復興活動
翌日からはアルタミラの復興が始まった。
オレたちは否応なしに関わっていた。「学生は帰れ」とも言われたけど、ではお言葉に甘えてというわけにもいかないよな?
もっともシャルだけは帰そうと思ったんだけど、本人が聞かなかった。
「みんなが残ってるのに私だけ帰るわけにはいかないわ」
シャルの意志は固い。
オレも同じことをしているのであまり強いことは言えなかった。
建物が焼けたり吹っ飛んだりしてアルタミラはガレキの山だ。
廃材を片付けて新しい建物を建てないと。
でもその前に、オレは依頼されてまず怪我人をエンターへ移送することになった。
しかしなー……最初の遭遇戦での怪我人に襲撃での怪我人を合わせて、重傷者だけでも三十人もいるんだよな。
いったい何往復しなきゃならないんだろう。何日もかかっちゃうよ。
そこで思いついた──そうだ、ルドルフで一度に運べないだろうか?
ドライムーンは自分のポケットの中に入るって聞くし、一応生き物も入れられるはずだ。
でも自分で入ってみたことはないんだよな……。
実際にできるものかどうか試してみることにした。
オレはルドルフのポケットに頭を突っ込んだ。
中はよく見えなかった。
オレの体とポケットの縁との隙間から漏れる光がうっすら照らしているだけだ。
オレはもうちょっとよく見ようとグッと体を突っ込んだ。
「うわっ」
体が吸い込まれるように滑り込んだ。
足が通り抜けるとポケットの口が閉じて、オレは真っ暗闇の中に放り出されていた。
息はできるが何とも言えない息苦しさがある。
違和感、気持ち悪さと言った方がいいかもしれない。
自分がどちらを向いているのか、上も下もわからない。
ジタバタ手足を動かしてもどこにも足場がない。
呼吸ができる深い水の真ん中で目隠ししてもがいているような感じだ。
……あ、無理。これは無理。
ルドルフ、出して!
念じると隙間が開いてオレはヌルッと吐き出された。
オレは地面にベシャッと腹ばいに寝そべっていた。
「大丈夫?」
「……目が回った」
怪我人をここに詰めて輸送するのはちょっと酷だ。
あえてやるとすればシャルの睡眠スキルで眠らせてから詰め込んで、ティナがルドルフを抱えて全力で走ればなんとかなるか?
それともいっそティナの[サイコキネシス]でまとめて輸送した方がマシか?
オレは冒険者たちを一塊にして頭の上に持ち上げて空を走るティナを想像してみた。
うーん……。一度飛ばしてもらったことはあるけど、あの時は地上を歩いてたしなー……。
空の高いところをティナの全力で移動したらさすがの冒険者でも怖いと思う。
万が一戦闘になった時のことを考えるとますます怖い。
それにアメリが先導しないと真っ直ぐエンターに着くかちょっと怪しいんだよな……。
結局前の案を少し改良してアメリとティナに行ってもらうことになった。
この二人なら何があっても何とかなるだろう。
二人にはエンターと学校に向けてここで何があったのかの簡単な報告をするようにお願いした。
それとレイン宛てにしばらく帰れないと伝言を頼んだ。おまけでマックにも。
眠らせた怪我人を詰め込んだルドルフをティナが抱いてアメリの後ろに乗りこんだ。
グリは大勢を乗せて飛び立っていった。
アルタミラの先にはいくつか別の拠点がある。
それらの拠点は一時的に閉鎖してアルタミラに機能を集約することになった。
オレは【スカウト】ジョブの冒険者の案内でそのうちの一つ、メガラの捜索に出かけた。
先日の応援隊は途中で竜人の群れに撃退されてしまってたどり着けず、メガラは音信不通だ。
位置的に同じ竜人たちの襲撃を受けていてもおかしくないので早目に確認したいとのことだった。
ドラに乗れるのは詰めて三人、オレと案内の冒険者が乗ったらもう一人しか乗れない。
全員を連れて帰るのは無理と言ったんだが、とりあえず状況だけでも確認したいのだそうだ。
ドラはスピードが乗るまでには時間がかかるんだが、長距離を高速で飛ぶのは三匹の中で一番得意だ。
冒険者の足で三日の行程が二時間かからなかった。空を真っ直ぐだしね。
空から見るメガラはアルタミラと同じように森の中の遺跡を発掘して利用しているようだった。
そしてアルタミラと同じく建物は焼けて崩れている。
こちらの門は壊れたままだ。
柵の内側にゆっくりと降り立つ。
あたりは閑散として人の気配がない。
「おい、誰かいないか!」
ドラから飛び降りたスカウトの冒険者が声を立てた。
建物のひとつひとつに呼びかけながらドアを開けて回っている。
オレも手分けしてスカウトとは逆回りに探索した。
「いたぞーっ! ウィル、こっちだ!」
反対側からスカウトが声を上げた。
そっちに走ったら建物の前にスカウトと見知らぬ冒険者がいた。
でも一人だけだ。
「他の人は……?」
二人は首を振った。
「遺体は埋めたよ」
冒険者はそう言ってわずかな遺品と遺髪を見せた。
その冒険者は足を怪我して動けなかったのでオレとスカウトは手分けして建物を施錠して回った。
それから吹っ飛んだ門を元の位置に戻した。立てかけることしかできなかったけど。
これで当分閉鎖だ。
かろうじて一人は生き残っていたとは言えとてもじゃないけど喜ぶ気にはなれない。
オレたちはドラに跨って悄然と帰路に就いた。
後ろの二人が会話しているのをオレは黙って聞いていた。
「もう五日前になるか? 竜人の大群が突然襲ってきた。俺たちも抵抗はしたけどな……多勢に無勢でどうにもならなかったよ。俺は隠れたまではよかったが動けなくて、もう一人生き残った奴が助けを求めに行ったんだ。お前らあいつに聞いて来たんだろ?」
「……いや、そいつは来なかったよ」
「そうか……」
「竜人の奴ら、いったい何のためにそんなことを……」
「……あいつらどうもアジトを探してるようだった。俺は屋根裏に隠れて見てたんだが、メガラに住もうとしてたよ。子供もたくさんいた。だがあの数を収容するには狭かったんだろうな。すぐに出て行った。──それで、竜人はどうなった? アルタミラは?」
「ああ、こっちも襲われてな。何とか勝ったよ。こいつらのおかげでな」
スカウトがオレを指さした。
「そうか……。ありがとう」




