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急降下爆撃

 クソ、どうしたらいい……?


 まずは状況を把握しないと。

 連れてきていてよかった、オレはマルを大量に分裂させて四方八方に飛ばした。


 あ、頭いてえーっ!


 割れそうな頭痛に耐えつつマルの視点で確認したアルタミラの周囲は竜人だらけだった。

 竜人たちのチームワークは卓越していた。柵の下で仲間を足場に段を作って、軽々と柵を乗り越えている。


 冒険者たちは防戦一方だ。

 柵の上に見えた竜人を必死で落とそうとしているが、強固なシールドスキルに阻まれてうまくいっていない。


 オレはさらに遠くまでマルたちを飛ばした。

 ……竜人たちの中に他とは違う動きをしている一団が見えた。


 正門の向こうの森と広場の境目でひと際大きな竜人が三匹の竜人に護衛されている。

 真ん中にいる竜人は目を細めて何かのスキルを使っているようだった。

 そいつが右手を動かすと右翼の竜人たちがアルタミラに押し寄せ、左手を押し出すと左翼の竜人たちが後方に回る。


 ──見つけた!


 間違いない、こいつが指揮官だ。

 そうか……何でこんないきなり取り囲まれたのかと思ったら、こいつの指揮のせいか。


 ここに来た時話した冒険者は撃退に成功したと言っていたが、実際には体勢を整えるために一時撤退しただけだったんだろう。

 【超人】個体は別行動だったみたいだしな。

 そしてここを遠巻きに囲んで一斉に攻め寄せたんだろう。


 オレはどう動くべきか……。


 ──迷っている暇はない、やるしかない。


 オレは治療所に駆け込んだ。

 攻め寄せる竜人たちの鬨の声、冒険者たちの絶叫、そしてスキルとスキルのぶつかり合う音がこんなところまで聞こえてくる。


 部屋を覗いて回る。

 どの部屋にも簡素なベッドに怪我をした冒険者たちが寝かせられている。

 意識のない者も多い。ある者は参戦しようとしているが、動けない。


 いた、アイラだ。三つ目の部屋でアイラは冒険者たちを治療中だった。

 オレはアイラの手を引っ張って立たせてそのまま引っ張り出した。


「ちょ、ちょっと!」


 アイラが抗議するが無視する。

 いつかの三人組が上半身だけ起こしてしっしっと手を振った。


「おう、逃げろ逃げろ!」

「もう帰ってきたらあかんで!」

「すみません!」


 パーティーメンバーの安全を考えれば彼らの言う通り逃げるのが一番だ。

 でもティナは交戦中、グリは飛べない。アメリもグリを残して逃げないだろう。冒険者たちを見捨てるのも寝覚めが悪い。


 外に出て仲間を探す。

 グリは泉の前でうずくまっていた。

 洗いざらしのシーツを探してきたアメリが翼の傷にぎゅうぎゅう巻き付けている。


「グリ!」


 声を掛けるとグリは顔を起こしてこっちを見た。


「お前はひたすらシールド! ──ちょっと我慢してな」


 グリはケーッと一声鳴いた。ちょっと弱弱しいけどとりあえず大丈夫だろう。


「アメリはグリに乗って[索敵]! もうすぐにここまで竜人が来る!」

「了解!」

「シャルはアメリの指示に従って[ミラクルボイス]! 吹っ飛ばせ!」

「え、ええ」

「アイラはグリの治療!」

「あなたの指図は──」

「今日は聞いてくれ! グリが治ればアメリが全力で動ける、そうしたら何とかなる!」

「……わ、わかったわ」

「全員シールドに隠れて、自分の安全第一でやってくれ! 最悪の場合は逃げろ!」

「はい!」

「ドラ!」


 呼んだらタッタッと駆けてきた。オレは助走をつけて飛び乗った。


「ウィルは?」

「オレはあっちのボスをやる」


 統率の取れた竜人に比べてこっちの指揮系統は崩壊気味……冒険者たちは場当たり的に対応してるだけだ。

 後方で指揮を執っている竜人、あいつをやらないとこっちの負けだ。


 でも周りは竜人だらけ、正面には【超人】がいる。

 あそこまでたどり着けるのは空を飛べるオレだけだ。


 ……ドラは一撃の威力はあるけどグリみたいに小回りが利くタイプじゃないしシールドも弱い。

 スピードはあるし遠くまで飛ぶのは得意だけどベガみたいに一瞬でトップスピードというわけにはいかない。


 本当はアメリとグリの方が適任なんだがグリが飛べない以上仕方ない。

 そして本音を言えば行きたくない! オレじゃどう考えたって力不足だ。


 だからってシャルに行ってくれなんて、そんなこととても言えない。

 それに、ああは言ったがグリが動けるようになるまで冒険者がもつかわからない。


 オレとドラじゃチャンスは一度きりだ、ドラの最強攻撃の一撃離脱で決める!


 ドラはオレの指示に従って門と反対側に飛んだ。

 つまりボスの反対側に向けて飛び上がった。


 低空を遠くまで飛ぶ。

 ──この辺でいいだろう、左回りに旋回、同時に首を上げさせて急角度で空を目指した。高く、高く。


 アルタミラの全景が見える。建物は小箱のようで冒険者も竜人の巨体も豆粒みたいだ。


 クソッ、すごい数の竜人にたかられている。

 戦っている冒険者よりずっと多い、百匹を下回ることはないだろう。

 櫓のないところが攻撃に持ちこたえられずに柵を乗り越えられている。


 正面ではティナと【超人】個体がこの距離でも姿が霞む高速で戦闘を続けている。

 人間の超人ならティナとは大人と子供だ。でも竜人の超人なら大人と大人になるかもしれない。


 急がないと!


 オレは大きく迂回して竜人のボスの後ろに回った。

 正面にアルタミラが見える。

 その手前、森の端に竜人のボスがいる。マルの視点でずっと見ているぞ!


「行くぞ、マルフォイだ」


 ドラの首筋を叩いた。ドラはオレの要請に答えて急降下した。


 真上から加速をつけて垂直に落下する。

 ──取り巻きの竜人がこっちに気づいた! 上を見上げて騒いでいる。ボスもこっちを見た。


 ボスと一瞬目が合った──もう遅い!

 オレは視線を振り切った。


 くらえ、[プラズマブレイズ]!


 青白く輝く火の玉が突撃の速度を乗せて超高速で射出された。

 発射と同時に全力で首を上げさせて方向転換、アルタミラ前の広場に向かう。


 [魔力共有]でオレの魔力も載せたプラズマブレイズは竜人四匹を覆い隠して余りある大きさだ。

 光が反撃の攻撃スキルごとボスの一団を飲み込んだ。


 膨れ上がった火球が轟音と共に大爆発した。


 オレたちは地表スレスレで何とか浮力を確保していた。

 ──ぐうっ! そこへズシンと衝撃がきた。


 滑るように飛んでいたドラの体が後ろからの爆発に煽られて左右にブレた。


「うおおおおおっ!」


 ドラは体勢を崩した。

 振り落とされないように全力でしがみつく。回転する世界の行く手にアルタミラの壁が迫る。


 ドスン! 着地の衝撃で体が沈み込む。

 錐揉みして横っ飛びに飛んだドラはかろうじて柵に向かって四肢を着いていた。


 ドラはそこから器用に地面に降りた。

 オレは鞍から滑り落ちた。


 オレたちは何とか無事地上へと戻ることに成功した。


 そして目の前でティナと竜人が──【超獣】と【超人】が戦っていた。

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