ルークたちの冒険
休日明け、オレは早朝から学校にいた。
今日はとうとうルークたちがアルタミラに行くんだ。
オレはグリ、ベガ、ドラにルークたちのパーティーの七人を分乗させてエンターまで送った。
学校から歩いたら二時間はかかっちゃうもんな。
「すまん、助かる」
「お互い様さ」
村の入り口へと三匹を近づける。
向こうももう慣れたもんで、入り口にいた冒険者が手を振ってきたので真ん前に降ろさせてもらった。
「気をつけてなー」
七人は手を振りながらギルドへと入って行った。
翌日の夕方、今度はエンターに迎えに行った。
アメリは昼からマッピングしててグリを降りるのを渋ったけど。
……なかなか帰ってこない。
オレはギルドで冒険者たちと雑談しながら待った。
「最近モンスターが妙に強くてな」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。前ならもっと奥の方にいたはずのモンスターがどんどんこっちに来てるんだ」
「そういえばアルタミラでもそんなこと言ってましたね」
「何かに押し出されてる感じだな。夏ごろからだったかな?」
「もうちょっと前じゃない?」
「今じゃアルタミラまで行くのも一苦労だぜ」
聞いた感じどこのパーティーも苦戦しているようだ。
急に不安になってきた。ルークたちは大丈夫だろうか。
……太陽はすっかり傾いて、窓から見える西の空はすっかり赤くなってしまった。
冒険者たちとそんな時間まで話して待ってたら、ギルドの扉が開いて冒険者の一団が入ってきた。
全員薄汚れて髪はボサボサ、装備もズタボロであちこち傷だらけだ。
お、後ろにルークたちもいる。こっちもひどいあり様だ。
ルークなんか鎧も盾も失ってしまって、背嚢を前に回して背中にはグッタリしたミュールを背負っている。
「お、おう、お疲れ」
「……」
「どうだった?」
声を掛けてみたけど全員言葉を出すのも億劫そうだった。
「……すまん。明日でいいか……?」
手続きを済ませたルークたちは案内役の冒険者に頭を下げてギルドから出た。無言で、足を引きずって。
これ以上声を掛けづらい雰囲気だったのでオレも無言で寮まで送った。
翌日、昼食を食べようと食堂に行ったら後ろから肩を叩かれた。
ルークたちだ。ルークは申し訳なさそうな顔で軽く手を挙げた。
「昨日は悪かったな。本当に余裕がなかったんだ」
「気にしてないよ。で、どうだった?」
「……本気で死ぬかと思った」
オレたちが席に座ると他の連中も寄ってきて取り囲まれた。
昼食を取りながらルークたちはアルタミラ旅行の様子を説明した。
「──途中までは良かったんだよ。最初に出て来たのはキッドナッパー、これはすぐに蹴散らした。次にラージウルフの群れと戦って、それからヘルハウンドとリングヘイローの集団と遭遇した」
「いつもより強いけどこれならいける! ──とか思ってたんだ、その時は」
「な。二番休憩所まではよかったな。ところがそこからモンスターが突然強くなったんだ。案内の人も『こりゃおかしい』って顔が険しくなるし」
「学校の周りじゃ見たこともないようなモンスターと連戦だった。いやもう、強いのなんのって。ただでさえ移動で疲れてるところに毎回全力で戦わないとならないもんだから、体力も魔力もどんどん減ってくし……」
「ルークの盾が壊れた辺りからジリ貧だったな」
「三番休憩所で『引き返そうか』って提案されたときに従っとけばよかった……」
「そことアルタミラの中間あたりで爪竜が出た」
爪竜は走竜の少し小さい感じのやつだ。
「速いしすごい跳躍力だし組織的に攻撃してくるし斬撃を飛ばすスキルは使ってくるし、もう滅茶苦茶だったな」
「俺たち亀みたいに丸まって耐えて、何とか撃退はしたんだけどルークが大怪我してな」
「骨が見えてたもんな。治すのに女子全員魔力を使い果たした」
「動けなくなった彼女たちを背負って、何とかアルタミラに到着したんだ」
「もう一回モンスターが出たら全滅だったな」
「あの柵が見えたときどれだけほっとしたことか……」
「挨拶して風呂に入らせてもらって、飯食う余力もなくてそのまま寝ちまったよ。いや、風呂は確かに天国だったわ」
「帰りはもう地獄だった。一晩じゃ回復しきってなかったし。飯食わなかったのも悪かったんだろうな」
「エンターに帰る冒険者の一団に混ぜてもらったんだけど、なんかいつもよりモンスターが強いらしくて、プロでも苦戦してた」
「それで歩いて歩いて十時間、日が暮れる頃になってようやく帰ってきたってわけ」
「そりゃ大変だったな……」
周りで聞いていた生徒たちも一斉にため息をついた。
ルークは座ったまま足を投げ出してバンザイした。
「結論から言えば、俺たちにはまだ早かった!」
「もう少し鍛え直してから再チャレンジするわ」
「あ、そういえば向こうの人に『お前らは普通でいい』って言われたんだけど、何やったんだ?」
「オレは何もしてないよ。ほら、ティナが強いから」
「なるほど……」
「そうだ、それに、道が」
マルスがオレを見て呟いた。
「ん? どうした?」
「もう一回行けって言われても自分たちだけで行ける気がしないんだが」
「ああ、何か通ったあとがすぐ森に埋もれる感じだよな。オレもアメリなしで行ける自信まったくないわ」
たとえドラに乗っててもね。
「あれマッパー絶対にいるよな」
「慣れると行けるっぽいぞ」
「慣れるまでに迷って死にそうなんだが」
「まあね……」
「なあ……。もし次に行くことがあったら道案内だけでもしてもらえるようにアメリさんにお願いしてくれないかな? うちに来てくれとまでは言わないからさ」
「アメリはなー……」
オレは腕を組んだ。
見た目は大人しそうに見えなくもないけど、アメリはあれで結構性格がキツ……気の強いところがあるからな。
それにどうも初期に誰も仲間に入れてくれなかったのを根に持ってる節があるし。
「一応口添えはしてみるけど、無理だろなぁ」
「あー!」
「クソー!」
「最初に仲間にしとけばよかったあ!」
ルークたちは一斉に頭を抱えた。
そして頭を抱えたまま呟いた。
「テイマーとマッパーはチートだから絶対にパーティーに入れるべきと語り継いでいかなければ」
マッパーが必須なのは同意だけど、アメリはちょっと規格外だと思う。




