密約
帰校したアイラには心配事が増えていた。
どうやらティナはあの外道テイマーのことが好きだ。
前から薄々そうではないかと感じていたが、旅行中の様子を見れば瞭然だった。
(どうしてティナまで……)
だって、ライブの時のシャルのあの歌……。
入学したての頃と全然違うじゃない!
ついに恐れていたことが起きてしまった。絶対騙されてるか勘違いなのに。
そしてシャルはもちろん、ティナのことだってアイラは心配だった。
彼女のことだって友達だと思っていたからだ。
「ティナ、ちょっといい?」
だから帰ってすぐに声を掛けて二人きりになった。
「単刀直入に聞くわ。あなた、あのテイマーのことが好きなのね?」
「へうっ!? い、いやー、別にそんなこと……」
「正直に答えて」
「……うん」
ティナは指先をツンツンとつつき合わせながら恥ずかしそうに答えた。
ため息が出た。
アイラには正直に言ってあの変態テイマーの良さがさっぱりわからなかった。
(何で?)
普通の人間の女の子たちには全然人気がなさそうなのに、よりによって彼女の大切な友人たち二人だけがたぶらかされている。
「ねえ、やめた方がいいわ。あんな誠意のかけらもない二股男を信じても傷つくだけよ」
「ウィルはそんなことしないって信じてるから……」
「だってあのテイマー、シャルにも色目使ってるのよ!? 見たでしょう、冒険中の態度! あなた遊ばれてるのよ」
「遊びでも……もしかしたら本気になってくれるかもしれないし……」
意志が固い。アイラは戸惑った。
「どうしてそんなに……」
「だって、ウィル以外の男の子はもう私のことを可愛いって言ってくれないと思うの」
「……えぇー?」
どうしてそんな風に考えるのか……アイラには疑問だった。
そりゃアイラはシャル派だけど、シャルの可愛いとティナの可愛いはちょっと違う。どちらが「カワイイ」か尋ねたらティナを選ぶ人はかなりいると思う。
「思い過ごしじゃない?」
「だってみんな私のことを怖がってるんだもん。でもウィルは本当に毎日可愛いって言ってくれるの」
「それは、あのナンパ男なら口先だけで上手なこと言うでしょう」
「いいの! 私はウィルを信じてるから! アイラはシャルの方が仲がいいのは知ってるけど、お願い! 協力して!」
「うーん……」
アイラは唸った。悩んだ。
そしてシャルへの愛情とティナへの友情を天秤にかけた結果、大きく傾いたシャル側の天秤皿がズドンと音を立てて下にめり込んで天秤がひっくり返った。
仕方ない──。アイラは腹をくくった。
シャルのためにティナには頑張ってもらおう。
「あまりお勧めはできないけど……しょうがないから応援するわ」
「……ありがとう!」
ティナはホスト漬けになる素質がある。




