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帰宅

 襲撃から五日が経過した。

 日々様相を改めるアルタミラには真新しい木の香がそこら中に漂っている。


 がれきの山も片づけられた(ルドルフのポケットに入れて外に持って出て穴を掘って埋めた)。

 マックと冒険者たちの努力の甲斐あって新築の建物も少しずつできあがっている。


 ここに残った負傷者の治療も終わって人員の補充も済んだ。


 アルタミラはようやく元通りになるめどが立った。

 まあめどが立っただけでまだ元通りには程遠いけど。


 オレたちはそろそろ失礼させてもらうことにした。

 昨夜にはバルトのところにあいさつに行った。


「そうか、帰るか」

「お世話になりました」

「世話になったのはこっちの方だ。本当によくやってくれた」


 朝からはあちこちあいさつ回りだ。同じ宿舎に泊ってた冒険者には昨夜のうちに報告してたけどね。

 ティナとアメリが帰ってきて、さすがに女子四人とひとつテントの下で暮らすのは憚られたのでオレは負傷者用の宿舎の隅っこに間借りさせてもらっていた。


 バルトにもう一度あいさつに行ったら手紙を預かった。


「学校の方には改めて報告に向かうが、取り急ぎこれを渡しておいてくれ」


 さて出発だ。

 冒険者たちが見送りに来てくれた。


「また来いよ!」

「あの歌をもう一度聞かせてくれよな!」

「アメリちゃん、今度一緒にパーティー組もうぜ!」


 冒険者たちと一緒に戦った三人はすごい人気で、さかんに名残を惜しまれていた。


「おい、絶対迎えに来てくれよな?」


 心細そうな顔でマックがオレの袖を引いた。男にされると気色悪いな。


 マックは大工の腕を重宝がられて引っ張りだこだ。

 本当は一緒に帰る予定だったんだが引き止められて、もう少し残って手伝うことになってしまった。


「おお、任せとけ」

「マジで頼むぞ、昨日気分転換でちょっと外に出たら出た瞬間わけのわからんモンスターに襲われたんだよ。それで助けてもらったはいいけど滅茶苦茶怒られたんだよ。俺もうここ嫌だよ」

「わー……それは災難だったな。一か月後でいいか?」

「ふざけるな!」


 勢ぞろいした冒険者たちに見送られてオレたちは飛び立った。

 手を振る人波が見えなくなるまでオレたちも手を振り返していた。


 昼にはエンターに到着した。


「おお、お前ら……ようやく帰ったか! おーい、みんなー!」


 入り口にいた冒険者はオレたちを見つけるとエンターに走っていって大声で触れ回った。


 すごい歓待を受けた。

 特に重傷を負って先に移送された冒険者たちはアメリたちを取り囲んでさかんに褒めそやしていた。


 元々荷物を運ぶ依頼だったんで、三人が捕まってる間にその完了の手続きをした(後で納入していたんだ)。

 竜人との戦闘は勝手に参加したんで特に手続きすることはなかったんだが、報告を求められて一部始終を説明することになった。


 と言っても報告はとっくに上がってるはずだ。

 ティナと竜人との戦闘についてはアルタミラでも散々聞かれて、一席講釈を打てるくらいにしゃべり慣れちゃったし。

 当然その話がこっちにも回されてるだろう。


 まあ半分以上好奇心で聞いてるんだろうな。

 ボスに突撃したときの心境とか、状況と関係ないことまで根掘り葉掘り尋ねられた。


 でもオレが目撃したのはティナの戦闘だけだ。

 アルタミラ内で行われた戦闘については後でアメリたちから直接報告してもらおう。


 ギルドだけじゃなくて当時あの場にいなかった冒険者たちも同じだった。

 すぐ学校に向かおうと思ってたんだが散々引き止められて昼食をごちそうになって話を求められて、結局昼下がりまでゆっくりしてしまった。


 エンターから解放されてやっと学校に向かった。

 教官室に報告に行くと教官たちがわっと寄ってきた。

 でもみんな優しい笑顔で、無言だ。


「ご苦労だったな。今日は帰っていいからゆっくり休め」


 教官たちは何があったのか既に知っていた。

 オレは預かっていた手紙を渡して退出した。


「──みんな、お疲れ様でした! この五日間、みんな本当によく頑張ってくれたね。その頑張りをねぎらいたいところだけど、本当に疲れてるだろうから今日はこれで解散しよう。打ち上げはまた次の休日にでもやろう」

「うん。じゃーねー」

「また明日!」


 女子四人が自分たちの寮へ向かうのを見送って、オレはようやく自分の寮に帰った。

 やれやれ、まさかあんなに長居することになるとは。


 ドラたちは湖の上空を並足で駆けた。

 夏の日は長くて空はまだ昼の色だ。湖面がキラキラして、眩しい。


 思えばこいつらも頑張ってくれたな。オレはドラの首筋を撫でた。

 何か苦労に報いてやりたいけど、何がいいかな? たまには肉でも買ってきてレインに茹でてもらおうか……?


 寮が見えた。

 レインが庭先でベルと戯れていた。


「ただいまー」


 降下しながら声を掛けると一人と一匹がこっちを向いた。


「……おー! お帰り! ずいぶん長かったな」

「やー、大騒ぎだったよ。今日は休み?」

「昼シフト。そっちはなんか大変だったらしいな?」

「そうなんだよ、聞いてくれよ──」


 寮に入ったオレは竜人の群れとの戦闘に始まる五日間の冒険をレインに語った。


 それにしても、同じことを話すのこれで何度目だっけ?

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