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アルタミラの戦い(アメリサイド)

 今朝はようやく普通に登校することができた。

 何だかずいぶん久しぶりのような気がするなぁ。


「おはよー」


 オレは久々の日常気分で教室に顔を出した。

 ところがそれと同時に一斉にわっと取り囲まれた。


「おー、お帰り!」

「待ってたぞ!」

「な、何だ?」

「何だも何も、教えてくれよ!」

「アルタミラで何があったんだ?」


 あー、なるほど。

 何かあったという話は聞こえてきてるみたいだが、実際に何があったのか学生まではまだ情報が降りてきてないようだ。

 そりゃ聞きたがるか。


「何があったかって言うとだな……あの日アルタミラに行ったら、ちょうど負傷者が運び込まれたところでな──」


 オレは求められるままにあの日の出来事を語った。

 何回もしゃべっといてよかった、いい練習になった。


「──というわけでティナはついに敵の【超人】を討ち果たしたんだ」


 おおおお……。

 ティナと竜人の一騎打ちの一部始終を説明するとどよめきのような声と拍手とが沸き起こった。


「まあティナの件はオレが自分の目で見たから充分に語れるんだけどな? でも中で何があったかは当事者に聞いた方がいいと思うぜ」


 指さすと男たちの視線はもうひとつの人だかりへと向かった。


 うちのパーティーのティナを除く四人は支援科だ。

 シャルたちも教室に足を踏み入れるなり女性陣に囲まれて質問攻めにあっていた。


「私はアメリの指示に従ってスキルを撃っていただけだから」

「私も。見上げるほど大きな竜人たちが、耳が痛くなるような大声で叫びながらすごい速さで近寄ってくるの……。グリが治ったら後は必死でシールドしてただけよ」


 もっともシャルとアイラは閉口してたけど。


「おーいアメリ、ちょうどいいからまとめて説明してくれ」

「はいはい」


 オレが大声で招くとアメリは人の輪をかき分けて出てきた。

 もはや学園最強クラスのこの女傑はまだ支援科にいる。

 いっそ戦闘科に転科したらクラスでも孤立してるらしいティナも喜ぶだろうに。


 この二人は地元が同じということもあるせいか最近仲が良くて、休日に一緒に遊びに行ってることもあるようだ。


「ほらほら、前に立って。武勇伝を聞かせてくれよ」

「……もう、しょうがないなぁ」


 アメリを教卓まで押しやると代わりのように全員席に着いた。

 そしてアメリは語り始めた。


「あの日はね──」


 ----------


 そもそも到着したときから不穏だったのよ。


 何か騒がしいと思ったら戦闘があったそうで怪我人が運び込まれてたわ。重傷者軽傷者合わせて十一人。

 私たちも手伝って……アルタミラでは普通はパーティー単位で自炊するんだけど、あの時は炊き出しに回ってたのね。


 そのせいでちょっと注意がおろそかになってたの。


 気がついた時にはアルタミラ全体が竜人の群れに囲まれてた。

 竜人のうち警戒すべき個体は二体。ひとつは指揮官系ジョブの個体。もうひとつは超人ジョブの個体。

 アルタミラには監視塔があっていつも周辺を警戒してるんだけど、あの時は救助のためにその人数も減ってたし、それにその指揮官のスキルで警戒の目が届かない外側から一気に押し寄せたってわけ。


 それから超人。グリ──私のグリフォンが、


「いやオレのだよ?」


 私のよ。とにかくグリフォンが門番をしてたんだけど、その超人の攻撃で負傷してしまったの。

 それで柵の内側に逃げてきたんだけど門が破壊されてしまって、そこに超人がいた。


 ──凄い威圧感だった。


 ティナも危ないと思ったんでしょうね、その超人を見ると同時に飛び出していったわ。

 もしあそこでティナが行かなかったら正面から突入されて負けてたでしょうね。

 何しろ正門側はティナと超人の戦闘で竜人たちはかえって近寄れなくなってしまったから。


 アルタミラの冒険者たちは周りの柵を乗り越えてくる竜人たちに対処してたけど、私のグリフォンは怪我をして飛べなかったから戦闘に参加することもできなかった。

 でも私は敵の位置がわかるスキルを持っているし、私のグリフォンは強力なシールドスキルを持っているから、私たちはアルタミラの真ん中に陣取って迎撃することにしたの。ウィルの指示で。

 私が索敵、私のグリフォンがシールドしてアイラがグリフォンを治療、シャルが攻撃ね。


「ウィルはどうした?」


 うちのリーダーなら「敵のボスを倒してくる」って飛び出しちゃったわ。飛竜に乗って。


 私たちはアルタミラの真ん中にある泉の前にいて、泉の横手には負傷者たちの集められた宿舎があったの。

 そこを狙ってたのかな? 柵を乗り越えた竜人たちがどんどん私たちの方にやってくるから迎撃したわ。私がライトアローを撃ったらシャルはそちらにミラクルボイス、って形でね。

 私はタイミングを計って竜人を撃ってたわね。最初は竜人もそこまで数が多くなかったからこれは上手くいってたの。


 ところがバルトが──あ、バルトはアルタミラの責任者ね。バルトがやってきて私たちを見て、伝令を走らせて戦っていた冒険者たちを集めたのよ。

 これはちょっと計算違いだったの。私はグリが治ったら二人を乗せて上空から攻撃しようと思ってたから。でももう動けなくなっちゃったじゃない?


 シールドの内側に逃げ込んできた冒険者は私たちも含めて十九人いた。最初はバラバラに攻撃してて効率が悪かったから、私は「私の狙った方を撃って」って言ったの。建物が多くて邪魔だったから、息を揃える練習で吹っ飛ばしたりしてね。そう、竜人たちは建物の陰に隠れて攻撃してきたからまず建物を破壊したわけ。

 そうしたらバルトが素早くメンバーを入れ替えて防御と攻撃に分けたの。防御役が私のグリフォンのシールドを補強、攻撃役が私の狙った方を攻撃するって具合に。


 でも竜人は後から後から湧いてきて波状攻撃を仕掛けてきたのよ。こっちは人数も少ないし、チラッとこれは押し切られるかもしれない、と思ったわね。

 ところが五十八匹目を倒したところで突然動きが乱れたの。連携はバラバラになるし攻撃は散漫になるし。あの時に敵指揮官が死んでたんでしょうね。ウィルが有言実行タイプで助かったわ。


 そこから四匹を倒したら一匹が耐えきれずに逃げ出して、そいつを後ろから撃ったら後は総崩れ。残りの二十五匹は逃げていったわ。

 こちらの冒険者は全員無事、私たちのところまで集まれなかった冒険者たちも生きてた。重傷だったけど。


 こうして私たちはアルタミラを守り切ったのよ。


 ----------


 アメリが語り終えると教室が万雷の拍手で満たされた。

 授業どころじゃなくて聞いていた教官も手を叩いていた。

 オレは向こうにいるとき聞いたから知ってたんだけど一緒に拍手した。


 さて、午前の授業が終わって昼飯を食いに行ったらまた生徒たちが押し寄せて来た。

 今度は戦闘科の連中だ。


 結局オレたちはもう一回同じ話をする羽目になった。

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