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戦後処理

 無事生き残っていたバルトは動ける冒険者たちを手早く組織して怪我人を収容した。

 負傷者は山ほどいたがかろうじて死者は出なかった。


「あの規模の襲撃で死亡者がないのは奇跡的だ」


 バルトはそう言ってアメリの背中をバンバン叩いた。


「お前たちのおかげだな。本当によくやってくれた」


 それからこれも手早く明朝までのシフトが決められた。

 オレとティナ、アメリは順番に夜警に立つことになった。

 何しろ無傷の人間が少なすぎて、学生のオレたちも動員されたんだ。


 シャルとアイラは怪我はなかったものの魔力切れで限界だった。

 二人は早々にテントへと引き上げていった。


 余力のある者が集まって、吹っ飛んでしまった門を木材で打ち付けて固定した。

 とりあえず壁にしておこうということだ。まあ、今すぐに直すのは技術的にも人数的にも無理だ。


 一応ドラと傷が癒えたグリを内側に置いて門番にしている。

 アメリは熱心にグリにブラシをかけていた。


「グリ、ごめんね。痛かったでしょ」


 グリは「なんてことないよ」と言うように一声鳴いた。

 アメリも相当戦ってたはずだけど元気だな。


 多分だけど、魔力って使えば使うほど総量が増えるんじゃないだろうか。

 考えてみたらオレたちがバンドをやってた頃もアメリはずーっと一人でマッピングしていた。

 その分シャルたちより魔力が多いんだろう。


 オレ?

 オレは今日何もしてないからな。戦ったのはティナとドラだし。元気だ。


 オレはルドルフを抱えてあちこちに転がっている竜人の死体を回収して歩いた。

 ルドルフのことを知られたくないとかそんなことを言っている場合じゃない。


 それにしても本当に何十匹いたのやら。

 数えてたんだけど途中で冒険者たちと話してたらわからなくなってしまった。


 それからバルトたちといっしょに外に出た。

 まずは通用口の向こうの窪みに横たわる【超人】が目についた。


「うわ、地面が陥没してらあ!」


 一緒に出てきた冒険者が指さして大声を上げた。

 それからバルトが近寄って刺さったままだった槍を引っこ抜いて、顎をつかんだりへこんだ胸を触ったりしていた。

 バルトは大きく嘆息した。


「凄まじい戦いだったようだな」

「オレが見てました。メチャクチャ強かったですよ、こいつ」


 正直に言って一対一でこいつに勝てる人間がティナ以外にいるとは思えない。

 ティナがいなかったらこいつ一匹のためにアルタミラは全滅していたかもしれない。

 オレはその死体をルドルフのポケットに収納した。


 それから柵の周りをぐるっと歩いて回った。

 柵の下に落ちて死んでるのがいくらかいたので回収した。


 最後は竜人のボスだ。

 オレはバルトたちを案内して森と広場の境に連れて行った。


 真っ黒に焼け焦げたボスは黒く焦げた森の地面の上に仰向けにひっくり返って死んでいた。

 周りにいた竜人たちもやっぱり焼けて吹っ飛んで死んでいた。

 周りの木も同様だ。火事にならなかったのが不思議なくらいだ。


「うお、すげえな」

「誰がやったんだ?」

「オレです。ドラ……飛竜に乗って、上から」

「そうか……」


 バルトは考え込んでいたが、しばらくしてオレの背中を叩きながら言った。


「途中までは厳しかったんだがな、突然竜人の統率がなくなったんだ。あそこからは押せ押せだった。多分こいつが死んだからだろうな。よくやった」


 冒険者たちは死体を見ながら不思議がっていた。


「しかし、こいつら何のために攻めてきたんだろうな?」

「さあ……。竜の考えることはわからん」




 バルトが言うには討伐数を公式記録として残しておく必要があるそうだ。

 オレは集めた竜人をポケットから出して門の前の広場に並べた。


 改めて数えてみたら、柵の内側で死んでたのが七十三匹。

 柵の外で死んでたのが十三匹。

 誰がどれをやったのかわからないのでこれらは個人の記録としては数えない。

 破裂して死んでるのはシャルがやったんだろうけど。ちなみにそれっぽいのは十八匹いた。


 それからティナが倒した【超人】個体が一匹。

 オレというかドラが倒したのが四匹。


 計九十一匹の竜人を討伐したことになる。

 空から見た感じ周りにいたのは百~百二十匹くらいだったと思うから、ほぼ壊滅状態と言っていいだろう。


 竜人たちの死んでいたおおまかな場所とざっとした死に方を記録して事務的な処理は終わった。


 これだけあると埋める手間もない。

 死体はまたルドルフに詰め込んでアメリがいつもの場所に捨てに行った。




 その夜。オレは櫓のはしごを登った。

 上にはティナがいた。警戒に加わっていたんだ。オレとの交代の時間だ。


 ティナは体育座りで膝を抱えて森を見ていた。


「お疲れ」


 声を掛けるとティナは膝の上に顔を乗せてこっちを見た。

 まあ声を掛けるまでもなく気づいてただろうけど。


「ウィルもお疲れさま。見てたよー、スゴかったね! あんな高いところからまっすぐ落ちて、ドッカーンって大爆発!」


 あの激しい戦いの中で見てたのか。

 オレはティナの隣にあぐらをかいて座った。


「自分でもよくやったと思うよ。……あの時は恐怖心が麻痺してたけどさ、今思い出したら足が震えてきた」


 いや、マジで。あの高いところから一気に飛び降りるとか、何考えてたんだろうな? オレ。

 ちょっとネジが飛んでた。

 またやれって言われても二度とできる気がしない。


「それから、あのカミナリ……。竜人が何かしようとしたのを邪魔したんでしょ? ありがとう」

「ティナにはいらなかったかもね」

「あれ、なんだか前に私が撃たれたときより強くなかった?」

「それはオレにテイムされてるからだよ」


 [魔力共有]でオレの魔力も追加されてたからな。


「でも……」


 そこでティナは言葉を詰まらせた。

 そして体を寄せて腕に抱きついてきた。


 ようやく絞り出した声は震えていた。


「でも、そのせいでウィルが狙われちゃって……。無事でよかった……」

「本当に助かったよ」

「私、本当は戦うの嫌いなんだ」

「うん、知ってる」

「でもね、今は強くて良かったって思ってる」

「オレもずっと思ってた。ティナが自分の力に肯定的になれたらいいなって。良かったよ」


 そうしたらティナは胸の前でグッとこぶしを握り締めて、ようやくニッコリ笑顔になった。


「ウィルのためなら、私いくらでも強くなれるよ。──うん、ウィルの敵はみんな吹っ飛ばしちゃうんだから! それが竜でも鬼でも悪魔でも!」

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 なんか今話のティナを見てると、少しドラゴンボー○の孫○飯(人造人間編時)を思い出しますね……彼も父親を超える戦いの才能を秘めてましたが、悪人でも殺すことはしたくない=厭戦の気質が…
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