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翼竜

 翌日、帰りの便で怪我人を連れて帰る任務を依頼された。


 その冒険者は松葉杖をついていた。

 彼はその杖を脇に挟んで頭を掻いた。


「いやあ、足がもげちまって」


 陽気にすごいこと言うな……。


「くっつけたんだけどまだ歩きにくくてさ」

「帰れるなら向こうで養生した方がいい」


 隣にいたバルトが言った。


「普通なら学生にはこんなことは任せられないが、お前ら飛べるからな。頼んだぞ」


 怪我をした冒険者にはオレと一緒にドラに乗ってもらった。

 道中暇だったので飛びながら事情を聴いてみた。


 この冒険者によれば、アルタミラからさらに奥へと三日進んだところにメガラという最前線の基地がある。

 彼のパーティーはそこを拠点に活動していたそうだが、竜人と戦闘になって足を跳ね飛ばされたのだという。


 竜人は竜の一種だが人間と同じように直立歩行する。

 また人間と同じく道具を使い言葉を持つ、らしい。


 らしいというのはまったく話が通じないからだ。

 思考回路がまるで違うらしくコミュニケーションは絶望的だ。


「竜人ってそんなに強いんですか?」

「強いことは強いが、普通は俺たちがあんなに苦戦することはねぇよ。現に他の竜人はサクッと倒したんだが、あいつからは逃げるのが精一杯だった。ありゃ特殊個体だな」

「特殊?」

「ジョブがな。あそこまで強いのは多分【超人】だ」


 【超人】か。

 ティナの【超獣】よりは落ちるけどソードマンやナイトと比べたら異次元の強さだ。

 テイマーなんかじゃ比較にもならない。


 それに人間と竜人とじゃ基礎スペックが違う。

 その腕力は人間の体をやすやすと引きちぎり、その脚力は人間の身長より高い壁を軽々飛び越えると聞いている。


 竜人の超人なんてのがどれだけ強いのか見当もつかない。

 こっちにこないといいんだけど。


 まあそれはともかく、ちょっと気になったことがあるんで聞いてみよう。

 ベテラン冒険者なら知ってそうだ。


「ところで話は全然変わるんですけど、マルフォイって何ですか?」

「何だ、知らんのか? 冒険者が突撃する時の掛け声だよ」


 何でも古い言葉で「突撃開始」の意味らしい。

 冒険者たちは敵に向かって声を揃えてマルフォイマルフォイと叫びながら突進するのだそうだ。


「まあ今じゃ冒険者の鳴き声みたいなもんでな、テンションが上がると無意味にマルフォイって叫ぶんだよ。酒を飲んでもマルフォイ、博打を打ってもマルフォイ、風俗に行ってもマルフォイってな。まあお前には風俗いらなそうだけどな、羨ましいやつめ!」

「学生ですので……」


 話が変な方向に転んだ。

 それから二人でバカ話してたら先頭を飛んでいたアメリがオレたちに近寄るように手振りで示した。

 ドラとベガがグリに近づく、そこでアメリが叫んだ。


「後ろから翼竜、三匹!」


 一斉に振り返る。

 ゲッ本当だ、滑空する翼竜がオレたち目掛けて飛んできてる!


「何でこんなところで!」


 後ろの冒険者も叫んだ。


 同じ空を飛ぶ竜と言っても翼竜はドラと違って全身裸だ。

 肌はつるんとしていて、腕と体の間の大きな皮膜で風に乗って飛んでいる。

 コウモリみたいな感じだな。

 乗る風をどうもスキルで生んでいるっぽい。見事にまっすぐこっちに向かってくる。


 と言っても翼竜たちの動きは編隊を組んでる感じじゃなくてバラバラだ。

 群れてるわけじゃないらしい。


 スピードは向こうの方がずっと速い。

 グリはトップスピードはあるけど長距離走るのが苦手で、並足で進んでいる。そのせいだ。


 追い付かれるのは時間の問題だろう。


 全員の認識が一致した瞬間ティナとアメリ、うちの切り込み隊が反転して突撃した。

 冒険者が後ろを向いたまま心配そうな声を上げた。


「おい、お嬢ちゃんたちで大丈夫か?」

「ご心配なく、【超獣】と【グリフォンナイト】ですからね! 人類最強コンビですよ。あの二人で駄目ならどうせ全滅です」

「そ、そうか、そりゃ心強いな! よーし応援するぞ! 頑張れー、マルフォイ!」

「マルフォイ!」


 オレと冒険者が腕を振り振り声援を送ってたらベガの上からシャルとアイラが怪訝な顔で見ていた。


 翼竜の目の前で空気が歪んだ。

 その歪みが高速で射出された──多分[エアバレット]──グリの[ショックウェーブ]で相殺!

 アメリはお返しのライトアロー、しかしこれも翼竜の眼前で歪んだ空気に弾かれる。


 エアバレットとライトアローとマナバーストが飛び交う中、双方の距離がみるみる近づいていく。

 あっという間にティナと先頭の翼竜が戦闘に入る。


 今度は翼竜が至近距離でショックウェーブ、しかしティナはいつもの分身で上下二手に飛んでいた。

 ショックウェーブが下に向かった偽物のティナを打つ。

 本物のティナは上に回って翼竜の頭の角をキャッチ、そこを支点にくるっと体を回して両足であぐらをかくみたいにして翼竜の首を抱え込んだ。

 そして角をつかんだまま首の周りを一回転!


 ゴキゴキッ──翼竜の頭も一回転した。首が折れて即死した翼竜は飛ぶ力を失い、斜めの角度で落ちて行った。


 その間に今度はグリが隣の翼竜と接近している。

 シールドスキルで圧力を掛けつつ翼竜の[エアプレッシャー]を相殺したグリは鷲の前足でつかみかかった。

 翼竜もその巨大な足で応戦、鉤爪と竜の足がガッチリ組み合った。

 即座にグリは獅子の後肢で宙を蹴った。二体の巨大な体が空中で大回転した。

 グリが上、翼竜が下、そしてグリは嘴の一撃で翼竜の首の付け根を強打した。


 かつてルークの強固なシールドを砕いて鎧を壊した一撃だ。首に大穴が開いた翼竜の足から力が抜けた。

 グリが前足を離すと翼竜はゆっくりと真下に落ちて行った。


 ところで、ティナとグリが戦っている間アメリは残りの一匹に狙いを定めてライトアローを撃ち続けていた。

 右の翼の関節部分の同じところに、グリがグルグル立ち回ってる間もどんなに姿勢が崩れても、冷静に。


 嫌がった翼竜は大きく旋回して逃げようとしたけどアメリは先読みして速射を当て続けていた。


 突然翼竜の右の翼が反対に曲がった。関節が砕けて折れたんだ。

 飛行能力を失った翼竜は錐もみしながら落ちていった。


 ……うーん、こうしてみると本っ当に強いな、うちの前衛担当。

 ティナはもちろんとしてアメグリコンビも相当なものだ。


 二人と一匹が宙を駆けて帰ってくる。

 冒険者は後ろで「あいつらも特殊個体か?」とボヤいていた。

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