アルタミラ
森を大きく丸く切り開いた空間に出た。
冒険者学校くらいなら寮まで含めてスッポリ入ってしまいそうだ。
その真ん中に柵に囲まれた集落があった。いやこれは砦だな、どっちかというと。
柵の高さはオレの身長の倍を超える。それがキャンプをぐるっと丸く取り囲んでいる。
柵の向こうに頑丈そうな物見櫓が見えている。
その上にはバリスタが据え付けられていて、全部の櫓じゃないが冒険者が見張りをしていた。
出発したのは朝だったがもう夕方近い。
日が長い頃だから良かったけど冬ならそろそろ暗くなってるところだ。
もうクタクタだよ……。早く中に入りたい。
正面の大門は閉ざされていた。
オレとティナはクレアに連れられて門の隣の通用口に向かった。
近づくと中は何やらガヤガヤと騒がしい。
ティナの耳がピクッと動いた。
「……グリフォンが来たって騒いでる」
あ、しまった。警戒されるからってエンターでは遠くで降りたのに、疲れてて気が回らなかった。
振り返るとベガとグリと三人がこっちに向かっていた。
──と思った次の瞬間櫓から攻撃スキルと大きな矢が飛んだ。
グリは矢を回避、スキルはシールドで弾いた。
同時に光の矢がお返しされている。ライトアローは櫓の上の冒険者に当たる寸前で自ら弾けて散った。
アメリって結構気が荒いよな……。
「アメリー、退避退避ー!」
腕をグルグル回したらこっちを見たので大声で叫んだ。
ついでにマルの分体を来た方に向けて飛ばすとグリもベガもその後をついて行った。
ティナがオレの袖をクイクイ引いた。
「どうする? 止めさせようか?」
「すいません、ティナがキャンプを制圧するって言ってるんですけど。あれやめてもらっていいですか?」
クレアに言ったら慌てて通用口に走って扉をガンガン叩いた。
「開ーけーてー!」
覗き窓が開いてクレアを確認した。中の冒険者が叫んだ。
「お前が連れてきたのか!」
「そうだけど違うの!」
「まったく……。紛らわしい真似すんなよな!」
「そっちが勝手に勘違いしたんでしょうが!」
その後のやり取りで何とか誤解が解けた。クレアと冒険者は互いに中指を立てあってたけど。
オレたちはようやくキャンプに入った。
「全部破壊してやろうかと思ったわ!」
アメリはプリプリ怒ってた。
グリは門の前で待機だ。さすがに中には入れてもらえなかった。
本人(人?)は途中で腹いっぱい食べてきたから満足そうだ。
冒険者たちには近寄らないようにお願いした。何かあっても責任持てない。
ベガは中の厩につながせてもらった。
よほど腹が減っていたのか桶に頭を突っ込んで、もらった餌をわき目もふらずに食べ続けている。
こいつも今日はずーっと二人乗せて飛んでたからな。ご苦労様。
柵の内側には家屋や倉庫が立ち並んでいた。今朝の冒険者村をもっと殺風景にした感じだ。
ほとんどは木造だが石造りの家もいくつかは見える。
「ここはね、大昔の町の跡を発掘して利用してるの。ほら、あれ──」
クレアが指さした先にはひと際古ぼけた石造りの建物があった。
入り口の上にやはり石を彫刻した看板が掛かっている。半分方壊れてるけど。
刻まれている文字は古代のものだ。オレには読めない。
「あの看板の残ってる部分が『アルタミラ』って読めるんだって。意味はわかんないし町の名前なのかどうかもわかんないけど」
紙や羊皮紙はよほど条件が良くないと残らないもんな。この森ではまず見つからない。
おかげで古王国時代のことはほとんどわかっていない。
あの建物も本当はパン屋とかだったのかもしれないな。
町の真ん中から泉が湧き出していた。
相当に透明でそのまま飲めそうだ。いや飲まないけどさ。
古い石組で整備されているのは遠い昔の先住民たちの仕事だろう。
導水管で町のあちこちに配水されているようだ。
「あー早く水浴びたい」
泉を見たクレアは自分の服の臭いを嗅いだ。
オレも自分の臭いを嗅いでみた。嗅ぐまでもなく全身汗だくだ。空を飛んでいた三人はそうでもなさそうだけど。
道中ウンディーネで浄水して結構水分は補給してたんだが一度も小便が出なかった。どんだけ汗かいてるんだよ、オレ。
早く水を浴びたい。何と言っても疲れた……。
出発から十時間近く、途中休憩を三回挟んだとはいえその間ほとんど歩きっぱなしだ。
やることをやってしまって、今日は早く休ませてもらおう。




