合否通知
シャルはミラクルボイスを披露した。
村の境界の向こうの木に向かってシャルが『声』を放つとその木は一瞬激しく震え、次の瞬間すごい破断音と共に縦に真っ二つに裂けた。
メリメリ……、裂けた木は鈍い音を立てて両側に倒れた。
ちなみに葉っぱは最初の震動で全部弾けて落ちている。
教官たちは目が点になっていた。
「確かに攻撃スキルがあるとは聞いてたが……」
「お前これ人間には絶対に使うなよ?」
シャルはミラクルボイスに付随して[指向性音波]スキルも手に入れた。
おかげで[奪魂]を狙った相手だけに当てることができるようになった。
[奪魂]はこれまでは対象を選べなかったのでオレのモンスターまで巻き込んでしまう欠点があったんだが、これで解消した。
つまりメチャクチャ強くなった。
それとアイラも二つの防御スキルを身につけていて教官たちに褒められていた。
「いつの間に……。すごいね、アイラ」
「私は真面目にやってたの! あなたと違って!」
いやオレも真面目にやってたよ?
「はーい先生、私のも見てくださーい!」
ティナが元気よく手を挙げたけど教官たちは及び腰だった。
「いやお前はいいだろ。充分強いんだし」
「そう言わずに見て下さいよ。いっきまーす!」
言うやいなや飛び出したティナは森の木にローキックを放った。
その足に魔力が乗っている。
マナブレードという技だ。ティナに教えてもらった。マナバーストをひたすら薄く鋭く放出しながら叩きつけると剣のようによく切れる。
ティナはこれを足でやった。剣というか斧だな。
木の根元が大根みたいにサクッと切れた。
そして倒れ掛かる木の前でジャンプ、倒れる方向から蹴る。これもまたマナブレード。
蹴った反動で一回転して逆方向からまた蹴る。これを上昇しながら繰り返した。
ガランガラン、激しく音を立てて輪切りになった木が落ちる。ティナは落ちてゆく木の頂点を蹴ってオレたちの前に着地した。
ティナの新技だ。ちょうどいい幅で輪切りになってるんで薪を作るのに便利なんだ。
「どうですか!?」
「え……」
「いや、まあ……」
「なあ、これ何かコメントしないといけないの?」
ついでだがレインのジョブも変わった。
ライブが終わったちょうどその日、レインはマックとマルスに介助されてやっとのことで帰ってきた。
「おお、お帰り! 長かったな。[忍び足]は覚えられたか?」
「いや……」
「それが……」
三人は微妙な顔をしていた。
「何だよ」
「……俺、シーフじゃなくなった」
「……は?」
山に向かった三人は道に迷ったりしたものの何とか例のライナという女性と会えたらしい。
彼女のジョブは【ニンジャマスター】だったそうだ。作曲家ではなかった。
「それで俺たち[忍び足]を教えてもらってたんだけど、俺あっちでも毎食メシ作ってたんだよ。そしたら昨日の朝突然『お告げ』があって、ジョブが変わったんだ」
「何だ? 【シーフマスター】とかか?」
しかしレインは首を振った。
「【味覚のパイオニア】」
「……何それ?」
初めて聞くジョブだが、何でも料理人系のジョブらしい。
おかげで移動に関わる補正がなくなってしまって山を降りるにも一苦労だったというわけだ。
「そういうわけで[忍び足]とかできなくなっちまった……」
「……」
「どうしよう……?」
どうもこうもなかった。
教官たちに相談はしてみたんだが、何しろこの学校は軍学校で入学資格は『戦闘に使えるジョブであること』だ。
レインは在校資格を失ってしまい退学処分を受けた。
その後レインはバイト先のレストランに就職して、これまでの学費を返済するために働くこととなった。
「なんでだよー! まあいいけどなー!?」
レインは月に向かって叫んでいた。
「──そうだ、探してた作曲家だけど」
気を取り直してレインはシャルに言った。
「あ、本当にいたの?」
「いたことはいたらしいけど老衰で死んじゃったんだって。家の裏に墓があったよ」
「そう……」
あ、これもついでだが他の二人はちゃんと[忍び足]スキルを覚えて帰ってきた。
ともかくオレたちはそれぞれの成果を見せた。
教官たちは顔を寄せ合って相談していたが……。
「最低三か月はかかると思ってたんだがな……」
「よし、アルタミラへ行く許可を出そう」
「お前たちが今年初めて外に出るパーティーだぞ。頑張れよ」
オレたちは顔を見合わせて、一斉に万歳した。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
これにて強化イベントは終わり、次回から森の奥へと向かう予定です。
私事なのですが、仕事が繁忙期に入ってしまい毎日の更新が非常に厳しい状況となってしまいました。
大変申し訳ございません。
しばらくは二、三日に一度程度のペースを目標に更新を続けていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。




