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当世流行りの異世界顛末生  作者: 有城 沙生
付属淑女育成計核(デイムメイカー)
25/41

1話 学校説明回

 

マーリア・ディムメイカーは齢八つにして、とある決断を迫られていた。


 進級するか、否か。


 六才から十六才までの間に入学して、七年間在学可能な学校制度。

 最初の一年のみが初等義務ということで、読み書きと簡単な計算を学び、その後、進級するか、終学するかは個人の自由だ。


 学校は在学中ずっと無料で通えるが、それでも半数以上の子どもは初等義務だけで終える。

 お勉強が嫌いな子は多い。



 家に跡継ぎが必要な場合は、何年か掛けて学校に通わせることも珍しくはないが、マーリアの父は勤め人だし、ましては女の子。


 女の子はメイドや女給以外で、率先的に働きに出るものは余りいない。


 母にしても、初等義務だけで家事手伝いの後、十六才で父と結婚してからは家のことだけしている。

 何かやりたいとかピンとこない。


 でも、勉強はしてみたい。

 知らないことを知ってみたい。

 胸の奥に形にならない何かを抱えていた。


 そんな折り、夢の中に不思議なものが現れた。


 見たことのないガラスの板。

 ノートの半分くらいの大きさ。

 手に取ってみると………光った!


 なにこれ!

 恐る恐る表面に触れてみると、絵が変わる。


 ……あれ?これ?

 なんか私に似てる?

 黒髪なだけ、かな?

 と、次々に現れる綺麗な男の子!


 なんだろう?

 周りに色々と書いてあるのは、これは字?

 模様かな?


 あ、これは読めそう。

 アルファベット。


 黒髪の女の子。

 ……へろいね?

 なんの事だろう?

 この子の名前かな?


 綺麗な金髪で蒼い瞳の男の人。

 あ…え…T…H…え…R


 赤い髪のおっかない男の人。

 せ…い…れ…ん。


 銀髪の大人の人。

 C…H…R…い…S……?


 なんだこれ、文字列がばらばらでまるで読めない。

 言葉になってない。

 さっぱり分からない。


 そんな中、見覚えのある建物が出てきた。


 学校だ。

 そこには、綺麗な金髪の男の人と黒髪の少女が仲睦まじくしている絵。


 ……ねえ?

 もし進級したら、私もこの子みたいに綺麗な男の子と仲良くなれることがあるのかしら?


 そう期待せずにはいられない絵。

 決めた!私、進級する!


 少しばかりの横縞な希望を抱き、私は夢の中で決意した。



 進級すると寮での共同生活が始まる。

 九十日の間、三~四教科程の授業が毎日があって、後は寮へ戻り当番で掃除をしたり、夕飯の準備をしたり、当番でないときは友達とお喋りしたり。


 そして三十日の休暇。

 お家に帰れる。

 その百二十日で一つの〈テンポ〉

 ――一期間が終わる。


 プリン期間(テンポ)、ソメロ期間(テンポ)、アウツ期間(テンポ)、ビント期間(テンポ)の四期間(テンポ)で一年。

 そして進級。


 お勉強ができる子は、一年を待たずして進級出来たり、初等義務を飛ばすことが出来るけど、そんな子は一年に一人か二人。


 私はきっちり一年勉強しての進級。

 一緒に入学した子は、三組から一組に減った。

 人数にすると百人から三十人程になった。


 二級目からは義務ではないので、厳しくなるし、試験もある、と、父さんが言っていた。

 父さんもきっちり七年勉強したって言っていた。


 出来ないからって学校に行けなくなる訳はないし、自分から辞めない限りは最期まで勉強出来る。

 だから、時々、七年以上掛かる人も中にはいるらしいが、それも年に一人か二人らしい。



 勉強ばっかりじゃなくて、一期間に一回催しがある。

 プリン期間(テンポ)が入学と進級の会。

 ソメロ期間(テンポ)は長期休暇。

 アウツ期間(テンポ)が運動の会。

 ビント期間(テンポ)がお祭りの会。


 入学と進級の会は、初期間の最初の日に、先生方のお話を聞いた後、食事をしながらゲームで遊んだりする。


 ソメロ期間(テンポ)は六十日お勉強で、いつもより三十日、休暇が長い。


 運動の会は、かけっこしたり色々。

 私は余り好きではない。


 お祭りの会は楽しい。

 級毎に趣向を凝らして、お芝居をしたり歌ったりする。


 初等義務の時は、先生任せだったけど、二年目からは最上級の生徒会を中心に皆で準備する。

 自分達ですることに意味があるらしい。



 三年目で十才になった。

 同じ級の子は二十人ほどになっていた。

 よその街から、一人の男の子が同じ級になった。

 綺麗な金髪で蒼い瞳の男の子。

 アイテール・シャマシュ君。

 私、この子知ってる。

 夢の中の、ガラスに写っていた子だ。


 それまで私は、真ん中くらいの成績だったけど、アイテール君と勉強するようになって、一番とか二番を取ったり取られたりするようになった。

 すごく楽しい。


 アイテール君は何になりたいの?て訊いたら、

「王子様…かな?」

 と言った。


 王子様て、絵本にしか出てこないけどなれるのかな?

 どうやってなるんだろう?



 そんな時、お祭りの会のお芝居で、アイテール君と王子様とお姫様をやることになった。

 王子様になりたいって言ってた所為もあるのか、アイテール君は格好良い。


 私のお姫様はどうなんだろう?

「しらゆきひめだから、マーリアにしか出来ないよ」

 成程、同じ級に黒髪の女の子は一人だけだ。


 でも、正直お姫様とか王子様とかよく分からない。

 綺麗なお金持ちの子のこと?と、アイテール君に尋ねたら、

「マーリアは可愛いなあ」

 って、アイテール君に頭をぽんぽんされた。


 誉める言葉を貰った筈なのに、胸が苦しい。

 頭に置かれた手は優しいけど、嬉しくなかった。


「……どうして泣いてるの?」

 私は泣いていた。

 何故かは、分からない。

 後から後から涙が溢れた。


「分…かんない…けど、胸…が痛…い」

 て、切れ切れに言ったら、ごめんねって抱き締めてくれた。


「ボクはね。マーリアの事、大切なんだ。だから、お姫様にしてあげたいと思っているんだよ」

 絵本の中のお姫様を、母さんはお嫁さんの事と教えてくれた。

 求婚されたと思っていいのかな?



 アイテール君とは一緒にいることが多くなった。

 恋人だね、何て言われることがあるけどよく分からない。

 けど、だったら嬉しい。





 ―――生徒会の一人に、セイレン・メルクリオスさんという人がいた。


 夢の中の光る板の中で、唯一字が読めた人と同じ名前。

 四年上だけど二つ違いらしい。

 頭いいんだなー。


 絵の中のセイレン?さんは、自然には産まれない真っ赤な髪が印象的だったけど、生徒会のセイレンさんは銀髪だ。


 私の黒髪と、アイテール君の金髪と、同じ位には珍しい髪の色。


 顔が恐ろしい処は似てる気がするけど、なんか違う。


 う~ん……やっぱり夢は夢なのかな?

 アイテール君はそっくりなんだけどな。




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