バルト
オレたちはクレアに連れられてこの冒険者拠点の倉庫に荷物を納入した。
受渡書に受け取りの印をもらって任務完了だ。この紙は帰りにあっちのギルドに持って行けばいいそうだ。
基本的に夜は森の中を動かないので今日はここで一泊する。
明日はまた帰りの荷物を持って向こうの村に納めることになる。
オレは一応このパーティーのリーダーってことになってるので冒険者のまとめ役に挨拶しに行った。
他の四人は先に水浴びだ。
「クレア、ご苦労だったな」
ここの責任者はアラサーの男性だった。名前はバルト。
巨漢だ。背も高いが体つきはいかにも頑丈そうだ。多分ファイター系のジョブだろう。
バルトにねぎらわれたクレアは首を横に振った。
「全然。子供のおもりのつもりだったけど、この子のパーティーメチャクチャ強くてやることなかったし。走竜五匹が秒殺だもん」
「ほう、それは頼もしいことだ」
バルトは無精ひげの生えたあごを撫でながら面白そうなものを見る目でオレを見た。
「ここは危険だからな、強い冒険者は大歓迎だ」
「よろしくお願いします。オレは一般人と変わらないテイマーなんですが、仲間は超獣を始めとして頼もしいのがそろってますのでご期待ください。──あ、外のグリフォンはオレのなんで冒険者の皆さんが攻撃されないようにお願いします」
「グリフォンをテイムしたのか? それで一般人はないだろう。なるほど、頼もしいことだ」
それからオレは簡単な注意事項を伝達された。
と言っても喧嘩するなとか許可なしに外に出るなとか騒音を立てるなとか常識的なことばかりだけど。
「あー、じゃあ音楽とかもやめた方がいいですね。オレのパーティー、バードがいるんですけど伝えときます」
「ほう、バード! それは是非やってくれ」
「え、音楽の演奏ってやってもいいんですか?」
「大いにやってくれ。ここは娯楽がないからな。みんな喜ぶ。あー、娯楽と言えばだな──」
「何ですか?」
「ここではセックスは一律禁止な。人間関係をグチャグチャにされると困るんでな。帰ってからやってくれ。クレア、お前もだぞ!」
「やんないってば!」
浴場は柵付近にあった。
中央の泉から水を引っ張って自分で湯を沸かす。冒険者の時間はバラバラなので二十四時間利用できることになっている。
冒険者学校と同じように風呂当番があって掃除だけは住人の持ち回りだそうだ。
体は限界だが魔力には余裕がある。全然使う機会なかったし。
オレはウンディーネとサラマンダーのスキルで水をぬるま湯にして浴槽に流した。暑い盛りだしこのくらいが丁度いい。
湯をかぶって、体を洗って、さてお楽しみの入浴だ。
ふう……
あー……気持ちいー……
…………
……危ねっ! 今沈みそうになってた。ヤバイ、眠気がかなりキツイ。
残念だが風呂は早々に切り上げた。こんなところで溺れ死んだらバカみたいだ。
「ありがとうございました。お湯を浄化しておきましたのでまた使ってください」
「何だ、お前浄水スキルが使えるのか? おう、ありがとよ」
オレは浴場に案内してくれた冒険者に礼を言って食堂に向かった。
「あ、お帰り」
「うわー、うまそうだね。さすがティナ、料理も可愛い」
「えへへ」
ここでは食事もパーティー単位で自炊だ。
オレは料理はからきしなんだがティナとアメリはかなりできる。
今も即席とは思えないような品が並んでいる。
「いただきまーす」
食べながらクレアがこのキャンプでのやり方を説明していた。
例えば、来た時の見張りもそうだが、ここでは夜警も交代制でやっていることとか。
あー、学校の寮でやってるのと同じか。
今のオレは一人暮らしでやってないが、元の寮に住んでる時は夜警当番があって寮の周りを見て回ってた。
ただ学生はお客さん扱いで免除ということだ。
みんなはそんな話をしてたんだがオレは意識が寸断されてて飛び飛びにしか聞こえなかった。
いよいよ限界だ。
オレはクレアに頭を下げた。
眠すぎてフラフラしてて頭をさげてるんだかたんに揺れてるんだかじぶんでもわかんない。
「すいません、うちのメンバーのことお願いします……」
「オーケーオーケー、今日は最後まで面倒見てあげるよ」
「ありがとうございます」
クレアが快諾してくれたのであとはまかせることにした。
ティナが心配そうについてこようとしたけど男性用宿舎は女子禁制だ。
オレはちかくにいた男の冒険者にベッドまでつれていってもらった。
「ここだ。おい、大丈夫か?」
「すいません……」
ベッドっていってもほとんど板だな、これ。
まあこのさいなんでもいい、やねの下でねむれるだけでもありがたい。
オレはベッドにたおれこんだ。
ダメだ、もう目をあけていられない……。
手探りで薄い布を引っ張って被ったところまでは覚えていた。




