から帰るのよ。そしたら談話室(ここ)が騒がしいから覗いたんじゃない」


 もうお昼近いのに、志山さん忙しいな。


「お?良いところに。お前さん、この看護師さんに用事があったんだろ?」


「え?あ、確かに。その節は大変お世話になりました。私、こう言うもので…」


 ゲーム屋さんは、名刺と、会社名のロゴの入った袋を渡している。


「心ばかりでございますが、こちらをどうぞ、お使いください」


「こういうの、受け取れないんですけど…」


「存じております。けれど、先日のイベントで、お客様全員にお帰りの際、配布したグッズをお渡しできてなかったと思いまして…」


「そうだ!!忘れてた!お土産があったんだ!そういうことなら、ありがたく受け取らせていただきます」


 がさごそと、袋の中を物色する志山さんの顔色がみるみる歓喜に変わる。


 良いなあ…と、思うけど、こればかりは仕方ない。

 後で見せては貰おう。


「はい、これ」


 志山さんが、クリス様の描かれたクリアファイルとアクスタを渡してくれる。


「え?良いんですか?」


「もちろん、こういうのはね、好きな人の元にあるのが良いのよ。わたしはこっちがあれば良いから」

 と、セイレン様のグッズを見せてくれる。

 きっと、あたしと志山さんの顔は、デレデレだと思う。


「涎、垂れてんぞ」

「「垂らしてませんっ!」」

 勢雄さんの軽口に、志山さんとのシンクロ率百パーセントで答える。


「ねえ、志山さん。他のも見せて」

「どうぞ」

 あたしたちって、ホント、メルクリオス家に全振りしてるけど、主要キャラではないのよね。

 志山さんから、袋を受け取って他のキャラを眺める。

 ん。この絵師さん、やっぱ素敵だわ。

 クリス様が一番素敵だけど。


「凄いですね、このアクスタ。ちゃんと石が埋め込まれてる」


「気がついていただけましたか!」


「「なんのこと?」」

今度は、勢雄さんと志山さんがシンクロしてる。


「攻略キャラには、それぞれ石があって、プレゼントされる物についてる…て!志山さん…集めてないんですか?クリス様以外の石を集めなきゃ、セイレン様エンド、見られませんよ?」


「え?世界の経済を破綻させ、貧民街を出現させ、彼と出逢い、交流し、貧民街から連れ出し、教育を施し、紳士として洗練、の他に、まだやることあったの?!」


「石集めて、真ん中の街、“テルル”を発現させなきゃ、ダメですよ」

 と、あたし。


「あーだから、俺が息子を“テルル”で見付けるのか」

 と、勢雄さんが続ける。


「え?え?なんのことです?“テルル”って。真ん中の街に正式な名前はありませんよ。開発段階でそう仮称してましたけど?」


 ゲーム屋さんが、不思議そうに言った。



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