ポケットモンスター
明日は学校は休み、シャルのライブの日だ。
打ち合わせのためにうちに来たシャルは何だかご機嫌斜めだった。
「あれ、何かあった?」
「別に」
そう言いつつもそっぽを向いてるし。
「いや絶対何かあっただろ」
「何かあってもわからないでしょ? 最近はティナとばかり一緒にいたものね」
先日課題を与えられてからだから、たったの二日なんだけど。
今までもそれくらい会わない日は……そんなになかったか。
「もしかして妬いてる?」
からかうとシャルはすねた顔で上目遣いにオレを睨んだ。
そしてオレのシャツの袖口をつまんで、無言でブラブラ左右に振った。
うわ、これは新鮮だ。
ティナがしそうな仕草をシャルがしているのが何だか面白くて、オレはしばらくの間されるがままにしていた。
そしたらオレにくっついて周りを飛んでいたマルが急に肩にとまった。お邪魔虫かな?
マルはクイックイッとあごを動かして合図している。
アメリから何か連絡があるみたいだ。
向こうのマルと感覚を同期したらグリフォンに乗って空を飛ぶアメリはオレの、というかマルの顔を覗き込んでいた。
『聞こえる?』
「聞こえる」
言ってから気づいた。マルはしゃべれないし、向こうには聞こえないよな。
オレはマルの頭を縦に振らせた。
『珍しいのがいる。ドライムーン』
「マジか!?」
そいつは是非欲しいやつだ。
オレはマルの視点で下界を眺めた。
グリは上空に大きく円を描いて飛んでいた。
その円の真ん中の真下に青色の毛に覆われたモンスターがいる。
間違いない。
「シャル、打ち合わせの前にちょっと付き合ってくれないか?」
「……いいけど」
シャルはすねた顔のまま同意した。
オレたちはベガに乗った。シャルには腰にしがみついてもらって、森へと急行する。
ベガはドライムーンから少し離れたところに降りた。
上空にグリが旋回している。オレはマルを通して合図して離れてもらった。近くにいると巻き込まれちゃうからな。
「シャル、[奪魂]を頼む」
「ええ」
シャルはピッコロを吹いた。演奏と共に[奪魂]スキルが発動する。
周辺に他にモンスターがいるかわからないけど、耐えられるやつはいないだろう。
現にベガはボーっと無表情で立ち尽くしている。
抜き足差し足でコソコソと、さっきまでグリがいたところの下に行くと……お、いたいた ドライムーンだ。
オレはやはりボーっとしているドライムーンを捕まえた。
こいつは全身青い毛に覆われているが顔と腹、手足の先だけ白い。尻尾は赤だ。
見た目は色を除けばまるまると太ったタヌキだ。
そのせいで一般にタヌキの仲間と思われているが有袋類だ。
お、おなかにポケットがついている。雌だな。よし!
こいつは戦闘力らしい戦闘力はまるでないモンスターなのだが、種族的に雌は必ずポーター系のジョブをもらっている。
で、[ストレージ]スキルでおなかのポケットに何でも入れておくことができる。
食料でも子供でも、自分自身でも。
危なくなると自分自身をポケットの中にしまい込んでその場から消えてしまうのだ。
だから見つからない、捕まらない、レアなモンスターとなっている。
今も[奪魂]スキルがなかったら近づくこともできなかっただろう。
よし、テイム!
オレはドライムーンをテイムした。
「ありがとう。おかげで捕まえられたよ」
オレはシャルのところに戻った。
礼を言うとシャルはドライムーンを珍しそうに眺めた。
「愛嬌のある顔ね」
こいつのジョブはやはり【ポーター】。
[無限収納]というスキルを持っていた。
連れて帰って試してみたら本当に何でも入る。いくらでも入る。
明らかにポケットの口より大きな物でも吸いこまれるように入る。
これでティナに手間を取らせなくてもよくなった。
タマに伐らせた木をオレだけで町に持って行くことができる。
名前はルドルフにした。おとぎ話に出てくる緑のタヌキの名前だ。
ルドルフは女子たちがたらいにぬるま湯を張って洗う間じーっと大人しくしていた。
ギリギリのネタ




